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「明言こそされていないが、おそらくあのキャラは死んだだろう/間もなく死ぬだろう」というところで物語を終える→死という安息を与えないことで、絶望感を強める ~映画「ソウ」(シリーズ1作目)の場合

アダム「うわー!!」「止めろー!!」「ぎゃー!!」「死にたくない!!」

映画「ソウ」(シリーズ1作目)


◆概要

【「明言こそされていないが、おそらくあのキャラは死んだだろう/間もなく死ぬだろう」というところで物語を終える→死という安息を与えないことで、絶望感を強める】は「エンディング(ストーリーやエピソードの終わり)」に関するアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「ソウ」(シリーズ1作目)

▶1

本作の主人公の1人・アダム(男性、20代後半?)。


ある日、目を覚ますと……

・Step1アダムは見知らぬバスルームにいた。バスルームと言っても、10畳以上はありそうな広い部屋である。しかしひどく老朽化しており、汚い。そして……アダムは悲鳴を上げた。あろうことか彼は片足を鎖でつながれていたのだ。ゆえに動ける範囲はごく限られている。アダムは動揺する。混乱する。一体ここはどこだ!?俺はなぜ監禁されているんだ!?

・Step2:バスルームにはもう1人、ゴードンという男がいた。彼もまた鎖でつながれており、なぜこんなことになっているのかわからないと言う。

・Step3:やがて2人は犯人からのメッセージを見つけた。アダムには「ここで死ぬか、逃げ道を探すかだ」、ゴードンには「6時までにアダムを殺せ。もし殺せなければお前の家族は死ぬ。もちろんお前もここで死ぬ」。そして最後に「それではゲーム開始だ」

・Step4:その後、2人はどうにかしてここから脱出すべく、犯人がバスルームのあちこちに仕込んでいたヒントを探すなどした


しかし……

・Step5:どうしても手錠を外せない!外部と連絡を取ることもできない!

・Step6:そうこうする内に時が経ち、6時になった。嗚呼、家族が殺されてしまう!半狂乱になったゴードンは糸ノコギリで自らの足首を切断。助けを呼んでくると言ってバスルームを出て行った。しかしその顔は真っ青だ。いつ失血死してもおかしくないだろう。


それから間もなく……

・Step7:犯人がアダムの前に姿を現した。だが彼は「もう時間を過ぎた。ゲームオーバーだ」と言い残すと、バスルームの照明を落とし、去って行ってしまった。かくして暗闇に1人取り残されたアダム。嗚呼、恐怖!絶望!彼は叫ぶ「うわー!!」「止めろー!!」「ぎゃー!!」「死にたくない!!」(本作はここで終わる)。


▶2

ご注目いただきたいのはStep7。すなわち、「アダムが絶望し慟哭するところで幕引きとなる = アダムの死は描かれていない」という点である。

これがいいと思うのだ。


というのも、「死」はすべての終わりを意味する。痛みも悲しみも苦しみも、死ねばすべては消えるだろう。つまり死は安息なのだ

したがって、もしも本作の終わりにアダムの死が描かれていたらそれは彼が恐怖や絶望から解放されたということであり、「救いのあるエンディング」になっていたと思うのだ。


ところがそう、アダムは死なない。彼に安息は訪れない。

ゆえに多くの鑑賞者は本作を見終わった時に、「うわぁ、最悪……」「超怖いんですけど!」「悲惨なラストだ……」などと絶望的な気分になり、「うん、これぞホラー映画!面白かった!!」と満足するという次第である。


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