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山奥育ちのヒロインはなぜ魅力的なのか?|【一占:少女と占い、時々おなか(1)】「うらら迷路帖」を三幕構成で分析する

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!


分析対象


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三幕構成


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ポイント①


本話のストーリーをざっくり整理すると……

・第1幕:人里離れた山奥で育った千矢が、迷路町にやってくる → 千矢は泥棒と誤解される

・第2幕前半(1):千矢はシャツをめくり、腹を出す(動物の降参ポーズ。つまり千矢なりの謝罪) → 警邏隊員の佐久がやってきて「なんとハレンチな!」 → 千矢は慌てて逃げ出す

・第2幕前半(2):千矢が紺とぶつかる。千矢は再び腹を出して謝罪 → 小梅もやってくる

・第2幕後半(1):3人とも①15歳の少女、②「棗屋」なる占い茶屋を目指してたったいま迷路町に到着したばかりだと判明。紺と小梅は「あなたもうららの見習いね!」と喜ぶ → 一方千矢は「うらら」という言葉すら知らない。紺と小梅は呆れる「ここに何しに来たの?」

・第2幕後半(2):千矢は泣きそうになって、またまた腹を出す「ごめんなさーい!」 → 紺と小梅が「言い過ぎたわ」と謝罪。千矢は「謝る時はお腹を出さないと!」と言って2人のシャツをたくし上げる → 3人は佐久に捕縛される「風紀を乱す奴は許さん!」 → ニナ(棗屋の主人)が登場

・第3幕(1):ニナが、佐久に助けを乞う「今後何かあったら、私が責任を持って腹を切るから。ね!」 → 3人は解放される

・第3幕(2):千矢らは棗屋へ → 千矢が語る「私、お母さんに会ってみたくてここにきたの」

・第3幕(3):ノノが登場。人見知りのノノは「ごめんなさい……」 → すかさず千矢が「謝る時はお腹を出さなきゃね!」と言って、ノノのシャツをたくし上げた。ノノが悲鳴をあげる


<2>

以上を大雑把にまとめると……

・Step 1:主人公(千矢)が、物語の舞台(迷路町)にやってくる

・Step 2:主人公が仲間(紺、小梅、ノノ)、師匠(ニナ)、その他の主要キャラ(佐久)と出会う


ポイント②


<1>

本記事では、千矢の降参ポーズについて重点的に考察を行います。


千矢は、

・第2幕前半:商店主らに対して

・第2幕前半:紺に対して

・第2幕後半:紺と小梅に対して

……と3回腹を出す。これにご注目いただきたいのです。


というのも、千矢の降参ポーズには【3つの素晴らしい効果・メリット】があると思うんですよ。

以下、詳しくご説明します。


<2>

第1の効果・メリットは【千矢の人となりが一発で鑑賞者に伝わる】。


すなわち、降参ポーズを見た鑑賞者は、

・1:千矢は、山奥育ちの野生児である

・2:したがって常識を欠いている。その結果、様々なトラブルを巻き起こす。つまりは、トラブルメーカーである

・3:しかし千矢は善人だ。すぐに腹を見せる(= 謝罪する)子が、悪人のはずがない

……と理解するはずです。


本話は「うらら迷路帖」の最初のエピソード。各キャラの人となりやら、世界観やら、物語の舞台の概要やら、鑑賞者に伝えねばならぬことがたくさんあります

かといって、くだくだしい説明や冗長な描写が続けば、鑑賞者はうんざりしてしまうでしょう。


そこで、降参ポーズ!

千矢が腹を出すだけで、千矢 = 野生児 + トラブルメーカー + 善人】と鑑賞者に伝わる。これ以上の説明は不要!

いやぁ、便利ですね!


<3>

降参ポーズの2つ目の効果・メリットは、【「健全なエロ」で、鑑賞者の興味を惹きつける】です。


本話は「うらら迷路帖」の第1話。ゆえに、鑑賞者のハートをがっちり掴む仕掛けが求められます。

「おっ、これは面白そうだ。次回も見逃せないな!」「続きが気になるなー!」と感じてもらえなければアウトですからね。


では、いかにしてハートを掴むか?

様々な方法があるでしょうが、例えばエロ!


とはいえ、あまりにも露骨なエロは如何なものか

喜ぶ人もいるでしょうが、辟易する人も少なくないはずです。最初のエピソードから門戸を狭めてしまうのはあまり得策とは思えない。ここは、「健全なエロ」にとどめておくのがよさそうです。


はて、「健全なエロ」とは何か?

ズバリ、腹(+ 乳房の下部)を見せて謝罪する主人公!


千矢の降参ポーズはエロい。それは間違いありません。

しかし、ですよ。千矢は誰かに媚びを売っているわけではない。あざといわけでもない。打算は皆無。ゆえに淫靡な感じはしない。むしろ健康的に思える。

つまりは「健全なエロ」!


<4>

降参ポーズの3つ目の効果・メリットは、【応用しやすいです。

降参ポーズは、いつどのような場面に飛び出してきても違和感がありません。制作者視点でいえば、どんなシーンにもオチをつけてくれる汎用性の高い武器なのです。


また、「千矢が、他のキャラの腹を丸出しにする」という応用も可能です。

実際のところ本話には、

・第2幕後半:紺と小梅が腹丸出しにされる

・第3幕:ノノが腹丸出しにされる

……というシーンがあります(つまりは第1話にして、既にメインキャラ全員が腹を出している!何ともすごい作品です)。


さらに、「降参ポーズとはまた別の『腹ネタ』を描き、派生的な笑いを狙う」という応用もできるでしょう。

本話には、

・第3幕:ニナが「今後何かあったら、私が責任を持って腹を切るから」と発言する

……というシーンがあります。

これ、一見するとどうということのないシーン、せいぜいが「随分大げさなことを言うなぁ」と感じるだけのシーンです。しかしそれ以前にたっぷり降参ポーズが登場しているがゆえに、「ニナ、お前も腹か!(笑)」という笑いを生み出すことに成功しています。


<5>

以上、3つの効果・メリットをご説明してきました。

・1:千矢の人となり(野生児 + トラブルメーカー + 善人)が一発で鑑賞者に伝わる

・2:「健全なエロ」で、鑑賞者の興味を惹きつける

・3:応用しやすい


千矢の降参ポーズがいかに素晴らしいアイデアか、ご納得いただけたと思います。すごい!


ポイント③


<1>

改めて、本話のストーリーを大雑把に整理してみましょう。

・Step 1:本話の主人公は千矢。千矢は山奥で育った野生児である

Step 2:ある日、千矢が街(迷路町)にやってくる

Step 3:千矢は常識がない。ゆえに早々にトラブルを巻き起こす

Step 4:並行して、素敵な仲間や師匠と出会う


<2>

こうして整理してみると……いかがでしょうか。これ、とある物語によく似ていると思いませんか?

そう、「ドラゴンボール」です。


千矢は、幼少期の悟空と同タイプのキャラなのです。

・千矢も悟空も人里離れた山奥で育った。そして都会っ子(紺ら、ブルマ)との出会いをきっかけに様々な経験を積み、成長していく

・千矢の【降参ポーズ】は、悟空の【パンパン(相手の性別を判断するために股間を叩くこと。すなわち男性器があれば男性、なければ女性)】を想起させる。2人とも、常識がないがゆえに意図せずして性的な言動を取り、周囲を慌てさせるキャラである


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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