ドリーズームで「恐ろしい雰囲気・不穏な雰囲気」を醸し出したり、キャラの「恐怖・不安・動揺・焦燥」を表現したりする ~アニメ「はるかなレシーブ」の場合
◆概要
【ドリーズームで「恐ろしい雰囲気・不穏な雰囲気」を醸し出したり、キャラの「恐怖・不安・動揺・焦燥」を表現したりする】は「空間演出、画面構成」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「はるかなレシーブ」(第5話)
▶1
本作の主要キャラの1人・愛衣(女子高生)。
彼女は、とある高校のバレー部員だ。
・Step1:春、愛衣は3年生に進級した。彼女は他の部員と共に新入生勧誘活動に精を出す。
・Step2:やがて愛衣は1人の少女に声をかけた「ねぇあなた、バレーボールに興味ない?」。
・Step3:声をかけられた少女(舞)はムッとして「私のこと、からかってるんですか!?バレーって大きい人がやるものですよね?」。彼女が不愉快になるのも無理はない。というのも舞は小柄、どう見てもバレーボール向きではないのだ。しかし……愛衣は言った「違う違う!バレーボールはね、大きい人を倒すスポーツなの!!」。
・Step4:その言葉に舞は目を見開いた。じつは彼女は、自身の体格にコンプレックスを抱いていたのだ。ところが愛衣曰く、小柄な舞でも十分活躍できる、いや、それどころか背の高い人を倒すことも可能だと言う。舞は胸を躍らせた。私、バレーをやります!!
・Step5:というわけで舞はバレー部に入部し、リベロ(守備専門の選手、比較的小柄な人でも務まりやすい)に就任。すぐに頭角を現した。
ところが、
・Step6:愛衣や舞の奮闘むなしく、バレー部は大会の2回戦で敗退してしまった。高身長選手ばかりを揃えた相手チームに対して、愛衣のスパイクがまったく決まらなかったのだ。
・Step7:試合後、部員たちは慰め合う「仕方がないよ。相手の背が高すぎた」。そんな中……舞だけは激しく落ち込んでいた。そう、「やっぱり背の高い人には勝てないんだ!」とショックを受けていたのだ。
・Step8:そんな舞を見て、愛衣は愕然とする。「小柄な選手でも活躍できる!」「大きな人を倒すのがバレーの醍醐味!」と私は言った。舞はそれを信じてついてきてくれた。しかし実際には……愛衣は呆然と立ち尽くす「嘘つきだ、私」。
▶2
さて、ご注目いただきたいのはStep8。「愛衣が呆然と立ち尽くす」というシーンで、ドリーズームが使われているのだ。
※ドリーズーム:Wikipediaのこの9秒間の動画をご覧いただきたい。一言で言うならば、「画面中央で呆然と立ち尽くす愛衣は不動、しかし背景だけはぐーんと後ろの方に伸びていくように見える」という映像である。
つまり、愛衣がいかにうろたえているか、舞に対していかに申し訳なく思っているかを表現するために「背景だけが伸びていく」という奇妙な映像が使われているわけだ。