「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ ~「日焼けマシン」から「棺」へ
◆概要
【「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ】は「シーンとシーンのつなぎ方」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ファイナル・デッドコースター」
▶1
女子高生のアシュレーとアシュリン。
2人は間近に迫った卒業パーティに備えて、日焼けサロンに向かった。
・Step1:2人は日焼けマシンに入る。
・Step2:当初リラックスしていた2人だが……やがてマシンが故障!紫外線がぐんぐん強くなっていった。間もなく2人は異変に気がついた。だが不運が重なりマシンのドアが開かない!さらに不運なことに、その時サロンの従業員は店の外にいた。ゆえに、いくら2人が叫ぼうとも誰も助けに来てくれない!
・Step3:かくして、2人は異常な強さの紫外線に全身を焼かれて悶絶。悲鳴を上げる。もがく。絶叫する。身をよじらせる。延々と苦しむ!!
・Step4:しばらく後、今度は日焼けマシンが火を噴いた。そしてやがて2人の悲鳴が消えた。マシンの中で焼死したのだろう。カメラは天井付近から日焼けマシンを映す。
・Step5:……次の瞬間、シーンが切り替わった。画面中央には、日焼けマシンに替わって棺が映っている。事故から数日後、2人の葬儀が執り行われているのだ。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step4から5へのシーン移行である。上図の通り、「日焼けマシン」と「棺」の形状がよく似ているのがポイントだ。
そう、この類似性を架け橋として、「Step4:日焼けサロンで焼け死ぬシーン」と「Step5:数日後の葬儀のシーン」がスムースにつながれているわけだ。
▶3
当然ながら、日焼けサロンのシーンと葬儀のシーンの間にはいろいろなことがあっただろう。
例えば、日焼けサロンにパトカーが駆けつけてくる。消防車もくる。救急車もくる。2人は病院に搬送される。あまりにも悲惨な遺体を前にして医師は顔を歪める。2人の家族が泣き崩れる。クラスメイトは愕然とする……。
しかし本作では、こうしたあれこれはまるっと省略されている。
いや、単に省略されているだけではない。【「日焼けマシン」がパッと「棺」に切り替わる】という演出によって、日焼けサロンのシーンから葬儀のシーンへ一気にジャンプしたことが強調されているのだ。
そしてその結果、【2人が苦しむシーンは延々と描かれる → ところが死んだ後はあっという間に葬儀のシーンに移行する】というアンバランスさが生まれた。
重要なのは、このアンバランスさである。
「2人が苦しむ様子は長々と描いておきながら、いざ死んだらその後の出来事は全部カットかよ(笑)」「キャラが死んだら、後はもうどうでもいいってわけね(笑)」「キャラの死にざまを楽しむ『ファイナル・デスティネーション』シリーズらしいなぁ(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。
つまり本作では、こうした笑いを生み出すために【「日焼けマシン」がパッと「棺」に切り替わる】というシーン移行が採用されているわけだ。