見出し画像

七人の農民、出陣す!でももう帰りたい!!|『コールド マウンテン』(2)

画像1


テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「コールド マウンテン」をベースに新しい物語を妄想します。

※「コールド マウンテン」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「コールド マウンテン」は、戦争にうんざりした主人公が軍を脱走し、故郷(愛する人の待つ場所、戦場とは真逆の無垢で穏やかな場所)に向かって旅する物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「コールド マウンテン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


画像2


画像3


画像4


三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『コールド マウンテン』 ~『7人の農民!』編」です。


画像5


嘉村 ……「七人の侍」?


三葉 いえ、「七人の農民」ですね。

嘉村 ははぁ……。

三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は16世紀の日本。そう、戦国時代です!全国の有力者が我こそは我こそと名乗りを上げ、天下統一を目指した時代!

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は、とある農村の青年です。彼は幸せでした。決して裕福ではないものの、昔馴染みの仲間やかわいいガールフレンドに囲まれて、楽しく暮らしていたのです。

嘉村 なるほど。

三葉 しかし、1467年の応仁の乱、そして1493年の明応の政変。時代が大きく動く。戦いの時代がやってきた!その影響は片田舎の農村にも及びました。すなわち……土地を治める大名から出陣命令が届いたのです「貴村からは、逞しい男子を7名差し出してもらいたい」。戦です。死と隣り合わせです。しかしその一方で、手柄を上げようものなら一生の名誉。褒美だって期待できる。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公の仲間の1人が叫んだ「千載一遇のチャンスだべ!行くっきゃねぇ!」。他の者も一斉に賛同する「んだんだ!」。だが、主人公は乗り気になれない。彼は温和な男で、戦場へなぞ行きたくなかった。しかし……仲間が「上手くいったらモテモテだべ!」「ゲヘヘ!」と盛り上がる中、自分だけ参加しないとは言いづらく……かくして主人公とその仲間、計7人の青年が村を代表して出陣することになりました。

嘉村 ほぉ。まさに「七人の農民」というわけですね。

三葉 彼らは村人に激励され、勇ましく出立しました。手にはクワやスキ、鎌といった愛用の農具。これが武器です。道中、捕らぬ狸の皮算用で盛り上がる。数日後、彼らは集合場所に到着し、あちこちの村から集まってきた農民兵士と合流しました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さぁ、いざ行かん!主人公らは大名に従い、意気揚々と戦場へ向かったのですが……のどかな農村で生まれ育った彼らは、戦を甘く考えていました。戦というのは、要するに殺し合いです。死、死、死!血、生首、うめき声!主人公らは、目の前の出来事が信じられない。戦というのが、まさかこれほど悲惨なものだったとは!これでは地獄じゃないか!そう、そこは地獄でした。

嘉村 ふーむ……。

三葉 しかし、いつまでも唖然としているわけにはいきません。彼らは兵士です。戦わねばならぬ。身を守るためにも、やらねばならぬ。彼らは、多くの敵兵を殺しました。

嘉村 なるほど。

三葉 無論味方も少なからぬ被害を受ける。主人公らは運よくまだ無事ですが……親しくなった他村出身の若者は「母ちゃん母ちゃん!痛いよ!怖いよ!」なんて悲痛な叫び声を上げながら、ドシドシ死んでいく。

嘉村 戦争ってのは、いつの時代も悲惨なものですねぇ……。

三葉 そしてある日、主人公らは決意します。……脱走しよう。脱走といえば重罪です。しかし、もうこんなところにはいたくない!死にたくないし、殺したくもない!

嘉村 ふむ。

三葉 草木も眠る丑三つ時、主人公ら7人は脱走した。帰ろう。愛する家族のいるあの村に!恋人の待つあの村に!のどかで平和なあの村に!

