「逆恨み」ほど恐ろしいものはない!!|『アメリカン・ビューティー』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「アメリカン・ビューティー」をベースに新しい物語を妄想します。
※「アメリカン・ビューティー」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「アメリカン・ビューティー」は、人生に絶望した中年男が、娘の友人に一目惚れしたことをきっかけに自分の欲望のままにふるまうようになり、やがて「制裁」を受ける物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「アメリカン・ビューティー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『アメリカン・ビューティー』 ~『アイドルの結婚』編」です。
嘉村 アイドルの結婚……?
三葉 「アメリカン・ビューティー」と比較すると以下のようになります。
三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は日本の地方都市、主人公は若い男性会社員です。
嘉村 ふむふむ。
三葉 彼は、パッとしない毎日を送っていました。毎日朝起きて仕事に出かけ、大して情熱も持てぬ業務に取り組む。上司やお客に褒められることもあるが別段嬉しいとは思えず、また彼らから叱責されても「アチャー」と思う程度。特段悔しいとは感じない。毎日1~2時間ほど残業をして、帰路につく。そして眠る。これの繰り返し。
嘉村 ふーむ。
三葉 無論主人公とて、「我ながらパッとしないよなぁ」と思うこともあります。特に通勤電車の中で若々しい女子高生を見かけたり、あるいは休日に同世代と思しき男女が赤ん坊を連れて買い物しているのを見たりすると、ちょっと憂鬱な気分になる。しかし、だからと言って何かしたいことがあるわけではないし、特技もない。彼は、今朝も淡々と出社の準備をするのでした。
嘉村 ふむ。
三葉 しかしそんなある日……彼の人生は一変する!きっかけは、「とある女性タレントが結婚した」というニュースでした。彼は衝撃を受けた。頭の中が真っ白になった。
嘉村 ほぉ……と言うと?
三葉 ええ。そのタレントがデビューして間もない頃、まだ「知る人ぞ知るアイドル」「次に来るアイドル」と呼ばれていた頃、主人公は彼女の大ファンだったのです。何度かライブに足を運んだこともある。同好の士と夜を徹して語り合ったこともある。そういえば、写真集やCDも持っていた。最近はすっかり関心を失っていたとはいえ……彼女は、主人公の青春そのものだったのです。
嘉村 なるほど。
三葉 あの子が……あの初心でかわいかった女の子が……嗚呼、結婚!嗚呼、人妻!彼は、鈍器で脳天をぶん殴られたような衝撃を受けました。相手は誰だ!?彼女と結婚する果報者はどこのどいつだ!?彼は、慌ててスマホをスクロールする。相手はベンチャー企業の社長のようです。そうか、社長かぁ。きっと金を持っているんだろうなぁ。それに、自信に満ち溢れているのだろう。女は、自信満々な男を好むと言う。まぁ、気持ちはわかる。堂々としているヤツは確かにカッコいい。そうかぁ、社長かぁ。社長ねぇ……彼は思う「クソッ!羨ましい!オレだって、オレだって……社長になって、金持ちになって、そして元アイドルの奥さんがほしい!」。そして、その日から彼は起業の準備を始めました。
嘉村 おー、すごい行動力だ。
三葉 青春の象徴ともいえるアイドルの結婚が、よほど衝撃だったんでしょうね。
嘉村 まぁ、比較的最近では前田敦子さんや堀北真希さん、あるいは声優の竹達彩奈さん辺りが結婚した時の阿鼻叫喚を想えば、確かにこの主人公のように奮起する人がいても不思議はないかもしれませんね。
三葉 ええ。
嘉村 ふむふむ。
三葉 かくして、彼は動き始めました。「好きなことで起業する」とか、「世の中の役に立ちたい」とか、そんなことは一切考えていません。とにかく儲かるビジネスを!ただそれだけ!彼はスパッと退職すると、ビジネスチャンスを見つけ、仲間を集い、出資者にアプローチした。
嘉村 ふむ。
三葉 そして起業し、グイグイ会社を大きくしていく。
嘉村 ほぉ。
三葉 やがて、CAやらアナウンサーやらミスコン入賞者やら……そして元アイドルやらが参加する合コンにも呼ばれるようになる。
嘉村 おー!
三葉 とまぁ主人公は大変身を遂げたわけですが……そんな彼に影響を受けた人物がいました。1人目は、主人公の前職の同僚です。
嘉村 ふむ。
三葉 主人公が退職すると聞いた時には、「ハァ?起業?あんなヤツに無理っしょ!」と彼は冷笑的だったのですが……久しぶりにメシでも食おうということで再会し、仰天した。主人公の顔つきが違う!自信に満ち溢れているではないか!話を聞いてさらに驚く。随分上手くいっているようだ。彼は思う「起業って……案外簡単なんだなぁ」。そして彼も起業する。
嘉村 なるほど。
三葉 しかし言うまでもなく、誰も彼もがそうたやすく成功するものではありません。彼の会社は半年ほどで敢えなく倒産。彼は呆然とし……そして、主人公を逆恨みした!
