「アホのせいで、人畜無害の善人がひどい目に遭う」という物語!!|【第3話:友と勤労と虫刺されの夏の日(3)】「ガヴリールドロップアウト」を三幕構成で分析する
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分析対象
三幕構成
ポイント①
本話のストーリーをざっくり整理すると……
・第1幕、第2幕前半:サターニャが喫茶店にやってくる。ガヴリールがウェイトレスのバイトをしている → 2人の言い争い(基本的には「サターニャがガヴリールをからかおうとして、逆襲に遭う」という構図) → 人のいいマスターはハラハラドキドキ
・第2幕後半:サターニャが「コーヒーなんてどうでもいいのよ!あんたが私をもてなす姿を見たいだけ!」「このコーヒー、冷めてるわ!おいしくない!」 → コーヒーにこだわり、自信を持っていたマスターは強いショックを受ける。マスターが悩む「私のコーヒーは、若い子には喜んでもえらえないのだろうか?」
・第3幕:夕方、ヴィーネがやってくる。すっかり自信喪失したマスターは緊張 → しかし、ヴィーネはコーヒーを絶賛。マスターは大喜びする
パターン②
<1>
本話のストーリーをギュギュっとまとめると……
・Step 1:ガヴリールとサターニャが、いつものように低レベルな言い争い
・Step 2:傍にいた、人のいいマスターがひどい目に遭う
・Step 3:落ち込むマスター。しかしヴィーネの一言で、彼は元気を取り戻す
つまり、【アホがアホなことをしたせいで、善人がひどい目に遭う】というタイプのギャグですね。
<2>
そしてですね、この【人畜無害の善人がひどい目に遭う】というのは、コメディ作品の王道的なストーリーラインです。
例えば「こち亀」には、【善人(部長、本田、丸井 etc.)が、トラブルメーカー(両津)のせいでひどい目に遭う】というエピソードが少なくありません。
あるいはザ・ドリフターズのコントでも、【平凡な市民(いかりや長介)が、ぶっ壊れた連中(加藤茶、志村けん)のせいでひどい目に遭う】というエピソードが多く見られます。
<3>
さて、改めて本話です。
数ある【人畜無害の善人がひどい目に遭う】タイプの物語と比べて、本話にはどのような特徴があるのでしょうか?
ご注目いただきたいのは、オチです。
というのもですね、【人畜無害の善人がひどい目に遭う】物語のオチって大体が、
・パターン1:それまでやられっぱなしだった善人が逆襲に転じ、アホが痛い目に遭う
・パターン2:第三者が登場し、アホを成敗してくれる
……のいずれかなんですよ。
つまり、【加害者が罰を受ける → まさに因果応報!めでたしめでたし】という結末ですね。
ところが本話のオチは、
・Step 1:すっかり自信を失ったマスターに、ヴィーネが「わー、おいしいです♥」
・Step 2:マスターは自信を取り戻す
そう、加害者(ガヴリール、サターニャ)が罰を受けるシーンがないんですよ!
<4>
この「加害者が罰を受けない」というのは、なかなかどうしてとんでもないことです。
だってこれ、鑑賞者からすれば「カタルシスを味わえない」ということですからね。「えー!?さんざん迷惑をかけてきたのに、あのアホは罰を受けないの?なんか物足りないなぁ……」と感じる人もいるでしょう。
しかしですね、本話に限っては現状のオチに不満を持つ人は少ないのではないかと思います。
なぜならば……
・理由1:「加害者への罰 = 因果応報的なオチ」はスカッとするものの、要するにそれは暴力。本作の雰囲気から考えるに、暴力オチよりも、「ヴィーネの笑顔がマスターを笑顔にした」というほっこりエンディングの方がフィットするように思えます
・理由2:加害者(ガヴリール、サターニャ)への罰は存在しませんが、しかし被害者(マスター)の救済は描かれています。だから殺伐とした印象はありません
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(担当:三葉)