おかしな「励まし・激励・なぐさめ」 ~ドラマ「Sick Note ~診断書で人生復活?!~」(シーズン1)の場合
◆概要
【おかしな「励まし・激励・なぐさめ」】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「Sick Note ~診断書で人生復活?!~」(シーズン1の第2話)
▶1
本作の主要キャラの1人・ケニー(60代の男性)。
彼は、とある保険会社のCEOである。
CEOになるくらいだからビジネスパーソンとしては優秀なのだろう。しかし……人間的には大いに難がある。
すなわち、大変に高圧的!他人のことなんてこれっぽっちも気にしない!パワハラもセクハラも日常茶飯事!そして「文句があるならとっとと辞めちまえ!」「皆、俺様に従え!」というありさまである。
▶2
さて、ケニーCEOの会社にダニエルという従業員がいる。30歳頃の冴えない男だ。
ある日、このダニエルが咽喉ガンの告知を受けた。彼は激しいショックを受ける。とてもじゃないが仕事なんて手につかない!
そんな中……
・Step1:ケニーCEOが、ダニエルを個室に呼び出した。
・Step2:個室にて、2人きりになったケニーCEOとダニエル。「一体何の用だろうか?」とダニエルが訝しんでいると……ふいにケニーCEOがズボンのチャックを開け、ペニスを取り出した。ダニエルは動揺する「えっ?えっ、えっ、えっ、ちょっと!」。ダニエルは慌てて目を背けた。
・Step3:するとケニーCEOは言った「おい、見ろ!しっかり見るんだ!」。
・Step4:ダニエルは混乱する。まさか性交を強要されるのか!?……いや、どうやら違うようだ。ケニーCEOは再び言った「しっかり見ろって!」。
・Step5:ダニエルは、おそるおそるケニーCEOのペニスに視線を向けた。すると、あっ、睾丸が1つしかない!ダニエルは訊いた「精巣ガンだったんですね?」。
・Step6:ケニーCEOが頷く「そうだ」。彼は続けて言った「だがな、俺がガンだったことも、精巣を摘出したことも、誰も知らない。俺はたった1人で乗り越えたんだ!女々しく泣くのは嫌いでね!」。
・Step7:ダニエルは弱々しく、「あの。お話はわかったのでもうしまってください……」。
・Step8:しかしケニーCEOは「ダメだ!俺のペニスから目を離すな!」。彼は腰を振り、ペニスを揺らして見せた。ダニエルの目に涙が浮かぶ。ケニーCEOは言った「お前もメソメソするのは止せ!」。
・Step9:ケニーCEOはようやくペニスをしまうと、「10分やる。さっさと仕事に戻るんだ」。
▶3
はて、このシーン。
ケニーCEOは一体何をしたかったのだろうか?彼はなぜダニエルを呼び出し、自らのペニスを見せ、そして自分がガンの経験者だと明かしたのだろうか?
ずばり、ケニーCEOはダニエルを激励したかったのだろう。
「俺はガンを克服した!お前もメソメソしている暇があったら仕事に励み、そしてガンを克服しろ!」というわけだ。
※補足:ケニーCEOはダニエルのためを想って励ましているのではない。冒頭申し上げた通り、彼はそんな心優しい男ではない。「ダニエルが仕事をしない → 自分と会社にとってマイナス → だから鼓舞している」というわけだ。しかしまぁ、それでも「励まし」には変わりない。
▶4
まったく、とんでもない激励があったものである!
「ペニスをぶらぶら揺すって見せて、そして『メソメソするのは止せ!』って……どれだけ粗野で暴力的な激励なんだよ!(笑)」「超体育会系の激励だなぁ(笑)」「ヤクザやマフィアだって、がん患者にはもっと優しく接するんじゃないかな?(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。