春来
零下の夜が身を切る、然れど、暮六つの西が明るくなりました。遠く微かに春の訪れを想う、如月の日々を数える、あなたの瞳ばかりが思い出される、澄んだ空気、星は高く、三日月が笑んで。春が来る。望んだ春が、拒んだ春が、すぐそこに。春はかなしい、ずっとかなしい季節でありました。例に漏れず、此度の春は、いっそ殺してほしいとさえ思うほど焦燥と、祝福と、かなしさと、そういった相反する感情を混ぜて、交ぜて、地べたにぶちまけた様な、掬いようのない、酷く澱んだものに覆われているように思う。さようならが近い、信仰との決別、生きることは、結局ある種の信仰なのだと思う。別れの春が来る。生きていくのはひどく淋しい。