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山を下れ!生き延びるために!!|『ゼロ・グラビティ』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「ゼロ・グラビティ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ゼロ・グラビティ」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「ゼロ・グラビティ」は、「生きる気力」を失っていた主人公が急に絶体絶命の状況に置かれ、サバイバルする内に「生きる気力」を取り戻す物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「ゼロ・グラビティ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『ゼロ・グラビティ』 ~『山中のサバイバル』編」です。


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嘉村 山中のサバイバル!

三葉 「ゼロ・グラビティ」と比較すると以下のようになります。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は男子高校生です。そして、彼はいまバスの中にいる。そう……物語は、修学旅行先へ向かうバスの車内から始まります。

嘉村 「修学旅行先へ向かうバスの車中から始まる物語」と聞くと、何やら嫌な予感がしますねぇ……。


三葉 修学旅行といえば、高校生活最大のビッグイベントです。生徒らはワイワイ大盛り上がり。しかしその中で……主人公だけは、1人窓の外を見つめていました。彼はいかにも憂鬱そうです。

嘉村 ほぉ。

三葉 ここで、ネタばらしをしてしまいましょう。じつは、主人公はいじめを受けていました。殴る蹴るの暴力こそないものの、事あるごとに仲間外れにされ、陰口を叩かれている。

嘉村 なるほど。

三葉 いじめを受けるようになったきっかけは、まぁ何でもいいのですが、例えば……彼は高校1年生の春に大病を患いました。幸い無事回復し、ゴールデンウィーク明けから登校するようになったものの、すでにクラスメイトはいくつかのグループに分かれていた。

嘉村 あー……。

三葉 主人公が入る隙はない。彼はクラスに馴染めない。気まずい。姿勢は俯きがちになる。性格は消極的になる。教室で1人で弁当を食べるのはしんどいので、便所飯を始める。それが見つかる。からかわれる。笑いものになる。あることないこと陰口を叩かれる。仲間外れにされる。……とまぁ、そんな具合ですね。

嘉村 ふーむ。

三葉 つまり、「ゼロ・グラビティ」の主人公は、幼い娘を事故で失ったせいで「生きる気力」を失っていましたが……。

嘉村 ええ。

三葉 「案①」の主人公は、日常的ないじめのせいで「生きる気力」を失っているというわけです。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、話を戻しましょう。主人公らを乗せたバスは、人里離れた山道を走っていました。すると……大地震が発生!世界が揺れる。アスファルトは割れる。土砂崩れが起こる。阿鼻叫喚。そして……次の瞬間、バスは谷底に転落していきました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 バスは大破。グシャグシャです。原形をとどめていない。最早、鉄くず。当然、生徒も教師も運転手も絶望的……かと思いきや、主人公は運がよかった。

嘉村 ほぉ。

三葉 谷底に落ちる途中、バスはくるりと一回転。主人公はその遠心力によって窓の外に投げ出された。彼はそのまま谷底に落下したものの、草木がクッションになりほとんど無傷だったのです

嘉村 じつに幸運ですね。

三葉 窓際の席に1人ポツンと座っていたことが幸いしたようです。

嘉村 なるほど。

三葉 彼は、しばらく呆然とする。大地震。じつに激しい揺れだった。世界の終わりがやってきたかと思った。そしてバスが転落し……そうだ!バスだ!他のみんなは無事だろうか?主人公はバスに駆け寄り、そっと中の様子をうかがった。酷いありさまでした。主人公は思った「まるでミキサーだ」。

嘉村 ミキサー……?

三葉 ええ。30名ほどの人間とバスの備品がシェイクされ、グチャグチャになっていたのです。あまりの惨状に、主人公は一周回って冷静になる「地獄絵図ってのは、シュールな眺めなんだなぁ」。しかし次の瞬間、猛烈な吐き気を催した。主人公は、ゲーゲーゲロゲロ嘔吐する。

嘉村 ふむ。

三葉 そして主人公が胃の中のものをすべて吐き終わり、ぐったりしていると……ふいに、背後で声が聞こえた「うひゃあ。こりゃ、当面焼き肉は食べられそうにないわねぇ」。慌てて振り返る。そこにいたのは、クラス委員長でした。

嘉村 クラス委員長!

