これは、「過去のトラウマ的な出来事と向き合う物語」である!!|【第12話 僕達は友達が少ない(`・ω・´)】「僕は友達が少ない」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
本話のストーリーをざっくり整理すると……
・第1幕(1):小鷹が「夜空 = 10年前の親友」と気づく
・第1幕(2)、第2幕前半:「小鷹がいまの学校に転入してくる」「小鷹と夜空が隣人部を創立する」いったこれまでの出来事が、夜空の視点から描かれる
・第2幕後半:10年前に夜空が約束をすっぽかした理由が説明される → 夜空が、「ソラ」ではなく、引き続き「夜空」と呼ぶよう要求する
・第3幕:いつも通りの隣人部 → 小鷹は思う「これから先、オレと夜空、そして皆がどうなるのかはまだわからない。わからないからこそ、今日もオレは隣人部にいるのだ!」
ポイント②
<1>
本話は、「僕は友達が少ない」の最終話です。
さて、【結局のところ「僕は友達が少ない」とはどのような物語だったのか?誰が、何をする物語だったのか?】を整理してみましょう。
<2>
「僕は友達が少ない」の舞台は、「隣人部」です。隣人部とは、友達作りを目的とするクラブ。
そして、本作の主人公は隣人部の部員・小鷹。もちろん彼には友達がいません。
では、なぜ小鷹は友達がいないのか?
「ヤンキー風の見た目が災いしてクラスメイトから避けられているから」など理由はいくつかありますが、特に重要なのが……小学生時代の苦い記憶!
つまり、トラウマです。
<3>
かつて小鷹に何があったのか、ざっくり整理してみましょう。
・Step 1:小学生時代、小鷹には無二の親友がいた。親友の名はソラ
・Step 2:10年前、小鷹が父の仕事の都合で引っ越すことになる。小鷹は大ショック。彼は「引っ越すことになった」となかなかソラに打ち明けられない
・Step 3:引っ越し2日前。小鷹は意を決して、ソラに言った「明日大事な話がある」。するとソラは「私も話がある」。2人は翌日も会う約束をする
・Step 4:ところが翌日、ソラは姿を見せなかった。かくして小鷹はソラに別れを告げられぬまま、街を去ったのだった……
<4>
で、それから10年。小鷹はいまもモヤモヤしています。
すなわち、
・モヤモヤ①:なぜソラは姿を見せなかったんだ?オレたちは親友だったんじゃないのか!?
・モヤモヤ②:ソラは、いまもオレを覚えていてくれるのかな……?
・モヤモヤ③:友達って一体何なんだ!?
……なんて具合です。
※補足:この辺りの事情は、第3話と第6話で断片的に描かれています。
<5>
この10年前の出来事が、「小鷹が友達を作れぬ理由」の1つになっていることは間違いないでしょう。
つまり、小鷹が現状を乗り越えるには(= 友達をたくさん作れるようになるには or 友達が少ない状態を肯定できるようになるには)、このトラウマ的な出来事を乗り越える必要があるのです。
では、いかにして乗り越えるか?
最も簡単なのは、ソラと再会することでしょう。そして「あの日姿を見せなかったのはなぜか?」「いまも友達と思ってくれているか?」といった問いに答えてもらえばいい。
<6>
というわけで、ソラです。
一体全体ソラがいまどこにいるかというと……そう!夜空こそがソラだったんですよね。
夜空の正体がソラであることは、鑑賞者には第3話で明かされます。
しかし、小鷹がそれに気づくのは第11話の終盤。そして本話(第12話)では、2人の10年ぶりの<再会>が描かれています。
<7>
要するに……「僕は友達が少ない」は、【小鷹には友達がいない。彼は上手く友達を作れない。そんな彼が、友達を作れなくなった原因(の1つ)である過去の出来事と向き合う物語】なのです。
ただし!
これは、小鷹がトラウマを克服せんとして奮闘する物語ではありません。夜空とソラが同一人物だと判明したのは、【夜空の行動(隣人部を創立する) + 偶然(夜空の髪が燃え、ショートカットになる)】の結果です。小鷹自身は何もしていない。
また、小鷹はトラウマ的な過去の出来事をいまだ乗り越えてはいません。彼は、あくまでも「向き合った」に過ぎない。
以上の2点、すなわち【主人公が何もしていない】【問題は解決していない】が本作の大きな特徴と言えるでしょう。
本作に対しては、
・頭を空っぽにして楽しめる!最高!
・ストーリーに起伏が足りない!ちょっと不満……!
・最終話(= 本話)が、ちっとも最終話っぽくない!
