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「叔母の家に居候することになったキャラA→引っ越し早々、Aは叔母の言動の端々に違和感を覚える」という展開によって、「言われてみれば、確かに叔母の言動はおかしい」「何か秘密を抱えているのか?」「いや、それとも単なる天然ボケキャラなのか?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する ~小説「電波女と青春男」の場合

「こっちこそよろしく。ほんとごめんねよろしく」
早口で返事をされた。……ん?何だか謝罪みたいなものも混じっていたような……。

小説「電波女と青春男」(第1巻)


◆概要

【「叔母の家に居候することになったキャラA→引っ越し早々、Aは叔母の言動の端々に違和感を覚える」という展開によって、「言われてみれば、確かに叔母の言動はおかしい」「何か秘密を抱えているのか?」「いや、それとも単なる天然ボケキャラなのか?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:小説「電波女と青春男」(第1巻)

▶1

本作の主人公は、真(「まこと」と読む)。

彼は高2男子である。


物語冒頭、

・Step1:親の仕事の都合で、都会に住む叔母の家に居候することになった真。彼は大喜びだ。何しろ憧れの都会暮らしである!加えて、叔母は1人暮らしで、かつ普段は仕事で忙しいと聞く。つまり、大人に干渉されぬ自由な生活が待っているわけだ!


念願の引っ越し当日。

・Step2:真は電車に揺られ、都会に向かった。

・Step3:そして、駅まで迎えに来てくれた叔母と合流。2人はタクシーに乗って、叔母の家へ。

・Step4:叔母は陽気な人だった。天然ボケっぽいところや、無理に若者ぶろうとするところが気になると言えば気になるものの、しかしまぁ悪い人ではないようだ。


と思いきや……真は、叔母の言動の端々に何やら違和感を覚える

・Step5:例えばタクシーに乗った時のことだ。叔母は助手席に座った。真は1人で後部座席に座る。

何で叔母さんは二人なのに助手席に乗り込んだんだろう。


・Step6:また、叔母の家の前に到着した時のこと。真は「これからよろしくお願いします」と改めて頭を下げた。すると、

「こっちこそよろしく。ほんとごめんねよろしく」
早口で返事をされた。……ん?何だか謝罪みたいなものも混じっていたような……。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step5-6である。

叔母の言動の端々に違和感を覚える真。彼は、「何で叔母さんは二人なのに助手席に乗り込んだんだろう」「何だか謝罪みたいなものも混じっていたような……」と疑問を抱く


そして、真のこのモノローグを通じて私たち読者もまた疑問を抱く。

「言われてみれば確かに」と。

「叔母の言動は、『叔母さんったら天然ボケなんだからなぁ(笑)』で片づけてしまっていいのだろうか。それとも、何か深い意味があるのだろうか」と。

嗚呼、気になる!かくして私たち読者は否が応にも物語に引き込まれるわけだ。


つまり、【「叔母の家に居候することになったキャラA→引っ越し早々、Aは叔母の言動の端々に違和感を覚える」という展開によって、「言われてみれば、確かに叔母の言動はおかしい」「何か秘密を抱えているのか?」「いや、それとも単なる天然ボケキャラなのか?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】というテクニックである。


なお、叔母の言動に違和感があるという直感は正しい。じつは彼女は重大な秘密を抱えているのだった。


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