三葉 彼女は、主人公と同じクラスの女子生徒です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 頭がよくて運動も得意。かなりの美人で、スタイルだってずば抜けている。当然モテモテ……かと思いきや、彼女はクラスの男子から敬遠されていました。何しろ気が強いのです。その上、弁も立つ。彼女の前では不良生徒もタジタジです。口癖は「あんたバカァ?」。

嘉村 ……「委員長」っていうより、アスカみたいですね。


三葉 主人公が呟く「あっ、委員長。無事だったんだ……」。委員長は、ギュッと主人公を睨みつけた「フン。何よ。私が生きているのが不満そうな口ぶりね」。主人公は力なく微笑む「そんなこと言ってないよ」。……そう、実際のところ、主人公は委員長の無事を喜んでいました。というのも、彼は委員長に好意を抱いていたのです。

嘉村 ほぉ。

三葉 ご説明しましょう。委員長は、他のクラスメイトのように主人公をからかったり、仲間外れにしたりはしませんでした。なぜなら……彼女は幼い頃から才色兼備で、頭脳明晰。親や教師にはうんざりするほど賞賛されて育った。叱られた記憶はありません。そんな彼女からすれば、同級生は総じてガキ。青臭いアホの集団にしか見えない。

嘉村 うーむ、まぁ無理ないかもしれませんね。

三葉 委員長は「人目を気にしてトイレに逃げ込み、『便所飯野郎』と陰口を叩かれ、からかわれ、しかし一切反論することなく、ただじっと俯いているだけの主人公」のことを「アホだなぁ」と思っていましたが……しかし彼女にとっては、主人公も他のクラスメイトも同程度のアホガキに過ぎない。

嘉村 ふむふむ。

三葉 だから委員長は、主人公を他のクラスメイトと同様に扱いました。主人公からすれば、それはとても嬉しいことです。つまり主人公にとって委員長は、「ちょっと怖いけれど……っていうか、だいぶ怖いけれど……でも分け隔てなく僕に接してくれるいい人」なのです。

嘉村 なるほど。

三葉 話を戻しましょう。2人は、他に生き残った者がいないか探して、辺りをくまなく歩き回りました。しかし……ダメだ!生存者は彼ら2人だけでした。

嘉村 ふむ。

三葉 かくして、主人公と委員長によるサバイバルが始まる……のですが!当初、主人公は救助がやってくるのをじっと待つつもりでした。「遭難した時にはむやみに動き回らず、その場で救助を待つべきだって聞いたことがあるよ」。しかし、委員長は大げさにため息をつくと……言った「あんたバカァ?」。

嘉村 いただきました、名セリフ!

三葉 「平和ボケしたことを言ってんじゃないわよ!大地震の直後なのよ。私たち以外にも、助けを求めている人があちこちにいるに決まっているわ。救助隊だって被害を受けているかもしれないし。『救助を待つ』だなんて、あんた、お気楽すぎない?」。

嘉村 確かに。

三葉 「まったく!こんな時くらい、自分で何とかしようって気概はないのかしら!」……ということで、2人は自力で下山すべく歩き始めた。

嘉村 ふむふむ。

三葉 途中、2人は様々なトラブルにぶつかります。落石のせいで道が塞がれていたり。そのため、獣道を進まざるを得なくなったり。そして迷ったり。さらにクマが襲いかかったり。しかし、委員長は冷静です。彼女は素早く状況を分析し、見事な判断を下す。そして、トラブルを乗り越えていく。

嘉村 おー!カッコいいですね。

三葉 一方主人公は……委員長の指示に従い、後をついていくだけ。しかも時にパニックを起こして委員長に呆れられ、「あんた男の子でしょ!しっかりしなさいよね」と激励されたりする始末です。

嘉村 ふーむ。どうもこの主人公は頼りないですねぇ。

三葉 まぁ、彼は「生きる気力」を失っていますからね。「覇気」というか「元気」というか、そういうものが欠落しているんですよ。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁ、委員長主導でサバイバルが続きますが……やがて、大ピンチが訪れます。

嘉村 ほぉ。

三葉 すなわち……映画やマンガではお馴染みの「クリフハンガー」状態です。

嘉村 「クリフハンガー」と言うと……?

