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「引っ越し後、キャラAはなかなか荷ほどきしない。誰かに指摘されても笑って誤魔化すばかり」という描写によって「A=片づけられないガサツなやつ」とミスリードし、後から「じつはAが荷ほどきしないのには理由があった。他のキャラを想ってのことだった」と明かすことで、読者・鑑賞者にハッとしてもらう ~アニメ「スローループ」の場合

ひより「いい加減、荷ほどき済ませたら?」
小春「えへへ~」

小春「んっとね……『ひよりちゃんのパパの部屋、私が使ってもいいのかな?』って思って……」

アニメ「スローループ」(第1話)




◆概要

【「引っ越し後、キャラAはなかなか荷ほどきしない。誰かに指摘されても笑って誤魔化すばかり」という描写によって「A=片づけられないガサツなやつ」とミスリードし、後から「じつはAが荷ほどきしないのには理由があった。他のキャラを想ってのことだった」と明かすことで、読者・鑑賞者にハッとしてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「スローループ」(第1話)

▶1

本作の主要キャラの1人・小春(高1女子)。

彼女は、明るく元気で快活な少女だ。


小春は幼い頃に母と弟を交通事故で喪い、

・Step1:長らく父と2人で暮らしてきた。

・Step2:しかし第1話冒頭、父が再婚することになった。かくして小春には、義理の母と妹ができた。妹の名はひよりと言う。

・Step3:なお、ひよりの方は3年前に父を病気で亡くしている


第1話中盤、

・Step4小春と父がひよりたちの家に引っ越してきて、同居開始。

・Step5:小春にも私室が与えられた。元はひよりの父が使っていた部屋らしい。

・Step6:家族4人で荷物を片づける。

・Step7:だが、数日経っても小春の部屋には段ボールが山積みになっていた。ひよりは呆れる「いい加減、荷ほどき済ませたら?」。しかし小春は「えへへ~」と笑うばかりだ。


その後いろいろあって、第1話終盤。

・Step8:夜、小春がひよりに声をかけた「ひよりちゃん、起きてる?」。彼女はいつになく緊張した感じで、「んっとね……『ひよりちゃんのパパの部屋、私が使ってもいいのかな?』って思って……」

・Step9:そう、じつは小春はずっと思い悩んでいたのだ「私がこの部屋を使っていいのだろうか?」「口には出さないものの、ひよりは『お父さんの思い出の場所なのに……』と嫌がっているのではないか?」。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step7-9である。

小春の部屋がなかなか片づかないのを見て、「ははぁ、小春は片づけが苦手なんだな」「確かに小春は明るく元気で、そしてちょっとガサツそうなキャラだもんなぁ」と感じた鑑賞者は少なくないだろう。


ところが――。

Step8-9を見た時、多くの鑑賞者はハッとしたに違いない

嗚呼、小春はガサツなやつではなかった!

むしろその逆。

彼女はひよりを気遣い、「私がこの部屋を使っていいのだろうか?」「口には出さないものの、ひよりは『お父さんの思い出の場所なのに……』と嫌がっているのではないか?」とずっと思い悩んでいたのだ。だから荷ほどきする気になれなかったのだ。

なんていいやつなんだ!!


つまりは、【「引っ越し後、キャラAはなかなか荷ほどきしない。誰かに指摘されても笑って誤魔化すばかり」という描写によって「A=片づけられないガサツなやつ」とミスリードし、後から「じつはAが荷ほどきしないのには理由があった。他のキャラを想ってのことだった」と明かすことで、読者・鑑賞者にハッとしてもらう】というテクニックである。


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