「怪獣登場→皆が逃げる→見ず知らずの子どもが転倒したのに気づいたキャラAは、自らの危険を顧みずに助けに向かった」というシーンを描く ~アニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」の場合
◆概要
【「怪獣登場→皆が逃げる→見ず知らずの子どもが転倒したのに気づいたキャラAは、自らの危険を顧みずに助けに向かった」というシーンを描く】は「読者・鑑賞者に好かれるキャラ、共感されるキャラ、応援されるキャラ」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」(第1話)
▶1
本作の主人公は、ユン(若い男性)。
彼は一見すると気難しい変人であり、他人のことには興味がないように見える。しかし、実際には熱いハートの持ち主である。
第1話終盤、
・Step1:地元のお祭りの準備をしていた時のことだ。
・Step2:ふいに何かが飛んできた。当初それは鳥かドローンかと思われたが……違う!空飛ぶ怪獣だ!
・Step3:全長5mはあろうかという巨大な怪獣が羽ばたき、咆哮し、そしてビルの屋上に降り立った。まるで翼竜、プテラノドンである。
その場に居合わせた人びとは度肝を抜かれた。なっ、何だ?一体あれは何なんだ!?
・Step4:無論、ユンも仰天。己の目を疑う。
・Step5:間もなく、人びとは悲鳴を上げて逃げ出した。
そんな中、
・Step6:小学1年生くらいの幼い少年がつまずき、転倒してしまった。
・Step7:だが、周囲の人びとは自分が逃げるだけで精いっぱい。おそらくは、少年が倒れていることにすら気づいていない。
・Step8:と、次の瞬間だった。ユンが駆け出した。彼は「おい、ユン!」という仲間の声を無視して少年に駆け寄り、そして抱き起したのだった。
▶2
「子ども好きに悪い人はいない」と俗に言う。
実際には「子ども好きの悪党」がいれば「子ども嫌いの善人」だっているわけだが、しかしどうやら私たちは「子ども好き=善人」という印象を抱く傾向にあるようだ。
例えば、独裁国家のクソのごとき元首がじつは子ども好きだと判明すると、「おや。あんなに子どもをかわいがっているよ。きっとあのオッサンも根は善人なんだよ」なんて好意的に解釈してしまったりする。それほど「子ども好き=善人」という固定観念は強いのだ。
というわけで改めて上記シーンを振り返ってみると――怪獣の出現という非常時にも関わらず、見ず知らずの少年が倒れていることに気づける「広い視野」!そして自らの危険を顧みずに飛び出していける「勇気・優しさ」!
これである。
「嗚呼、なんていいやつなんだ!」とユンに対して一気に好意を抱いた鑑賞者は少なくないだろう。
なお、この少年はこのシーンにしか登場しない。つまり、(ちょっと意地悪な言い方になるが)ユンというキャラの善良さをアピールするための脇役というわけである。