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わたしの本棚101夜~「オルタネート」

 直木賞候補、本屋大賞候補、吉川英治文学賞新人賞受賞作です。著者がジャニーズの加藤シゲアキ氏というので、話題が先行しましたが、現代の都会の高校生の青春群像劇として、面白く読みました。

 オルタネートという高校生限定のアプリを鍵にし、「ワンポーション」というネットでの調理選手権といった今風の環境のなか、ラスト、文化祭での悲喜こもごもへとの加速は、読後感が爽やでした。

☆オルタネート 加藤シゲアキ著 新潮社 1650円+税

1.主人公たち・登場人物

 小学校から大学まで併設する、東京の私立円明学園高校が舞台です。主として3人の高校生の物語です。

 新見容(いるる)は、料理人の父をもち、調理部の部長です。オルタネートは躊躇していましたが、ラストで、他高校の生徒とのつながり、世界の広がりへと。円明学園高校3年生。

 伴凪津(なつ)は、オルタネートの信奉者です。母子家庭で育ち、奨学金で高校に通い、園芸部です。円明学園高校1年生。

 楤丘尚志(なおし)は、大阪の高校を中退し、かつてのバンド仲間だった安辺豊(円明学園高校2年生)に会いに東京へ。東京では音楽仲間とシエアハウスして、バイト生活で過ごす。

 3人それぞれの生い立ち、クラブ活動や恋愛を通しての日々が描かれていきます。

2.あらすじ

 容(いるる)さんに関しては、料理のシーンなど、美味しそうな描写が多く、また、「ウイークエンドシトロン」という週末に大切な人と食べるレモンケーキの紹介など、おしゃれな情報もありました。恋愛に関してもライトノベル的な描写多かったです。

 凪津(なつ)さんに関しては、オルタネート信奉者ということで、一番、この小説で面白い展開でした。マッチングアプリの存在は、わたしたちの世代からすると、そんなことで(ネットで)出会う人は怖いかもと警戒感があるのですが、逆で、先に情報が知らされて出会うからいいという。この小説では、高校生限定というアプリで友人、恋人をつくる、という設定ですが、以前、テレビの番組で観た若者や職場であう若い人たちは、今や婚活や恋人探しに使用し、職業別、大学別、高校別のマッチングを利用するというものでした。

 凪津は、オルタネートの中でも、遺伝子で会う人を探すという選択をします。ジーンアプリというので、そこで92%という相性の桂田くんに会うのですが・・・。

 尚志くんの展開は、昭和的でした。高校中退し、かつてのバンド仲間で幼馴染だった豊くんに会いに東京に上京するのですが、医者の家系にそだった豊くんはバンドへの夢薄れており。バイト生活、風変りな音楽仲間とのシエアハウスの生活しながら、もがき苦しむ青春の日々です。

3、SNSとの付き合い

 わたし自身、不器用な性格なので、SNSとの付き合いには悩みます。フェイスブックのいいね、をつけるかどうか、といった小さなことから、書く内容まで。義理固い性格なので、してもらったことにはなるべく返そうと思いますが、自分のしたことで(書いたこと)相手以外の人を傷つけるんじゃないかしら、とか。時々、なぜ書いているのだろう、と思ってしまいますが、中野信子さんの著者ではないですが、脳へのアウトプットの効用でバランス保っているのかな、と。

 わたしたちの高校生のころに、オルタネートがあったら・・・。そもそもSNSがあったら。そう考えると怖いような、楽しいような。とにかく、現代を生きる高校生の、昔と変わらぬ悩みと新しい悩みを、人とのつながりかたをオルタネートを通して活写した小説でした。

#オルタネート #加藤シゲアキ #新潮社 #吉川英治文学賞新人賞 #推薦図書 #読書感想文




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