連続する2つのシーンの間に「大きな解離・落差・矛盾」がある ~アニメ「苺ましまろ」の場合
◆概要
【連続する2つのシーンの間に「大きな解離・落差・矛盾」がある】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「苺ましまろ」(第4話)
▶1
本作の主人公の1人・伸恵(20歳の短大生)。
彼女はいま、アルバイトを探している。
・Step1:近所のファミレスでバイト情報誌をめくる伸恵。彼女は呟いた「ハァ。もう何でもいいや、時給さえよければ……」。
・Step2:と、その時だった。壁に貼られた1枚のビラが目に入った。タイトルは「アルバイト募集!」。そう、まさにいまいるこのファミレスでウェイトレスを募集しているのだった。
・Step3:時給は、おっ!「1000円~」となっている!伸恵は身を乗り出す。これはいいぞ!
・Step4:ところが、うっ!「禁煙」と書いてある(伸恵はチェーンスモーカーである)。さらに、そのファミレスのウェイトレスはレースがたくさんついたかわいらしいミニスカートの制服を着ていた。
・Step5:かくして伸恵は呟いた「あんな制服恥ずかしくて着れねぇよ(笑)それに禁煙だしさ(笑)いくら時給がよくても……」。
・Step6:ところが次のシーンでは……伸恵はひらひらの制服を着てそのファミレスでアルバイトをしている(!)。彼女は精一杯の笑顔で言った「いらっしゃいませー❤」。
▶2
「あんな制服恥ずかしくて着れねぇよ」だの「禁煙だし」だのとさんざん文句を垂れながら、次のシーンではもう働いている……!
このテンポのよさがいい。「早っ!(笑)」「お前、もう働いてんのかよ(笑)」「金には勝てなかったか(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。
なお、もしも「伸恵があれこれ思案する」「バイトの面接を受ける」「バイト仲間に挨拶する」といった様子が描写されていたら、これほど面白いシーンにはなっていなかったはずだ。
そう、これは全部すっ飛ばしていきなり働いているシーンにジャンプしたからこそ生まれた笑いなのである。