宇宙人とロシアンマフィアと僕!!|『刑事ジョン・ブック 目撃者』(3)
テーマ発表!!
第1回、第2回に引き続き、映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」をベースに新しい物語を妄想します。
※「刑事ジョン・ブック 目撃者」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 「刑事ジョン・ブック 目撃者」は、都会に生きるタフな刑事が、俗世を離れて暮らす敬虔な人びとと出会い、交流し、そして別れる物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!
三葉 承知しました。
嘉村 前回ご紹介したのは、「『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ~『京都の旧家』編」、「『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ~『女子高の寮』編」の2案でした。
案③
嘉村 それでは「案③」にまいりましょう!
三葉 はい。「案③」は、「『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ~『宇宙人』編」です。
嘉村 宇宙人!
三葉 詳細をご説明する前に、「刑事ジョン・ブック 目撃者」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 以上を踏まえて……「案③」!「刑事ジョン・ブック 目撃者」と比較すると以下のようになります。
三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は男子高校生です。
嘉村 ふむ。
三葉 ある日の放課後、主人公は道端にうずくまっている少女を見つけました。主人公が声をかける「どうしました?」。少女がうめく「腹が……腹が……」。腹痛だろうか?いや、違う。「腹が減ったのじゃ……」。
嘉村 「じゃ」という語尾が気になりますが……。
三葉 男子高校生の懐はいつだって厳しいものです。しかし、同世代の女の子が空腹だと言う。放っておくわけにはいきません。主人公はなけなしの金をはたき、パンやらお茶やらを買ってやる。少女は餓鬼の如くそれを食らい、あっという間に平らげると、主人公をじっと見つめた。……まだ足りぬようだ。しかし、もう金はない。致し方がない。主人公は、口うるさい母や姉に見つからぬように注意しながら、そっと少女を自室に連れ込んだ。そして「今日は自分の部屋で食事をするよ。明日大切なテストがあるんだ。さぁ、猛勉強するぞ!」などと言いながら夕食を自室に持ち込み、少女に与えた。……とまぁ、こうして2人は出会ったわけです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 少女は食事を終えるとようやく人心地ついたようで、主人公に礼を述べた。そして打ち明けた「じつは私なぁ、宇宙人なのじゃよ」。
嘉村 宇宙人!
三葉 少女曰く、彼女は家族らと共に「10泊11日、いて座観光ツアー」に参加していたのだと言います。
嘉村 宇宙旅行ですか。地球よりもずっと科学が進んだ星みたいですね。
三葉 ええ、そうですね。楽しい旅行だったのですが……嗚呼、ひょんなことから宇宙船が故障してしまった。宇宙をふらふらっと漂い、辺境の星、すなわち我らが地球に不時着。
嘉村 なるほど。
三葉 幸い死傷者は出ず、すぐに母星と連絡がとれた。数日後には迎えが来るという。しかも、宇宙船には非常食がたっぷり積み込んである。「よかったじゃないですか」「うむ。胸を撫で下ろしたわけじゃが……そうなると、むくむくむくっと好奇心が首をもたげてな。せっかくの異星じゃ。宇宙船の中でボーっとしているのも芸がないということで、乗務員の目を盗み、1人散策に出たわけじゃよ」「ははぁ。そして迷子になり、腹を空かせてうずくまっていたと」「まったくお恥ずかしい話じゃ」。
嘉村 おっちょこちょいな宇宙人ですねぇ。
三葉 と、その時です!廊下で「ドスドスドス」と激しい足音が響いた。続いて大声で「特ダネだぁ!」。姉の声です。さらに母の声が続く「ノーベル賞ものよ!」。主人公は頭を抱える「うっ!しまった!やっちまった!」。少女がたしなめる「これこれ。男たるもの、そう取り乱すでない。落ち着くがよい。深呼吸でもして……で、どうしたんじゃ?」「うん……きみの話、盗み聞きされていたんだよ」
嘉村 盗み聞き……?
