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ナイスネイチャとの対話は、キタサンブラックにとってなぜ有益だったのか?「斜めの関係」から考える ~Learning from: アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 3」
ナイスネイチャ「(落ち込むキタサンブラックに)何か言いたいことあるなら吐き出しちゃったら?ほら、そういうのって距離が近い関係よりも、何でもない相手の方が言えたりもするし。ネイチャさんでよければ聞くよ?」
▶1
本作の主人公は、キタサンブラック。
彼女は若きウマ娘。「憧れの先輩のような一流のアスリートになりたい!」と猛練習を重ねますが――第1-2話で連敗を喫してしまいます。
さらにいくつかの出来事が重なり、キタサンブラックはもうどうしていいかわからない。私はダメだ……憧れの先輩のようにはなれないんだ……と激しく落ち込む。
キタサンブラックが所属する「チームスピカ」の先輩たちやコーチは、キタサンブラックのことを気にかけています。
また、彼女にはサトノダイヤモンドという親友もいる。
しかし、キタサンブラックは彼らに本音を打ち明けない――打ち明けられない。1人で悩み続ける……。
そんな彼女の前に現れたのが、別のチームの先輩・ナイスネイチャでした。
ナイスネイチャは、キタサンブラックに対して自分の過去を赤裸々に語った。「格好いい」とは言い難い過去――泥臭く、そしてよくも悪くも人間味にあふれた過去の話を聞き、やがてキタサンブラックも本音を打ち明けられるようになる。
さらにナイスネイチャとの対話を通じて、キタサンブラックは心を決める――誰かに憧れるのはもう止めよう。私はキタサンブラック。自らのいいところも悪いところも全部受け止めて、私は私らしく走ろう。
こうしてキタサンブラックは立ち直ったのでした。
▶2
さて、本記事で注目したいのは「キタサンブラックの力になったのはナイスネイチャだった」という点です。
上述の通り、2人は直接の先輩後輩でもなければ、指導者と教え子という関係でもありません(「上下関係=縦の関係」ではない)。また、友人や同期というわけでもありません(「横の関係」でもない)。
2人は「別のチームの先輩と後輩」であり、いわゆる「斜めの関係」に該当します。
「斜めの関係」というのは、元々は精神医学や教育学の世界の用語です。
大雑把にご説明すると――「現代の子どもの多くは『縦の関係(=親や教師)』と『横の関係(=友人や同級生)』しか持っていない。しかし、時には『斜めの関係』も重要である」とされています。
・Point1:親子関係は難しい。なぜならば距離が近すぎるから。互いに冷静でいられなくなることがある。また、教師と教え子の関係も難しい。教師には「私が教え導かねばならぬ」という意識があるし、教え子の方だって「このセンコーが!」という反発心がある。ゆえに本音で語り合うのは簡単ではない
・Point2:友人関係も簡単ではない。見栄やプライド、相手に心配をかけたくないという意識――友人同士だからこそ話せないことも少なくありません
・Point3:それに対して、「斜めの関係」は強い。例えば「親戚のオッサン」、「近所のオバサン」、学生なら「友人が所属している部活の先輩」、会社員なら「隣の部署の先輩」などなど。彼らとは適度に距離がある。だからこそ本音を打ち明けやすかったり、相手を「子ども・教え子・友人」ではなく「1人の人間」として扱って冷静に意見できたりする。人生においてはこうした関係も結構重要だよね
……というわけです。
▶3
キタサンブラックとチームスピカの先輩たちは、仲がいい。
また、キタサンブラックとコーチの関係も良好です。
さらに、キタサンブラックは親友サトノダイヤモンドと最高の友情を築いている。
そして仲がいいがゆえに、親しいがゆえに――そう!キタサンブラックは彼らに本音を打ち明けづらいのです。「先輩やコーチ、親友に心配をかけたくない」と考えてしまう。あるいは「せっかく期待してくれているのにがっかりさせたくない」とか、「情けないやつだと思われたくない」とか、そんな考えもあるでしょう。
また、もしもキタサンブラックがナイスネイチャではなく、チームスピカの先輩やコーチ、サトノダイヤモンドに悩みを打ち明けていたらどうなっていたか。有益なアドバイスを得ることはできたのか。私はかなり怪しいと思います。何しろ彼らは距離が近すぎる。本音を打ち明けられるのか、冷静に言葉を交わせるのか、時にはキタサンブラックにとって辛い現実をズバッと指摘できるのか――難しいでしょう。
それに対して、キタサンブラックとナイスネイチャは「別のチームの先輩後輩」。
お互いのことは知っている。口を利いたことだってあるでしょう。しかし、大して親しくはない。
つまりは「斜めの関係」です。
適度に距離がある。
ゆえに、ナイスネイチャは「先輩・指導者・友人」としてではなく、「対等の1人のウマ娘」として自分の体験や想いを打ち明けることができた。キタサンブラックの方も自分の本心を明かすことができた。かくしてキタサンブラックは復活し得た――というわけです。
あなたの創作のお役に立てば幸いです。
それでは佳きクリエイティブ・ライフを!!
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