「キャラAは目を覚ますと記憶を失っていた→やがて、伏せられた写真立てを発見」というストーリーによって「写真立てには、Aの正体を示唆する写真が収められているに違いないぞ」と先行きを期待させるものの、写真立てを起こしてみると中は空だったという予想外の展開によって読者・鑑賞者の興味を引きつける ~特撮ドラマ「ULTRASEVEN X」の場合
◆概要
【「キャラAは目を覚ますと記憶を失っていた→やがて、伏せられた写真立てを発見」というストーリーによって「写真立てには、Aの正体を示唆する写真が収められているに違いないぞ」と先行きを期待させるものの、写真立てを起こしてみると中は空だったという予想外の展開によって読者・鑑賞者の興味を引きつける】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:特撮ドラマ「ULTRASEVEN X」(第1話)
▶1
本作の主人公は、ジン(若い男性)。
ある日目を覚ますと、
・Step1:ジンは記憶を失っていた。自分が誰かわからない。ここがどこかもわからない。右も左もわからない。
・Step2:その後いろいろあって、ジンはとあるマンションの一室へ。そこは彼の住まいらしいのだが、ダメだ、やはり何も覚えていない。
自分の正体を知るべく、
・Step3:部屋の中を探し回るジン。しかし、参考になりそうなものは何も見つからない。
・Step4:やがて彼は、戸棚の上に写真立てがあることに気がついた。写真立ては伏せられている。
・Step5:ジンは手を伸ばし、写真立てを起こす。ところが中は空、写真は入っていなかった……。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step4-5である。
記憶喪失の男、そして伏せられた写真立て……。
多くの鑑賞者は「おっ!」と思ったことだろう。写真立てにはきっと何かヒントになる写真が収められているに違いないぞ!
ところが実際には――空だった。
この「肩透かし感」がいいと思うのだ。
一筋縄には進まない物語、この先何が起こるかわからない物語という感じがして、じつに引きつけられる。
つまり、【「キャラAは目を覚ますと記憶を失っていた→やがて、伏せられた写真立てを発見」というストーリーによって「写真立てには、Aの正体を示唆する写真が収められているに違いないぞ」と先行きを期待させるものの、写真立てを起こしてみると中は空だったという予想外の展開によって読者・鑑賞者の興味を引きつける】というテクニックである。