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし、故郷への道のりは楽なものではありません。何よりも恐ろしいのは、脱走兵を狙う追跡兵です。彼らは、容赦なく主人公らを殺そうとする。主人公らは必死に逃げ、時には農具で応戦する。

嘉村 なるほど。

三葉 また、追跡兵に見つかるおそれがあるため、主人公らは整備された道や旅籠を利用することができません。彼らは山中の道なき道を進む。飢えや渇きに苦しむ。野生動物に襲われる。「オレ、今度という今度は疲れただよ……」「いつになったら村に帰れっぺかなぁ」。泣き言だって出る。

嘉村 まぁねぇ……。

三葉 しかし7人は励まし合い、歩き続けました。そしてついに、懐かしの村が見えてきた。おお、神よ仏よ!感謝します!……が、何かがおかしい。どこか違和感がある。

嘉村 ほぉ……。

三葉 彼らは、一刻も早く家族や恋人と会いたいのをグッと堪えて、木陰に身を隠す。そして様子を伺う。すると……嗚呼、何と言うことか!村は山賊に占拠されていたのです。

嘉村 山賊!

三葉 ええ。小さな村で、若く逞しい青年が7人も留守にしているわけですからね。山賊にとっては襲撃のチャンスです。きっと、主人公らが村を出立するのを待っていたのでしょう。

嘉村 なるほど。

三葉 山賊は村の長老らを人質にとり、好き放題やっているようです。馳走を運ばせ、男を殴り、女を犯す。

嘉村 ふーむ。

三葉 主人公らは絶望します。彼らは人を殺したり、あるいは殺されたりするのが嫌で脱走しました。そして、そんな物騒で殺伐とした戦場とは無縁の故郷に帰ってきたのです。ところが……嗚呼!ここも物騒!ここも殺伐!

嘉村 かわいそうに……。

三葉 しかし、愛する人のピンチ。やらねばならぬ。逃げることはできぬ。主人公らは作戦を練る。山賊はおよそ20人。彼らは刀や銃を持っている。一方、こちらはへっぴり腰の農民7人。武器は農具のみ。いくら連中が油断しているとはいえ、これは厳しい戦いになりそうです。「……死ぬかもしれんなぁ」「んだんだ」「嫌な予感がするだよ」「お前の予感はよく当たるからなぁ」「んだんだ」「しかし、やるしかないだろうなぁ」「んだんだ」。かくして7人は農具を手に、奇襲をしかけた。そして山賊と戦い……相打ちに持ち込んだ。

嘉村 ほぉ……。

三葉 主人公らは息絶えました。長く辛い旅路の果てに、愛する人と再会することも叶わず、散っていった。じつに哀れ……だが!彼らの旅は無駄ではありません。彼らが村に戻ったからこそ、村人は救われたのです。彼らは、愛する人、そして愛する村を守ったと言えるでしょう。

嘉村 なるほど。言わばこれは、「『コールド マウンテン』の日本版」、「戦国時代版」、「農民版」、「主人公が7人いるバージョン」というわけですね。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「『コールド マウンテン』 ~『魔法少女の帰還』編」です。


画像6


嘉村 魔法少女!

三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は魔法少女です。魔法少女と言っても様々なタイプがありますが……彼女は、魔法の力を使って家族や友だち、街の人びとのちょっとした困りごとを解決していくタイプの魔法少女です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 古くは「ひみつのアッコちゃん」の加賀美あつ子、あるいは「エスパー魔美」の佐倉魔美、そして「おジャ魔女どれみ」の春風どれみのタイプですね。


嘉村 なるほど。

三葉 彼女は「大好きなみんなのちょっとした幸せ」に貢献できることを喜んでいたのですが……ある時、緊急招集を受ける。

嘉村 招集……。

三葉 ええ。呼び出したのは、彼女に魔力を提供した魔女です。主人公は指定された場所に赴く。すると、彼女以外にも多くの魔法少女が集まっていました。

嘉村 あー、たくさんの魔法少女が存在する世界なんですね。

三葉 ええ、そうですね。

嘉村 ふむ。

三葉 そして魔女曰く、「間もなく、人類の存亡をかけた戦いが始まる。敵は巨悪である。少女たちよ、いまこそ団結し立ち向かうのだ!」。

嘉村 ほぉ。

三葉 人類滅亡の危機と聞けば、放っておくわけにはいきません。主人公は、他の魔法少女らと共に戦地へ赴く。そして戦いが始まる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 それは、血で血を洗う仁義なき戦いでした。敵も魔法を使う。こちらも応戦する。まさに総力戦。主人公はショックを受けます。

嘉村 ふーむ。

三葉 彼女はこれまで、「ひみつのアッコちゃん」的な、もしくは「エスパー魔美」的な、あるいは「おジャ魔女どれみ」的な、明るく元気でのほほんとした世界で生きていました。しかしそこは……そう!ダークファンタジー系魔法少女「魔法少女まどか☆マギカ」の世界です。


