あるものをうっかり落としかける→「落としてなるものか!」と死に物狂いになる ~アニメ「男子高校生の日常」の場合
◆概要
【あるものをうっかり落としかける→「落としてなるものか!」と死に物狂いになる】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「男子高校生の日常」(第12話)
▶1
本作の主要キャラの1人・ミツオ(男子高校生)。
彼は心優しい善人だが……しかし、本作に登場する他のキャラ同様にバカである。
ある日の放課後のこと。
・Step1:ミツオは友人たちと共に道を歩いていた。なお、ミツオだけはフランクフルトを食べている。
・Step2:ふいにミツオが手を滑らせた。嗚呼、このままではフランクフルトが地面に落ちてしまう!
・Step3:隣を歩いていたヨシタケが素早く反応した。彼はフランクフルトをキャッチしようと手を伸ばす……が、不運にもフランクフルトの棒の先端が手のひらに刺さった。ヨシタケは悲鳴をあげる「あー!!」。
・Step4:再び地面に向かって落下を始めたフランクフルト。次いで反応したのはヒデノリである。彼はフランクフルトをキャッチしようとして手を伸ばし……フランクフルトの棒の先端が手のひらに刺さった。ヒデノリは悲鳴をあげる「あー!!」。
・Step5:その後フランクフルトは、「地面に落下する寸前にモトハルがどうにか弾き飛ばした → ちょうどそこにやってきたりんごちゃん(近隣の女子高に通う女子高生)の顔面に激突! → 跳ね返り、宙を舞う → 今度は、傍にいた見ず知らずの男子高校生の首筋にぶつかった → 男子高校生は仰天し、反射的に投げ飛ばした → 猛スピードで宙を飛び……棒の先端がタダクニの腹に命中!」という道筋を経て、ついに地面に落ちてしまった。
・Step6:ミツオは地面に落ちたフランクフルトを見つめて「あーあ」。しかし彼はそれを拾い上げると「まっ、いいか」。むしゃむしゃと食べ始めた。一同愕然とする「体張ったのに意味なかった……」。
▶2
以上、【フランクフルトをうっかり落としかける→「落としてなるものか!」と死に物狂いになる】というコメディシーンをご紹介した。
最高に面白いこのシーンだが……はて。なぜこれほどまでに面白いのか?特に重要と思われるポイントを列挙してみよう。
・【1】繰り返しギャグ:「フランクフルトの棒の先端がヨシタケの手のひらに刺さる → 直後、ヒデノリの手のひらにも刺さる」という展開がいい(上述のStep3と4)。いわゆる「天丼」というやつである。
・【2】男子高校生らしさ:ヨシタケ、ヒデノリ、モトハルが、フランクフルトを救おうとして素早く反応するのがいい(Step3-5)。「やけに反射神経がいい」「些細なことにも(些細なことにこそ)全力を尽くす」といった辺りがいかにも男子高校生という感じで笑える。
・【3】意外性:フランクフルトがりんごちゃんの顔面に激突するのがいい(Step5)。りんごちゃんはこれまでにもちょくちょく登場していたサブキャラなのだが、「えっ。ここで登場するの(笑)」という意外性がある。
・【4】キャラの使い捨て:本エピソードでは、いい意味でキャラが使い捨てられている。例えば、フランクフルトが顔面にぶつかったりんごちゃん(Step5)。彼女はおそろしく乱暴者なので、おそらくこの後ミツオたちはボコボコにされたのではないかと思うのだが、しかしそれは一切描かれない。同様に、フランクフルトの棒が腹に刺さったタダクニ(Step5)。彼のその後も描かれない。誰かが心配したり、フォローしたりしている様子も描かれない。……この乱暴な感じが面白いのだ。
・【5】すべてを台無しにするオチ:地面に落ちたフランクフルトを、「まっ、いいか」と言ってミツオが食べてしまうのがいい(Step6)。皆の奮闘や犠牲を台無しにする最高のオチだ。