「類似性の高いセリフ」を架け橋としてシーンをつなぐ ~「文句は言えないか……」から「文句はあるのです!」へ
◆概要
【「類似性の高いセリフ」を架け橋としてシーンをつなぐ】は「シーンとシーンのつなぎ方」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「恋と選挙とチョコレート」(第1話)
▶1
本作の舞台は、とある高校の食品研究部、通称「ショッケン」。
そのショッケンが廃部の危機に瀕していると明らかになった時のことだ。
・Step1:教室。裕樹、千里、美冬(いずれもショッケンの部員)、美絵瑠(FNOS部の部長)、玲二(驚嘆祝祭部の部長)……廃部の危機に瀕した弱小クラブの部員たちが集まって話をしている。
・Step2:美冬が言った「ショッケンはお菓子を買うだけでかなり予算を使っているから……」。裕樹もぼやく「しかも、菓子を消費するだけで何の実績も残さないからなぁ」。
・Step3:そう、ショッケンはほとんど菓子を食うだけの部活動なのだ。裕樹はうなだれた「廃部の候補に挙げられても文句は言えないか……」。
・Step4:次の瞬間、場面がパッと切り替わり、ショッケンの部室でのんちゃん(ショッケンの前部長)が叫んだ「文句はあるのです!」。その後、部員揃って善後策を検討することになった。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step3から4へのシーン移行である。「文句は言えないか……」という裕樹のセリフと、「文句はあるのです!」というのんちゃんのセリフがよく似ているのがポイントだ。
そう、この類似性を架け橋として、「Step3:教室のシーン」と「Step4:ショッケンの部室のシーン」がスムースにつながれているわけだ。
▶3
考えてみれば、教室のシーンと部室のシーンの間には様々な出来事があったはずだ。
例えば、「裕樹ら3人が『お互い頑張りましょう』『また明日!』と美絵瑠、玲二に別れを告げる」「裕樹ら3人が廊下を歩く」「途中、友だちや教師と挨拶を交わす」「ショッケンの部室に到着。先に来ていた部員と挨拶を交わす」などなど。
ところが本作では、【「文句は言えないか……」 → 「文句はあるのです!」】というたった1つのセリフでこれら全部をまるっとスキップ!時間も場所もすっ飛ばして一気に善後策を相談するシーンに移る。
かくして生まれるスピード感!
めちゃくちゃにテンポがいい。見ていて爽快である。
つまり、【「類似性の高いセリフ」を架け橋としてシーンをつなぐ】というテクニックは物語のテンポアップに貢献しているわけだ。