三葉 つまり、「日常系魔法少女もの」の主人公が、突如「ダークファンタジー系魔法少女もの」の世界に足を踏み入れたのです。「魔法少女もの」に詳しい方は、「ある日突然ワルプルギスの夜と戦うことになった春風どれみ」をご想像いただければと思います。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公は、戸惑いながらも戦います。彼女は敵を殺す。仲間が殺される。彼女も何度も死にかける。戦場には血の匂いが立ち込める。辺りには、首なしの死体、上半身を吹き飛ばされた死体、最早それが人間であったことすらわからぬ肉塊が転がっている。

嘉村 こりゃ悲惨だ……。

三葉 主人公はそれでも戦い続けます。何しろ、負ければ人類が滅亡するのです。大切な家族や友だちのために逃げるわけにはいかない。……しかしある時、少女たちの間で奇妙な噂が広がる。

嘉村 ほぉ……。

三葉 曰く、「もしかすると私たちが戦っている相手は……私たちと同じ魔法少女なのでは?」。そしてやがて真実が明らかになります。それは、2人の魔女による権力闘争でした。

嘉村 権力闘争……?

三葉 魔女の力は強大です。真っ正面からぶつかり合うと、双方無事ではいられない。だから2人は、人間界の少女らに自らの力を分け与え、それを手駒として戦っていたのです。つまり、代理戦争。

嘉村 ははぁ……要するに、朝鮮戦争やベトナム戦争の類ですね。核兵器を持ったアメリカとソ連が直接ぶつかるのはまずい。だから、朝鮮半島であれば「韓国」と「北朝鮮」、ベトナムであれば「ベトナム共和国」と「ベトナム民主共和国」という代理勢力が衝突した。

三葉 はい、その通りです。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公は虚しくなる。自分は一体何のために戦っていたのか。少女らは何のために死んでいったのか。もう嫌だ。こんなところにいたくない……。彼女は何人かの同志と共謀して、戦線を離脱。故郷を目指します。

嘉村 なるほど。

三葉 途中、魔女の軍勢が「裏切者は許さないよ!」と追いかけてくる。彼女は必死に戦い、返り討ちにする。そして長く辛い帰路の果てに……嗚呼、懐かしの街!

嘉村 ほぉ。

三葉 彼女は家族や友人との再会を祝します。しかし……彼女が留守の間、街の治安はグッと悪化していました。

嘉村 あー、魔法少女が不在だったから……。

三葉 そうですね。ここぞとばかりに悪がはびこっていたのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 本音を言えば、主人公はもう戦いたくありませんでした。戦いはさんざん!誰も傷つけたくない。誰も憎みたくない。周りの人の「ちょっとした幸せ」のためにだけ、魔法を使いたい!……が、彼女は善人です。悪が栄え、弱きが挫かれていると聞けば黙っていることはできない。

嘉村 ふーむ。

三葉 彼女は自らを無理に鼓舞し、ヤクザ、チンピラ、詐欺師、悪徳警官、暴力教師、セクハラオヤジ、いじめっ子などなど、街中の悪人と戦い始めました。もう嫌だ!戦いたくない!しかし……彼女は今日も戦う。やがて精神を病む。それでも戦う。そしてすべてが終わった時、彼女の心が限界に達した。彼女は街の人びとが家庭で、学校で、職場でつつがなく過ごすのを確認し……自ら命を絶った。

嘉村 えー……。

三葉 で、おしまいです。

嘉村 うーむ……つまり、主人公は「戦い」や「魔女の身勝手さ、醜さ」に嫌気が差して戦線を離れた。彼女は必死の思いで帰郷する。しかしたどり着いた街でも……彼女は「戦い」に巻き込まれる。そして「人間の身勝手さ、醜さ」に直面する。かくして精神的な限界が訪れたと。

三葉 そうですね。しかし「コールド マウンテン」同様、彼女の戦いは無意味ではありません。彼女が精神をすり減らして戦ったからこそ、彼女の大切な街には幸福が訪れたのです。

嘉村 ふーむ……。

三葉 以上、「『コールド マウンテン』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


続きはこちら!!

---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで!

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!