キャラAが発言→ところがキャラBが次々とまぜっ返して台無しにしてしまう ~アニメ「苺ましまろ」の場合
◆概要
【キャラAが発言→ところがキャラBが次々とまぜっ返して台無しにしてしまう】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「苺ましまろ」(第3話)
▶1
本作の主要キャラの1人・アナ(小学5年生の少女)。
彼女はイギリス人である。しかし、親の仕事の都合で日本に移住して早5年。すっかり日本での暮らしに馴染んでいる。
なお、アナの苗字は「コッポラ」というのだが、彼女はこの苗字に強烈なコンプレックスを抱いていた。じつは以前通っていた学校でからかわれた経験があるのだ(コッポラ、確かにユニークな響きである。アホな小学生なら笑ったり、冷やかしたりするかもしれない)。
さてある日、アナが自らのコンプレックスを吐露した時のこと……。
・Step1:伸恵(アナの友人の姉。20歳の短大生でアナをかわいがっている)は微笑んだ。伸恵が言う「せっかく親からもらった名前なんだし、もっと誇りを持った方がいいんじゃないかな」。
・Step2:伸恵の言葉を受け、アナの表情が和らぐ。
・Step3:ところが……その直後、アナの友人の美羽が言った「まぁ、変なものは変だけどね」(美羽は伸恵を「お姉ちゃん」と呼び、慕っている。その大好きなお姉ちゃんがアナのことばかり猫かわいがりするものだから美羽は嫉妬、ゆえに意地悪なことを言ってしまうのだ)。
・Step4:アナはショックを受ける「なっ!」。
・Step5:再び伸恵が微笑んだ「いや、そんなに変な名前かな?有名な映画監督にもコッポラっているし、同じ名前でそんなすごい人もいるわけだから」。
・Step6:改めてアナの表情が柔らかくなる。
・Step7:しかし……すぐまた美羽が口を開いた「でも、日本人が聞いたらまず笑うよね」。
・Step8:アナは心に傷を負う「うぐぐっ!」。
・Step9:伸恵が三度微笑んだ「大事なのは名前なんかより中身だよ。自分に自信を持って生きていけば誰も名前のことなんか気にしないと思うよ」。
・Step10:アナの表情が穏やかになる。
・Step11:……が、美羽が言った「でも実際は、名前だけで人格とか役回りとか、結局はその人の人生までも決めちゃったりするけどね」。
・Step12:もう我慢できぬ!アナはついに泣き出してしまった。
▶2
アナを励ましてやろうとする伸恵。彼女は素晴らしい言葉を贈るが……しかし、美羽が次々と揚げ足を取っていく。
かくしてすべてが台無しになる!
つまりはこれ、「キャラAが発言→ところがキャラBが次々とまぜっ返して台無しにしてしまう」というコメディシーンである。
▶3
なお、このシーンのポイントは「美羽のモチベーション(なぜ美羽は意地悪をするのか?)」だろう。
上述の通り、美羽が意地悪するのはアナを嫌っているからではない。嫉妬しているからだ。大好きなお姉ちゃんを取られたくないからだ。大好きなお姉ちゃんに構ってほしいからだ。
そして、そう、「美羽は小学生の女の子 → そんな美羽が嫉妬ゆえ意地悪をしてしまう」という免罪符があるからこそ、私たち鑑賞者はこのシーンを見て笑っていられるのだと思う。「アナもかわいいけれど、嫉妬して意地悪しちゃう美羽もかわいいなぁ❤」と微笑ましく感じられるのだと思う。
もしもこれがなければ……「アナがかわいそうだよ!美羽って嫌な奴だなぁ!」というヘイトが渦巻き、笑うどころではなかったはずだ。