わたしの本棚74夜~「マチネの終わりに」
西谷弘監督、福山雅治主演で映画にもなりましたが、小説の方が余韻があって好きです。映画は、東京、長崎、スペイン、フランス、ニューヨークなどの美しい画像が加味され、それはそれで素敵でした。世界的なギタリストとジャーナリストの恋愛であり、6年のうちに3度しか会わなかった人との恋の話でもあり、ちょっとわたしたち庶民からすると現実からかけ離れてしまいそうですが、普遍的なセリフが心地よく、美しい時間に浸ってしまう小説です。2019年の値段です。
☆「マチネの終わりに」平野啓一郎著 文春文庫 918円(税込み)
世界的なギタリスト蒔野と世界的な映画監督を父親に持つフランスの通信社に務める洋子さん。互いに魅かれあいながらも、蒔野には早苗さんというマネージャー、洋子にはリチャードという配偶者がそれぞれできてしまい、いったんは離れてしまうふたりですが・・。
蒔野が洋子さんとその同僚を励ますのに、人間が元気になるのは1、美味しいものを食べたとき、2、素敵な音楽を聴いたとき、といった台詞を言って、料理して、ギター弾いて励ます映画のシーンがあるのですが、まさしく、料理、音楽は癒し励ましになると改めて認識しました。音楽は、文学、絵画、映画などの芸術全般に置き換えられそうです。芸術の香り高い小説でもあり、それでいて「変えられるのは未来だけだと思っている人が多いけれど、未来によって過去が変わる」といった恋愛の普遍をあらわす名台詞がちりばめられていました。