「※ここからはノーカットでお送りします」といった注釈を挿入することで、「この先、これまでとは比べものにならないヤバいことが起こりますよ!」「一瞬も気を抜かないでくださいね!」というメッセージを暗に発し、読者・鑑賞者にドキドキしてもらう ~映画「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-04【真相!トイレの花子さん】」の場合
◆概要
【「※ここからはノーカットでお送りします」といった注釈を挿入することで、「この先、これまでとは比べものにならないヤバいことが起こりますよ!」「一瞬も気を抜かないでくださいね!」というメッセージを暗に発し、読者・鑑賞者にドキドキしてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-04【真相!トイレの花子さん】」
▶1
本作の主人公は、工藤(中年男性)。
彼は、とある映像制作会社のディレクターである。
「心霊現象が映り込んだ映像が投稿者から送られてくる→工藤は部下を率いて調査に赴く→その一部始終をDVDにまとめて発売する」というのが工藤の仕事だ。
ある時、
・Step1:工藤のもとに1本の映像が送られてきた。
・Step2:投稿者曰く「肝試しのノリで廃校を探検していたら、『トイレの花子さん』らしき何かが本当に現れた」とのこと。なるほど、映像を見ると訳のわからぬ何かが映っている。
・Step3:かくして工藤は、アシスタント、カメラ係、そして今回特別に協力を依頼した霊能者とともに現地入り。投稿者と合流すると早速廃校に向かった。
廃校の校舎に入った一同。
・Step4:彼らは「トイレの花子さん」が現れた3階に向かうが――途中、早速怪奇現象が始まった。不気味な足音!どこからともなくふいに出現した椅子!
・Step5:霊能者の声がこわばる「もうすでに向こう側の世界とつながっています!」「時間も空間もねじ曲がっています!」「あいつらが来る!」。そして走り出した「急いで!」。
・Step6:工藤たちは訳がわからない。だが、とにかくヤバいらしい。ヤバい何かが始まっているらしい。彼らは慌てて霊能者の後に続く。
・Step7:とその時だった。画面にテロップが表示された。曰く「※ここからはノーカットでお送りします」。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step7のテロップである。
曰く「※ここからはノーカットでお送りします」。
これを見た瞬間、多くの鑑賞者はドキッとしただろう。
何しろ、
・ポイント1:すでに怪奇現象は始まっているというのにわざわざこのタイミングでこのテロップである。「ここからが本番ですよ!」「この先、これまでとは比べものにならないヤバいことが起こりますよ!」という意味に違いない。
・ポイント2:「ノーカットで」という言葉遣いも気になる。何と言うか――そう、緊迫感にあふれている。「一瞬も気を抜かないでくださいね!」「ここからはノンストップでいきますよ!」というニュアンスを感じるではないか。
・ポイント3:なお、この種のテロップが表示されるのはシリーズ全体を通して初めてのことである。というわけで、「過去作以上の恐怖が待っていますよ!」という恐ろしさも伝わってくる。
つまり、【「※ここからはノーカットでお送りします」といった注釈を挿入することで、「この先、これまでとは比べものにならないヤバいことが起こりますよ!」「一瞬も気を抜かないでくださいね!」というメッセージを暗に発し、読者・鑑賞者にドキドキしてもらう】というテクニックである。