おかしな「誰かと一緒にいて気まずい時の言動」 ~アニメ「げんしけん」の場合 #1
◆概要
【おかしな「誰かと一緒にいて気まずい時の言動」】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「げんしけん」(第9話)
▶1
本作の主要キャラの1人・斑目(男子大学生)。
彼は、
・特徴1:とある大学のサークル「現代視覚文化研究会(げんしけん)」の会長である。「げんしけん」はオタクの巣窟であり、もちろん斑目自身もアニメやゲームを愛するバリバリのオタクだ。
・特徴2:気心の知れた相手以外とのコミュニケーションが不得手である。特に女性とのコミュニケーションには強烈な苦手意識を持っている。
▶2
ある日のこと。
斑目がいつものように部室のドアを開くと、中にいたのは春日部1人。彼女はマンガを読んでいた。
斑目は思わずビクッ、体を震わせた。
というのも春日部は、
・特徴1:美人でオシャレ、そして気の強い女子大生(斑目の1つ後輩)だ。オタクとは無縁の存在であり、というかむしろオタクを嫌っている。まぁ要するに、斑目が最も不得手とするタイプの女性なのだ。
・特徴2:オタクではないもののとある事情からちょくちょく部室に顔を出しており、斑目とは顔見知りである。だが……じつは斑目と春日部が2人きりになるのはこれが初めてのことだった。
春日部は、斑目の存在を無視してマンガを読み続ける。
一方の斑目。彼は気まずい。超気まずい。静寂が息苦しい。うっ。どうしよう。何か話しかけるべきか?でも何を?気まずいぞ。あまりにも気まずい!
・Step1:斑目はアレコレ打開策を考える。しかしまぁ、ここは奇策に走っても仕方があるまい。彼は普通に話しかけることにした。かくして言った「そのマンガ、オモロイっしょ?」。
・Step2:すると春日部は……無視!斑目の言葉を完全に無視してマンガを読み続ける。
・Step3:えっ、無視?まさかの無視!?斑目はひっくり返りそうになる。いくら何でも無視されるとは思っていなかったのだ。彼は顔を真っ赤にして心の中で叫んだ「むむむむむ、無視ですよ~!」。
・Step4:しかし、すぐに考えを改める「いやいや。いくら春日部さんでもそれはないだろ!」。斑目は、春日部が読んでいるマンガに視線を向けた。そして思った「あー!9巻ね!確かに特に面白い辺りだねぇ、そこは!」「夢中なんだねぇ……」。さらに斑目は心の中で呟いた「そのマンガのファンとしては、まっ、ある意味嬉しいかぁ」。
▶3
気まずさを打開すべく思い切って声をかけたら……まさかの無視!!斑目はショックを受ける。そう、コミュニケーションが苦手な人の常として、彼はガラスのハートの持ち主なのだ。
そして。
無視された後(上述のStep4)、斑目は必死に春日部を擁護し始めるが、これはまぁ現実逃避の一種と考えていいだろう。
つまり、「女子(春日部)に完全に無視された」という受け入れがたい現実を前にして、【春日部はいま特に面白いところを読んでいる → したがってマンガに夢中なのだろう → つまり、俺は無視されたのではない。俺の言葉は春日部に届かなかっただけなのだ → それほどまでに夢中になるとは、そのマンガのファンとしては喜ぶべきことだな。ワッハッハッハ!】と認識を歪めて(=自分に嘘をついて)乗り切ろうとしているわけだ。
「斑目があまりにもかわいそうだ……(笑)」と心を痛めつつも思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないと思う。
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