空から少女が落ちてくるシーン ~アニメ「月は東に日は西に 〜Operation Sanctuary〜」の場合
◆概要
【空から少女が落ちてくるシーン】は、多くの作品に描かれるストックシーンである。原則として①物語の序盤に配置され、②主人公とヒロインはここで初めて出会う。
最も有名なのは、映画「天空の城ラピュタ」のシータが落ちてくるシーンだろう。だがこれ以外にも様々なバリエーションが存在する。また、シータの落下に対するオマージュやパロディもある。
本記事では、アニメ「月は東に日は西に 〜Operation Sanctuary〜」(第1話)の当該シーンを取り上げる。
◆事例研究
◇事例:アニメ「月は東に日は西に 〜Operation Sanctuary〜」(第1話)
▶1
本作の舞台は蓮美台学園(おそらく高校)。主人公は同校2年生の直樹だ。
・Step1:ある日の昼休み、直樹は屋上のベンチでうたたねしていた。
・Step2:ふいに、上空から真っ白い羽根が1枚落ちてきた。そして直樹の腕に乗った。
・Step3:直樹が目を覚ます。辺りはまばゆい光に包まれていた。一体何事だろうか?直樹は困惑する。彼は空を見上げた。するとそこには……少女がいた。白く大きな翼を持つ少女が空に浮いていたのだ。まるで天使である。
・Step4:間もなく、光が消えた。同時に少女の翼も消滅。少女は悲鳴を上げて落っこちてきた「キャー!」。
・Step5:少女は直樹の上に落下。2人はベンチごとひっくり返った。
・Step6:少女は「痛たたた……」と呟きながら体を起こした。そして直樹の顔をまじまじと見つめて「ゆっ、ゆっ、祐介!」。直樹に抱きついた。それから間もなく、少女は気を失ってしまった。
・Step7:ややあって少女は目を覚ました。少女の名は天ヶ崎美琴。タルキスタンなる国からやってきた転校生で、今日から直樹のクラスに所属するとのことだ。
▶2
ご注目いただきたいのは、「落下直後の美琴が、直樹を祐介なる人物と見間違えた」という点である。要するに、直樹は祐介とよく似ているらしいのだが、じつはこれこそが本作全体を貫くキーポイントなのだ。
大雑把にまとめると、
・1:美琴の正体は未来人である。彼女は時空転移装置を使って100年後の世界からやってきた。
・2:「祐介」というのは美琴の義弟だ。現在行方不明であり、美琴は彼を探している。
・3:祐介と直樹はよく似ている……というか、じつは2人が同一人物だということが後に明らかになる。正確には「時空転移装置の事故によって直樹から生まれた分裂体 = 祐介」だ。
・4:そして本作のクライマックスで、祐介と直樹は1人の人間に戻る。
要するに、「メインヒロイン(の1人)が空から落ちてきて主人公と遭遇する」というインパクト大の冒頭シーンに、じつは、物語全体を貫く伏線が張られていたというわけだ。
▶3
なお、美琴が空から落ちてきたのは時空転移装置の座標が狂ったかららしい。そして美琴だけはなぜか毎回座標が狂い、装置を使うたびに空から落ちてくるのがお約束になっている。