……など様々な感想があると思いますが、その多くはこの2点に起因するものだと思われます。
<8>
なお、ここまで申し上げてきたことに関連して、浦畑達彦さん(本作のシリーズ構成担当)は以下のようにおっしゃっています。
最初に決めたのが、原作3巻のラストで描かれた夜空とソラが同一人物であることがわかるところをクライマックスにしよう、ということですね。あとはそこに向けていかに物語の流れを集約させていくか。
※「僕は友達が少ない コンプリート」より引用。
ポイント③
<1>
本話は、夜空の本性・本音・真意が明かされるエピソードです。
そもそも、第1~11話の夜空は決して褒められたキャラではありませんでした。
重度のコミュ障だし、性悪だし、毒舌だし、特に星奈に対する態度はほとんどいじめであり、気分を害した鑑賞者も少なくない様子。
<2>
そんな夜空が……おお!じつは不器用で繊細な少女だった!
特に、「小鷹が私の正体に気づいてくれない!」とやきもきする姿(第1幕)や、「で、私がソラだったわけだけど……感想は?」と赤面して問う姿(ミッドポイント)はじつにかわいらしく、必見です♥
また、夜空が隣人部を創立した動機も明らかになりました。
そう、彼女は、小鷹と10年前の関係に戻りたかった!ゆえに隣人部を立ち上げたのです。
であれば、夜空が他の部員(特に星奈)に対して辛辣・無関心なのも無理ないですよね。だって彼女は、(少なくとも創立当初は)小鷹と友情を深めることしか考えていなかったのですから。
<3>
以上を踏まえて考えると……上述の通り、第1~11話の夜空は多くの鑑賞者からヘイトを集める存在だったわけですが、これ、たぶん制作者の思惑通りだったんでしょうね。
第1~11話でヘイトを集めておいて、第12話で「じつは夜空は……!」とすべてを明かす。
当然、鑑賞者は度肝を抜かれる。
嗚呼、このカタルシス!
夜空のネガティブな部分をこれまでさんざん描いてきたのは、このカタルシスを生み出すためだったのだろうと思うのです。
ポイント④
<1>
本話には、大きな謎があります。
すなわち、【夜空はなぜ「ソラ」ではなく、「夜空」と呼ぶように要求したのか?】。
なにしろ、いまや真実が明らかになったわけですからね。かつてのように「ソラ」「タカ」と呼び合ってもよさそうなものです。
というか、それこそが夜空の望みだったのではないか?
少なくとも第1話時点(= 本話の第1幕や第2幕前半で描かれるエピソード)では、夜空は「小鷹と10年前の関係に戻りたい」と考えていたはずです。だから隣人部を作った。
それなのに……なぜ「夜空」と呼ぶように要求したのでしょうか?
<2>
作中では、夜空の真意は説明されていません。
しかし、「おそらくこういうことではないか」という仮説を立てることは可能です。
以下、3つの仮説をご紹介しましょう。
<3>
まずは、仮説①。
【夜空は、本当は「ソラ」と呼んでほしかった。しかし……恥ずかしい!ゆえに「夜空」と呼ぶよう命じた】という仮説です。
夜空が極度の照れ屋であることは間違いありませんからね。この仮説、十分あり得ることでしょう。
<4>
続いて、仮説②。
【夜空は「『ソラ』『タカ』と呼び合うのは時期尚早」と考えている。ゆえに、「夜空」と呼ぶよう命じた】という仮説です。
夜空は、隣人部の誰よりも対人能力を欠いています。強烈なコミュ障であり、人見知りであり、そして毒舌家。他人と上手く付き合えない!
それゆえに、彼女は強烈な「孤独感/寂寥感/心の闇」を抱えていると推測されます。
そんな夜空にとって、10年前、小鷹と過ごした日々は人生最良の時だったはずです。
そして、その甘美な時間を象徴するものこそが……そう、「ソラ」「タカ」という呼び名。つまり、夜空にとっては、「ソラ」「タカ」という呼び名は神聖なものなのです。
夜空が、「この呼び名は、もっと親しくなってからでないと使わせぬ!」と考えたとしても不思議はないでしょう。
<5>
最後に、仮説③。
【夜空が小鷹に対して抱いている気持ちは、「友情」よりもむしろ「恋心」である】という仮説です。
夜空が小鷹に対して特別な感情を持っていることは、間違いありません。
しかし、それが「友情」なのか、はたまた「恋愛感情」なのかは明かではない。夜空自身も判別できていないはずです。
もしも夜空が小鷹に恋愛感情を抱いているとすれば……「ソラ」「タカ」という2人の友情を象徴する呼び名を使いたがらぬのも納得です。
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