三葉 「ほぉ。盗み聞きとは穏やかでないな。して、相手は何者じゃ?」「オレの母と姉さ。身内の恥をさらすようだが、これがゲスな女でね」「そう悪く言うでない」「まぁ、聞いてくれ。オレの母は生物学の研究者で、姉は週刊誌の記者だ。研究者と記者というのは、自分の業績やスクープのためなら火の中水の中、どんなことだってやりかねない危険でゲスな人種なんだ。少なくとも、この星ではね」「ほぉ、どこの星でも同じなんじゃな」「きみの故郷でもそうか」。
嘉村 偏見がひどい……。
三葉 「あー、つまりだ。オレの母と姉は……うん。ゲスなんだ。で、ゲスな人間が宇宙人を見つけたらどうすると思う?」「……うっ!まさか」「ああ、その通りだ。数分後には、きみは拉致監禁されるだろう。そして見世物にされるか、はたまた生体解剖されるか……」「えっえっえっ、えらいことじゃ!こんな辺境の星で死ぬなんて冗談ではないぞ!悪夢じゃ!まさに悪夢じゃ!」「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。ほら、深呼吸でもして」「してる場合か!」……ということで2人は窓から外に出ると、自転車にまたがり、2人乗りで逃げ出した。直後、怒鳴り声が聞こえた「コラー!実験材料をどこに連れて行くのよ!」「マスコミを敵に回すつもり!?待ちなさい!」。少女はガタガタと震える。主人公は一所懸命にペダルを踏む。
嘉村 ふむふむ。
三葉 少女の指示にしたがって進むと……嗚呼、宇宙船だ!宇宙船が街外れの山の中に不時着していました。
嘉村 ほぉ。
三葉 そして……帰宅すれば、主人公は母や姉から厳しい取り調べを受けるに違いありません。母は、躊躇いなく自白剤を使うでしょう。姉は拷問器具を持ち出すでしょう。主人公が口を割り、宇宙人の身に危険が及ぶことになる!……というわけで、主人公は、宇宙人が地球を去るその日まで宇宙船に滞在することにしました。
嘉村 あー、なるほど。「刑事ジョン・ブック 目撃者」は、「都会のタフな刑事が、俗世を離れて暮らす敬虔な人びと(アーミッシュ)と出会い、しばらくの間彼らの村で共に過ごすことになる。最初はなかなか上手くいかなかったものの、次第に友情や愛が芽生える。だが、彼らは生きる世界が違いすぎる。いつまでも一緒にはいられない。主人公はやがて都会に戻っていった」という物語ですが……。
三葉 ええ。「案③」では、主人公が宇宙人と出会い、しばらくの間一緒に過ごすことになります。地球人と宇宙人です。当然食い違いもある。時にはイラッとすることだってある。しかし、次第に友情が芽生える。やがて迎えの宇宙船がやってくる。主人公も宇宙人も、「寂しい」「残念だ」「もっと一緒にいたかった」と思う。しかし……彼らは生きる世界が違うのです。いつまでも一緒にいることはできない。どちらもそれはわかっている。だから、宇宙人は「一緒に来ないか?」とは訊きません。主人公も「地球に残る気はないか?」とは問いません。彼らは、おそらくは2度と会えぬだろうということを理解しています。しかし敢えて、「じゃあまたな!」と軽い挨拶を交わしただけで別れたのでした。……で、物語は幕を閉じます。
案④
嘉村 続いて、「案④」にまいりましょう。
三葉 はい。「案④」は、「『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ~『ロシアンマフィア』編」です。
嘉村 今度はロシアンマフィア!
三葉 まずは、「刑事ジョン・ブック 目撃者」との比較表をご覧ください。
三葉 基本的なストーリーは、「刑事ジョン・ブック 目撃者」や「案③」と同様です。
嘉村 ふむ。
三葉 「案④」の主人公は、ごく普通の男性会社員。ある日彼は、「案③」の男子高校生が宇宙人と出会ったように……血まみれのロシア人と遭遇します。
嘉村 宇宙人と遭遇するのもアレですが、血まみれのロシア人と遭遇するのもだいぶアレですよねぇ……。
三葉 しかも、ただのロシア人ではない。黒いスーツに黒いサングラスをかけた巨漢のロシア人。そんな男が血まみれで、ぶっ倒れていた。
嘉村 うーむ……。
三葉 どう見てもただごとではない。主人公はビビる。
嘉村 まぁ、ビビるでしょうよ。
三葉 しかし、主人公は善人です。「関わり合いになりたくない」と思いつつも放置できず、思い気って声をかけた。
嘉村 ほぉ。
三葉 ロシア人は、とある番号に電話をかけてほしいと頼む。主人公は従う。すると間もなく、彼の仲間と思しきロシア人が駆けつけてきました。主人公が「やれやれ。これで一件落着。オレはとっとと帰宅してビールでも飲もう」と人心地ついていると……ロシア人が言った「ご同行を願います」。主人公は仰天する「えっ!?いや、あの、オレは何も……」「あなたは、我々の仲間の命の恩人だ」「はぁ……あのお礼でしたら辞退しますが……」。ロシア人がニヤッと笑う「これは、あなたの安全に関する話です。我々の敵対組織は強大で、獰猛で、そして容赦がない。つまり、疑わしきは殺すタイプの組織なのです。あなたは、我々の仲間を救った時点で敵組織のターゲットリストに載ってしまったんですよ」「えっ……えっ!?」「抗争は大詰めだ。そう遠くない内に決着がつきます。それまでの間、我々と共にいてもらいたい。あなたの安全のために」「あの……決着というのは、つまりあなた方が敵を殲滅するということですか?」「そうですね。我々が敗北すれば、あなたも死ぬことになる。我々が勝利する前提でお話ししています」「……」。とまぁこうして、主人公はしばらくの間、ロシアンマフィアの事務所で暮らすことになりました。
嘉村 なるほど……。
三葉 相手はロシア人で、かつマフィアですからね。平凡な人生を歩んできた主人公とはアレもコレも違う。当初は、互いに困惑することばかり。しかし、次第に距離が縮まっていく。
嘉村 ふむふむ。ウォッカを酌み交わしたりするわけですね。
三葉 そうですね。下っ端マフィアのグチに付き合ってやったりね。あるいは、主人公の影響で和食が流行ったり。
嘉村 ふむ。
三葉 そしてしばらくして、抗争が終わる。幸い、ロシアンマフィアが勝利したようです。すなわち……別れの時がやってきたのです。主人公とマフィアの間には友情が芽生えていましたが、だからと言っていつまでも一緒にいることはできない。彼らは住む世界が違うのです。主人公は、涙を堪えてマフィアの事務所を去る。……で、物語は幕を閉じます。
嘉村 「世界ウルルン滞在記」みたいですね。
三葉 まぁ、似たようなものですよ。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『刑事ジョン・ブック 目撃者』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
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「刑事ジョン・ブック 目撃者」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。
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(担当:三葉)
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