<レイプ・復讐もの>という映画のジャンルについて!!|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(1)
※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。
レイプ・復讐もの
「女囚701号 さそり」は、レイプされた女性(ナミ)が復讐を果たす物語。
映画の世界には<レイプ・復讐もの(Rape and Revenge Film)>というジャンルがあるのですが、まさにこれに該当します。
観客のお下劣な好奇心に応えるセンセーショナルな映画!
ところで……<レイプ・復讐もの>は、「エクスプロイテーション映画(Exploitation Film)」の一ジャンルです。
エクスプロイテーション映画というのは、「観客のお下劣な好奇心に応えるセンセーショナルな映画」のこと。
つまりですね、<レイプ・復讐もの>は「レイプ被害者が裁判を通じて社会正義を実現する」なんて類の作品ではありません。
もっと派手派手しくて、お下劣な感じで……そう!レイプシーンはやたら屈辱的に描かれるし、レイプ被害者は時に非人間的な怪物に変身し、そして加害者を無茶苦茶にぶち殺したりします。
<参考>
「レイプ・復讐物語」とは、「ホラー」と「ポルノ」と「アクション」の要素を融合したサブジャンルであり、そこでは女性主人公が、多くの場合は複数の男性により、極度に屈辱的かつ暴力的なレイプを受けた後、復讐に立ち上がり、文字通りの「去勢」を含む極度に残忍な手段を用いて、加害者たちを殺戮してゆく。
※鷲谷花「撮影所時代の「女性アクション映画」」(「戦う女たち――日本映画の女性アクション」収録)より引用
……というわけで!
本記事では、<レイプ・復讐もの>の視点から「女囚701号 さそり」のストーリーを整理します。
【整理】ナミがレイプされ、そして復讐を果たすまでの経緯
まずは、本話の主人公・ナミがレイプされ、そして復讐を果たすまでの経緯を端的にまとめておきましょう。
【Point】屈辱的なレイプシーン!
で!
まずご注目いただきたいのは、【2:レイプ】です。
このシーンには、以下の特徴があります。
・特徴1:ナミは、ヤクザ数人からレイプされる
・特徴2:しかも、愛する杉見に裏切られる(杉見は、ナミがレイプされるのを承知していた。その上、レイプされたナミを見ても一切同情することなく、それどころか「俺の計画通りに事が運んだぞ!」と高笑いする)
・特徴3:ナミのレイプシーンは、独特のカメラワークで撮影されている(レイプされるナミを床下から映す。煽情的な映像と言えるだろう)
つまり<レイプ・復讐もの>のお約束通り、ナミは単にレイプされるのみならず、それに輪をかけて屈辱的な目に遭うのです。
【Point】普通の女の子が<怪物>に変身する時……!
続いて取り上げるのは、【3:変身】です。
レイプされ、さらに杉見に裏切られたと気づいたナミ。
その直後に、「ナミの髪の毛が逆立ち、目と鼻の穴がぐわっと膨らみ、そして憤怒の表情になる」というシーンがあります。映像はストップモーション風だし、照明は赤色と緑色と毒々しいし、かなり目立つシーンです。
そう!これぞ、ナミが<普通の女の子>から<怪物(復讐鬼)>に変身した決定的なシーン!
だからこそ、特異な演出が施されているのでしょう。
【Point】まさかの復讐失敗!
かくして<怪物>と化したナミですが、ところが……嗚呼!彼女の復讐は失敗に終わります。
これが、【4:復讐失敗】です。
<怪物>に変身したのに、なぜ失敗したのか?
作中では明言されていませんが、おそらくはまだ<怪物>になりきれていなかったのでしょう。
【Point】地獄でパワーアップだ!
復讐に失敗したナミは警察に捕まり、刑務所に入ります。
これが【5:地獄へ】。
そして3年ほど刑務所で過ごした後、ナミは脱走、復讐を果たすに至るのですが……この時、ナミは必殺仕事人の如くヤクザを仕留めていきます。その手口はじつに鮮やか。
上述の【4:復讐失敗】の時とは大違いです。
つまりですね、ナミは刑務所内でパワーアップしているんですよ。
バトルマンガのように体を鍛えたり、師匠から必殺技を教わったりしたわけではありません。
しかし看守からは繰り返しリンチされ、他の囚人からはしつこく嫌がらせをされてきました。そして大切な友(由起子)を殺され、その仇(片桐)を討った……。
こうした地獄の日々が、ナミを強くしたのでしょう(これが【6:地獄でパワーアップ】です)。
かくしてナミは、いまや完全なる<怪物>と化しました。
【Point】復讐は激しく!
さぁ、いよいよクライマックスです。
刑務所を脱走したナミはヤクザを殺し、海津も殺し、最後に杉見を狙います(【7:復讐達成】)。
そして……上述の通り、本作は観客のお下劣な好奇心に応える作品です。レイプシーンがやたらと屈辱的に描かれていたのと同様、もちろん復讐シーンだって一筋縄ではいきません。
・特徴1:杉見が最も安全と思われる場所(警視庁)に避難してホッと一息ついたところで、ナミが登場する
・特徴2:ナミが杉見を<去勢>する描写が複数ある(詳しくは、下記の「参考」欄をご覧ください)
・特徴3:ナミはドスを抜き、杉見を1回、2回、3回……そして4回!4回も刺す
……という具合です。
<参考>
エレベーターの場面において、ナミは「去勢する怪物的女性」への完全な変貌を遂げる。黒装束に身を包み、噛みちぎった杉見の舌の血を唇からぬぐうナミには、男の血をすする「ヴァンパイア=吸血鬼」のイメージが露骨に重ねられている。そして、噛みちぎられる舌、手から落とされた拳銃、さらには股間近くへの一撃と、ここで杉見が立て続けに受ける攻撃は、いずれも「去勢」を連想せざるをえない性質を帯びている。
※鷲谷花「撮影所時代の「女性アクション映画」」(「戦う女たち――日本映画の女性アクション」収録)より引用
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以上、本記事では<レイプ・復讐もの>の視点から「女囚701号 さそり」のストーリーを整理しました。
「レイプ・復讐もの」やこれに類する作品を作る時にはぜひ参考にしてみてくださいねー!!
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