嘉村 あー……。
三葉 主人公から影響を受けた人物が、もう1人います。主人公の学生時代の友人です。彼は、幼い頃から小説家を志望していました。しかし「自分なぞが作家になれるはずがない」と諦め、会社員になった。ところが……主人公と久しぶりに再会し、大いに刺激を受けた!彼は小説家を夢見て、会社を辞める。そして執筆に勤しみ、新人賞に応募する。あるいは、小説投稿サイトにアップしてみる。1ヵ月経つ。2か月経つ。3か月経つ。半年経ち、1年経つ。しかし、芽は出ない。彼は絶望する。そして……。
嘉村 主人公を逆恨みしたわけですね。
三葉 ええ、その通りです。「逆恨み」、あるいは「嫉妬」、「妬み」、「『なぜアイツだけが!』という不公平感」……そういった負の感情を抱いた者に、主人公が殺されて……物語は幕を閉じます。
嘉村 なるほど。
三葉 つまり、「平平凡凡たる会社員生活をはみ出した主人公が、はみ出すことに失敗した者から『制裁』を受ける物語」と言えるでしょう。
案②
嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。
三葉 はい。「案②」は、「『アメリカン・ビューティー』 ~『高校デビュー』編」です。
嘉村 高校デビュー!
三葉 まずは、「アメリカン・ビューティー」との比較表をご覧ください。
三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は日本の地方都市で、主人公は男子高校生です。
嘉村 ふむ。
三葉 中学時代、主人公は非リア充でした。陰気で、恥ずかしがり屋。勉強もスポーツもパッとしない。面白いことの1つも言えず、存在感は限りなくゼロに近い。
嘉村 ふむふむ。
三葉 非リア充仲間との熱いオタクトークは悪いものではありませんでしたが……しかし、彼は変わりたかった!モテたい!みんなにすごいと思われたい!カッコいいと思われたい!普通に……その、何て言うか……青春ってヤツを送ってみたい!
嘉村 ほぉ。
三葉 かくして、主人公は一念発起する。高校デビューである!高校デビューするのである!
嘉村 なるほど。
三葉 彼は、勉強やら筋トレやらに精を出した。お笑い番組を何度も何度も繰り返し視聴して、トークの間やらテンポやらを習得せんとした。髪型を研究し、わざわざ東京の名の知れた美容院に出かけた。店に入るのは死ぬほど恥ずかしかったが……その甲斐はあったはず。
嘉村 ふむ。
三葉 そして迎えた高校の入学式。さぁ、いまこそ努力の成果を発揮する時である!主人公は「『陰キャが無理しやがって』と苦笑されたらどうしよう……」「『プププッ。頑張りすぎじゃね?』と失笑されたら、オレ、もう2度と立ち直れないよ……」と不安に押し潰されそうだったのですが……嗚呼、努力は実った!彼は、明るく元気で爽やかな男女に溶け込むことができました。入学式後には、「ねぇ、○○くんもカラオケに行こうよ」と女子生徒から誘われた。無論人生初めてのことです。彼は内心万歳三唱しつつも、グッと冷静を装い「おっ、いいねぇ」と爽やかに微笑む。
嘉村 おー。
三葉 とまぁ、主人公の高校デビューは成功しました。その後も彼はこっそり努力を重ねる。その甲斐あって素敵な友人に囲まれ、やがて初めての恋人もできる。まさに青春である!彼は夢を叶えたのでした。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そんなある日……主人公は、中学時代のオタク仲間と偶然再会します。彼らは、主人公のあまりの変わりように仰天する。そして彼岸に行ってしまった主人公に対して、苛立ちを感じる。しかし、すぐに思い直す「コイツにできたんだから、オレだって!」。彼らは一念発起する。ある者は、主人公のようなリア充を志し、街にナンパに出かけた。別の者は、「絶対にマンガ家になる!」と夢に向かって走り始めた。また別の者は勇気を奮い立たせ、意中の男性に対して「じつはオレはゲイで、きみが好きなんだ!」と告白した。
嘉村 ふーむ。しかし……彼らの挑戦はことごとく失敗してしまうんですよね?
三葉 ええ、その通りです。
嘉村 そして、彼らは主人公を逆恨みする……。
三葉 はい。かくして主人公はぶっ殺されて、物語は幕を閉じます。
嘉村 なるほど……。
三葉 以上、「『アメリカン・ビューティー』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
続きはこちら!!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)