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「キャラAは着ぐるみを着ている→着ぐるみの尻尾が揺れる→『Aの感情などを象徴する描写』かと思いきや、じつは尻尾がちぎれかけており、本当に揺れていた」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう ~アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」の場合

千枝「(素っ転んだ仁奈に)大丈夫!?」
薫「仁奈ちゃん!」
小春「はわぁ~!」

アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(第8話)


◆概要

【「キャラAは着ぐるみを着ている→着ぐるみの尻尾が揺れる→『Aの感情などを象徴する描写』かと思いきや、じつは尻尾がちぎれかけており、本当に揺れていた」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(第8話)

▶1

本作の主要キャラの1人・仁奈(9歳)。

彼女はアイドルである。某芸能プロダクションの「第3芸能課」に所属している。とはいえ、まだまだ目立った活動実績はない。同じ課に所属する同年代のアイドルたちと共にトレーニングに励んだり、下積み仕事に精を出したりしている。


ある日、事務所にて。

・Step1:同僚アイドルと追いかけっこをして遊ぶ仁奈。

・Step2:やがて、ドシン!仁奈が素っ転んだ。

・Step3:皆が心配する「大丈夫!?」。


しかし、

・Step4:仁奈は「イヒヒッ!」。すぐに笑顔で立ち上がった。

・Step5:なおこの時、仁奈は犬の着ぐるみを着ていた。尻の辺りに尻尾がついている。それが、左右にぶんぶん揺れるのが見える

・Step6:そして間もなく……ポトリ。尻尾が落ちた。転んだ拍子にちぎれてしまったのだ。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step4-6である。

仁奈が笑顔で立ち上がる。そして尻尾が左右に揺れる。まるで本物の犬である。

着ぐるみの尻尾がそんな風に動くことはあり得ないので、このシーンを見た鑑賞者の多くは「これは『リアルな描写』ではないな」「犬の格好をした仁奈が元気いっぱいに立ち上がったことを『象徴する描写』だな」と感じたはずだ。

ところがStep6、尻尾がポトリと落ちる。そう、尻尾は「象徴的な表現」として揺れていたのではない。ちぎれかけていたから揺れたのだ。そして間もなく最後の1本の糸が切れて床に落ちたというわけである。


尻尾が床に落ちた時、ギョッとした鑑賞者は少なくないだろう。何しろ直前まで「象徴的な表現」と思い込んでいたのだ。それが実際にちぎれかけ、揺れていた!

そりゃびっくりするに決まっている。

そして物語に引き込まれる……!


つまり、【「キャラAは着ぐるみを着ている→着ぐるみの尻尾が揺れる→『Aの感情などを象徴する描写』かと思いきや、じつは尻尾がちぎれかけており、本当に揺れていた」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう】というテクニックが使われているわけだ。


なお、Step4-5で尻尾の付け根が画面に映らないのがポイントだ。だから私たち鑑賞者はそれがちぎれかけているとは露ほども思わず、ミスリードされてしまうのである。


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