三葉 ええ。2人が切り立った道を歩いていた時のことです。道の両脇は急勾配の斜面。足を滑らせたら命はないでしょう。と、ふいに落石!道が崩れる。嗚呼、一巻の終わりだ!2人は谷底に落ちて死んでしまうのだ!……と思いきや、主人公のバッグが岩のでっぱりに引っかかった!主人公は、一命をとりとめる。一方の委員長は、主人公の足にしがみつき、こちらも何とか生きながらえた。

嘉村 おー!

三葉 しかし、バッグは2人の体重には耐えられそうにない。果たして彼らの運命はいかに!?……っていうヤツですよ。

嘉村 なるほど。崖に宙吊りになるシーンですね。確かによく見かけます。

三葉 さて大ピンチではありますが、委員長はここでも冷静です。彼女は素早く決断を下した。そして、いつもの調子で言いました「どうやら、あんたとはここでお別れのようね」。主人公は、その言葉の意味を一瞬で悟った「ちょっ、ちょっと待って!」「『待て』って言ったって」。委員長がくすりと笑う「そんな時間はないでしょ。急がなきゃ。さっ、私はこの手を離すわ」。

三葉 あー……。

嘉村 主人公は取り乱す「ダメだ!そんなのダメだよ!」「まったく……あんたバカァ?さもなければ、2人そろってお陀仏よ」「でっ、でも……」「でももヘチマもないの!いいわね?あんたは、ちゃんと生還するのよ」「……」「そして、私が最期までいかに立派だったか、私の家族に伝えて頂戴。その……」。委員長は一瞬口ごもる「私が死んだと知れば、きっと母は泣くわ。私と違って弱い人なのよ。だからせめて、『あんたの娘は最後まで立派だった』って伝えてあげてほしいの。いいわね。約束よ!」「……」「返事は!」「はっ、はい!」「じゃあ、健闘を祈るわ!」。そして、委員長は両手を離した。彼女は谷底に落ちていきました……悲鳴1つ上げることなく。

嘉村 これは悲しいですねぇ。

三葉 かくして、ここから先は主人公の1人旅になります。彼は、引き続き多くのトラブルに直面する。そして時には絶望し、死を覚悟することもありますが……絶体絶命の危機に置かれたことで、彼の中の「本能」が目を覚ました!彼は思う「僕は絶対に生き抜くんだ!」。まさにこの時、彼は「生きる気力」を取り戻したのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして生まれ変わった主人公は、多くのトラブルを乗り越えて……やがてふもとの街にたどり着いた。こうして彼は生還を果たしたのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 ところで、「ゼロ・グラビティ」には「生」「死」「誕生」「再生」などを象徴するシーンが多数ありますが……。

嘉村 ええ。

三葉 「案①」にも、ぜひ盛り込みたいですよね。例えば、山中を彷徨う主人公が洞窟を発見する。彼はそこで一休みするのですが……その時、膝を胸に引き寄せ、背中を丸めるポーズを取った。

嘉村 あー、「ゼロ・グラビティ」にも登場する「子宮の中の胎児のポーズ」ですね。

三葉 そうですね。まさに、主人公の「生まれ変わり」を象徴するシーンと言えるでしょう。

嘉村 ふむふむ。

三葉 あるいは、ラストシーン。主人公がついに下山を果たした!彼は喜びに浸る。ところが……嗚呼。大地震のせいで、街は壊滅状態だ!瓦礫の山だ!それは、まさに「死」を想起させる光景です。

嘉村 ふむ。

三葉 ようやく「山 = 死を象徴する場所」を抜けて、「街」にたどり着いたと思いきや、そこもまた「廃墟 = 死を象徴する場所」だったとは……主人公は愕然とする。喜びなんて吹っ飛んでしまう。

嘉村 なるほど。

三葉 ところが目を凝らせば……あれは!あの学校の校庭にあるものは!

嘉村 ふむ。

三葉 それは防災テントでした。いくつものテントが並び、人びとが忙しく動き回っている。ある人は炊き出しを行い、ある人はケガ人を手当てしている。子どもたちは、さらに幼い子どもをあやしている。「廃墟 = 死を象徴する場所」の片隅で、いままさに復興に向けて人びとが立ち上がり始めている!そんな「再生」を象徴するシーンで、物語は幕を閉じる……なんて具合ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『ゼロ・グラビティ』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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