「1回限りしか使えない必殺技」で強敵を倒すが、直後ラスボスが登場→必殺技なしでラスボスと戦うことになる
◆概要
ヒーローものでは、【戦いを前にヒーローにハンデが課される】という展開を見かけることがある。
【「1回限りしか使えない必殺技」で強敵を倒すが、直後ラスボスが登場→必殺技なしでラスボスと戦うことになる】はその一例。
◆事例研究
◇事例:映画「アイアンマン2」
▶1
本作の主人公は、トニー(男性、40歳頃)。
彼はスーパーヒーロー「アイアンマン」の中の人である。
なお、スーパーヒーローといえば魔法使いや異世界人、人体実験によって超人的なパワーを手に入れた者も少なくないが、しかしトニーはその類ではない。彼は生身の人間だ。アイアンマンの怪力や防御力、飛行能力などはすべて「アーマー(=パワードスーツ)」に依存している。
また本作には、アーマーを着用したもう1人のヒーロー「ウォーマシン」も登場する。
ただし、①アイアンマンは相当に強い。1人きりで十分戦える。さらに②トニーはかなり自分勝手な性格だ。協調性を欠く。ゆえに、トニーにはウォーマシンと連携して戦うつもりはない。
▶2
一方、本作のラスボスはヴァンコ(男性、40歳頃)。
いろいろあってトニーに強い恨みを抱いており、トニーをぶっ殺さんと攻撃を仕掛けてくる。
▶3
さて、本作のラストバトルを見てみよう。
・Step1:まずは、ヴァンコが開発したたくさんの無人ロボットが、アイアンマン&ウォーマシンに襲いかかった。
・Step2:アイアンマンは奮戦する。ウォーマシンも全力を尽くす。しかし……無人ロボットは数が多い。いくら倒してもきりがない。また、この時2人は盆地の窪みのような場所にいた。無人ロボットに地の利があるわけだ。
・Step3:というわけで、アイアンマンは決意した。よし、あれを使おう!彼は必殺技「200ペタワットレーザー」を放った。辺りにいたすべての無人ロボットが一瞬にして真っ二つになる。嗚呼、圧倒的なパワーだ!!
・Step4:かくして勝負は決した。ウォーマシンが呆れる「……うん。次は最初からそれを使うべきだと思うぞ」(Wow. I think you should lead with that next time.)。しかしアイアンマンは「すまんね。でもこの技は一度しか使えないんだ。一度っきり」(Yeah, sorry boss, I can only use it once. It's a one-off.)。なるほど、だからいざという時までとっておいたのだろう。
・Step5:ところがその時だった。仲間から通信が入った「気をつけて!もう一体そちらに向かっているわよ!これまでのとは比べものにならないほど強そうなやつよ!!」。トニーの表情が曇る。
・Step6:間もなく、自作のアーマーをまとったヴァンコが2人の前に現れた。そう、ここからが本当のラストバトルだ!
・Step7:アイアンマン&ウォーマシンとヴァンコの戦いが始まった。だが、アイアンマン&ウォーマシンは大苦戦する。無理もない。何しろ2人は無人ロボットとの戦いで疲れ切っている。さらに、頼みの綱の必殺技「200ペタワットレーザー」はもう使えない!このままではやられてしまうだろう。
・Step8:トニーは覚悟を決めた。よし、最後の手段だ!彼はウォーマシンに声をかけた。そして2人は力を合わせて連携技を繰り出し、見事ヴァンコをぶちのめしたのだった。
▶4
以上をまとめると、
・1:アイアンマンは1回きりしか使えない必殺技「200ペタワットレーザー」を、無人ロボットとの戦いで使用した(Step3)。おそらく彼は「無人ロボットさえ倒せばひとまず戦いは終わるはず」と考えていたのだろう。だからここで伝家の宝刀を抜いた
・2:ところが……そう、まさかの真のラスボスの登場である(Step6)。トニーは愕然としたに違いない。マジかよ!!必殺技を使えないアイアンマンは大苦戦する(Step7) →ラストバトルを前に、「必殺技を使えない」というハンデが課されたわけだ
・3:上述の通り、①アイアンマンは相当に強い。1人きりで十分戦える。さらに②トニーはかなり自分勝手な性格だ。協調性を欠く。ゆえに、トニーにはウォーマシンと連携して戦うつもりはなかった。しかし、今回ばかりはそうも言っていられない。かくしてアイアンマンは初めて仲間と協力し、連携技を繰り出すに至った(Step8) →ハンデが課された結果、ヒーローは普段とは異なるスタイルで戦うことになったわけだ。なお、「『自分勝手で孤独な戦士』だったアイアンマンが仲間と連携して戦うようになった = アイアンマンが人間的に成長しつつある」といえるだろう
つまり、ヒーローにハンデが課されたことで、「これまでにない新しい展開」が描かれた。そしてそれは「ヒーローの人間的成長」を予感させるものだった。
多くの鑑賞者は「おお!これは熱い展開だ!!」と胸躍らせたことだろう。
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