「世相を切り取るキーワード」を中心に物語を作る！！｜【第十話（1）劣化流水】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

2020年12月27日 18:16

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ！！

分析対象

※【第9話の3「絶望ファイト」】はショートストーリーの詰め合わせであり、三幕構成で分析するのは不適切であると思われる。ゆえに分析対象外とした。よって、前記事【第9話の2「奥の抜け道」】に続き、本記事では【第10話の1「劣化流水」】を取り扱う。

三幕構成

ポイント①

本話のストーリーをざっくり整理すると……

・第1幕：望が言う「現代は、わざと性能を抑えたものが人気の時代……すなわち、デチューンの時代と言えるでしょう！」

・第2幕前半：望らは、デチューナー（デチューン愛好家）の集会場へ → デチューンの例が多数紹介される

・第2幕後半：望が疑問を口にする「欠点をデチューンと言い換えてませんか……？」 → しかし可符香曰く、そうではない。デチューンによって価値が高まるのだそうだ → 小節あびるが登場。デチューナー曰く「胸のサイズをデチューンしている！」 → さらに木津千里も登場

・第3幕：木津千里が叫ぶ「デチューンはよくない！何事も全力を出さないと！」 → 木津千里はクラスメイトの少女たちに迫った「全力で視聴者に媚びなさい！」 → 藤吉晴美らがセクシーポーズを披露する

ポイント②

＜1＞

本話のストーリーを、さらにもう一段階抽象化してみましょう。

すなわち……

・1：世相を切り取るキーワードが登場する（望が「デチューンの時代です」と宣言）

・2：そのキーワードを使って「現実世界の出来事や有名人を皮肉るエピソード」が描かれる（サッカー日本代表が勝てないのは弱いからではない。デチューンパーツを組み込んでいるからだ！ etc.）

・3：そのキーワードに関連する「作中のエピソード」が描かれる（小節あびるは胸のサイズをデチューンしている etc.）

・4：そのキーワードをひっくり返すような出来事が描かれる。そしてそれがオチになって、物語は幕を閉じる（木津千里がデチューンを否定する）

＜2＞

上記の構成の内、特にご注目いただきたいのは以下の3点です。

▶ Point 1：「キーワード」には、キャッチーな名前を付けるべし

「わざと性能を落とすこと」を【デチューン】と呼ぶ！

このセンス！

デチューン……軽妙でポップで、つい口にしたくなる響きがありますよね。

もしもこれが【簡素化】だの【シンプリファイ】だのといったネーミングでは、さっぱり面白くありません。

▶ Point 2：「キーワード」には、パロディを呼び起こしやすい名前を付けるべし

【デチューン】というネーミングは「チューニング = 自動車の改造」を連想させ、「頭文字D」のパロディを呼び起こします。

つまり「パロディを呼び起こしやすい名前」を付けてやれば、ストーリーを膨らましやすくなるのです。

▶ Point3：「現実世界の出来事や有名人を皮肉るエピソード」と「作中のエピソード」のバランスに配慮すべし

もしも「現実世界の出来事や有名人を皮肉るエピソード」ばかりでは、頭でっかちな感じです。エンタテイメントというよりも、時事批評のようになってしまう。

かと言って「作中のエピソード」ばかりでは、「現実を皮肉る／物申す」という本作の特徴が薄れてしまう。

そう、重要なのは両者のバランスです。

以上、「絶望先生」風の物語を作る時にはぜひ参考にしてみてくださいねー！！

・ある日突然、事件に巻き込まれた男！！｜【第一話（1）ほら、男爵の妄言】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・悲劇のヒロインぶりたいお年頃♥｜【第一話（2）当組は問題の多い教室ですからどうかそこはご承知ください】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・その駄洒落を擬人化せよ！！｜【第二話（1）まだ明け初めし前髪の】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・ネガティブとポジティブのかけ合い！！｜【第二話（2）ティファニーで装飾を】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・屁理屈に始まり、言葉遊びで幕を引く！！｜【第二話（3）新しくない人よ、目覚めよ】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・「構成」に感動する！！｜【第三話（1）十七歳ね、自分のシワをつかんで見たくない？】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・彼曰く「いつか、でっけぇことやってやるから！……IT企業とか、な」｜【第三話（2）義務と兵隊】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・「世間に物申す → その逆を実践する」というタイプの物語！！｜【第三話（3）「さらっと言うな！」とメロスはいきり立って反駁した】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

・物語に「テーマ」は必要か？｜【第四話（1）路傍の絵師】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

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・絶望して開き直って、でもまた絶望して……という物語のパターン！！｜【第六話（1）君知りたもうことなかれ】「【俗・】さよなら絶望先生」を三幕構成で分析する

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