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レース前は「A、B、Cの三つ巴の戦いになる」と予告されていたのに、いざレースが始まるとCがちっとも登場しないという展開によって、「Cはどこにいった!?」「Cが何かを企んでいるのでは!?」というドキドキ感を生み出す ~アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」の場合

テイエムオペラオー「(レース前に)ハッハッハッハ!やあやあ、トップロードさん、アヤベさん。ようこそ、世紀末覇王伝説第一の章の舞台へ!」「クラシック三冠の冠はこのボク、テイエムオペラオーにこそ相応しい!そう思わないかい?」

アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」(第1話)


◆概要

【レース前は「A、B、Cの三つ巴の戦いになる」と予告されていたのに、いざレースが始まるとCがちっとも登場しないという展開によって、「Cはどこにいった!?」「Cが何かを企んでいるのでは!?」というドキドキ感を生み出す】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」(第1話)

▶1

本作の主人公は、ナリタトップロード。

ウマ娘育成校「トレセン学園」に在籍する若きウマ娘だ。誰からも愛される人気者で、そして努力家である。


第1話、

・Step1:ナリタトップロードは重要なレース「皐月賞」に向けてトレーニングを積んでいる。

・Step2:そんなナリタトップロードのライバルは、アドマイヤベガだ。皐月賞では2人の熾烈な争いが繰り広げられるだろうと予想されている。

・Step3:とはいえ、他のウマ娘たちも諦めたわけではない。特にテイエムオペラオーはケガに苦しみつつも、皐月賞に向けて猛特訓を積んできた。強力な伏兵になりそうだ。

・Step4:いよいよ迎えた皐月賞当日。レース直前にナリタトップロード、アドマイヤベガ、テイエムオペラオーの3人が顔を合わせるシーンがある。3人は互いの実力を認めつつも、しかし皐月賞の栄冠を譲る気はない。「絶対に負けない」と心に誓う。


そしてレース開始、

・Step5:ウマ娘たちが一斉に走り出した。

・Step6ナリタトップロードが走る!アドマイヤベガが仕掛ける!ナリタトップロードもスピードアップ!2人は他のウマ娘たちをぐんぐん追い抜いていく。

・Step7:だがやがて、アドマイヤベガは失速してしまう。

・Step8:一方、ナリタトップロードは皆の応援を糧にさらに加速していく。さぁゴールが近づいてきた!勝利は目前だ!皆が叫ぶ「いけー!」。ナリタトップロードも心の中で叫ぶ「いける!このまま私が!!」。


▶2

ご注目いただきたいのはStep6-8。レースが始まって以降、テイエムオペラオーの姿がほとんどまったく描かれなくなるという点だ。


ここまでご説明してきた通り、レースが始まるまではナリタトップロード、アドマイヤベガ、テイエムオペラオーの3人がメインキャラクターとして描かれていた。3人ともに実力者であり、勝利への想いも強い。

多くの鑑賞者は「なるほど。皐月賞は三つ巴の戦いになるわけだな」と無意識の内に予想していただろう


ところがいざレースが始まると、テイエムオペラオーがまったく登場しなくなる……。

「あれ?テイエムオペラオーはどこにいった?」と疑問を抱いた鑑賞者は少なくないだろう。また、「テイエムオペラオーの見せ場が1つもないままレースが終わるとは思えないぞ」「どこかに潜んでいるのか?」「虎視眈々とチャンスを待っているのか?」「いつ仕掛けてくるんだ!?」とドキドキした人もいるだろう。さらには、「しかしゴールはもう目前だし……」「まさか、ゴール直前の大逆転を狙っている!?」「ううっ、ナリタトップロードに勝たせてやりたいのに……」とハラハラした人もいるだろう。

つまり、「敢えてテイエムオペラオーの姿を描かないことで鑑賞者の心を揺さぶり、物語に引き込む」というテクニックが使われているわけだ。


なおStep8以降の展開だが、私たち鑑賞者の予感は的中する。ゴール直前、テイエムオペラオーがナリタトップロードに襲いかかるのだ。


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