やがてヒーローになる者は、「頭が柔らかい・発想が柔軟」 ~映画「メン・イン・ブラック」の場合
◆概要
【やがてヒーローになる者は、「頭が柔らかい・発想が柔軟」】は「ヒーローものの設定・展開」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「メン・イン・ブラック」
▶1
本作の主人公は、エドワーズ(男性、30歳頃)。
彼は、地球外生命体を管理・監督する秘密組織「MIB」のエージェントであり、本作では世界を救う大活躍を見せるのだが……しかし、元からMIBの一員だったわけではない。
物語冒頭、エドワーズはニューヨーク市警の刑事だった。
ところがある日いろいろあって、
・Step1:MIBからスカウトされたエドワーズ。詳しいことはよくわからぬものの、とりあえず採用試験を受けてみることにした。
・Step2:試験会場には、エドワーズ以外に6人の男がいた。彼らは海兵隊や空軍に所属するエリート軍人らしく、全員がびしっと制服を着こなしている。一方、エドワーズだけは私服だ。しかもジーンズに赤いジャンパー、相当にラフな格好である。
・Step3:受験生7人はおしゃれな椅子(ボールチェア)に座る。まずは筆記テストである。彼らには鉛筆とテスト用紙が配られた。
・Step4:受験生たちは真剣な表情で問題を解く。ところが……彼らには机が与えられていない。したがって文字を書きづらくて仕方がない。用紙に腕や足をあてがってどうにか文字を書こうとするものの、びりっ!ばりっ!用紙が破れてしまう。皆が四苦八苦する。
・Step5:そんな中、エドワーズは間もなく気がついた。おっ、部屋の中央にテーブルがあるじゃないか!彼は無断で立ち上がると、テーブルを自分の席までズルズルと引きずっていった。
・Step6:そのあまりにも自由な行動に、他の受験生は唖然。目を見開いてエドワーズを見つめた。するとエドワーズは笑顔になって「一緒に使うかい?」。
・Step7:一方、試験官(MIBのエージェント)は「ほぉ。あいつ、なかなかやるじゃないか」と興味深そうな顔をしている。
▶2
さて、ご注目いただきたいのはStep5-7。ご覧の通り、これは「エドワーズの頭の柔らかさ」を強調するシーンである。
つまり、物語序盤に「やがてヒーローになる者の頭の柔らかさ」を強調するシーンが配置されているわけだが、はて、なぜわざわざそんなシーンが用意されているかというと……
・メリット1:私たちは、頭が柔らかくて柔軟な発想をするキャラが大好きだ。予想外の方向からズバッと問題を解決する姿はじつに格好いい。 →鑑賞者がエドワーズに対して好意を抱くきっかけになる
・メリット2:「他の誰よりも頭が柔らかい」ということは「他の人とは考え方が違う」ということである。したがって多くの鑑賞者は、「彼は特別だ!」「彼こそがスーパーヒーローに相応しい!」と感じたことだろう。 →「エドワーズがMIBの一員に選ばれ、やがてヒーローになる」というストーリー展開を、鑑賞者がスムースに受け入れられるようになる
・メリット3:「これほど頭が柔らかい彼のことだ。これからどんな活躍を見せてくれるのか、どんな騒動を巻き起こすのか、じつに楽しみだ!」とワクワクした鑑賞者は少なくないだろう。 →鑑賞者が物語に没入するきっかけになる
そう、「やがてヒーローになる者の頭の柔らかさ」を強調するシーンには、これだけのメリットがあるのだ。