ネット掲示板に毒されたJC、暴れる！！｜『スパイダーマン3』（3）

2020年3月7日 19:50

テーマ発表！！

　第1回、第2回に引き続き、映画「スパイダーマン3」をベースに新しい物語を妄想します。

※「スパイダーマン3」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。

妄想開始！

嘉村　「スパイダーマン3」は、憎しみに取りつかれた男が、憎しみのままにふるまうことの恐ろしさや虚しさに気づき、相手を許すに至る物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは？」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう！

三葉　承知しました。

嘉村　前回ご紹介したのは、「『スパイダーマン3』　～『痴漢冤罪』編」でした。

案②

嘉村　それでは「案②」にまいりましょう！

三葉　はい。「案②」は、「『スパイダーマン3』～『苛立つJC』編」です。

嘉村　苛立つJC……？

三葉　詳細をご説明する前に、「スパイダーマン3」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。

三葉　……ですね（より詳しくは第1回の記事で）。

嘉村　ふむふむ。

三葉　以上を踏まえて……「案②」！ストーリーをご紹介しましょう。主人公はJC、すなわち女子中学生です。

嘉村　ふむ。

三葉　彼女は物静かな少女です。からかわれたり、いじめられたりするタイプではありませんが、友だちは少ない。勉強も運動もまずまずできるものの、目立つことはない。

嘉村　なるほど。

三葉　そんな彼女は最近……妙にイライラしていました。学校では、騒がしくて子どもっぽいスクールカースト上位層の横暴に苛立つ。同時に、悪口をぶつけられ、小突かれ、それでも黙っているスクールカースト最底辺の連中もムカつく。家庭では、下品で口うるさい母にうんざりする。……みんなどっか行け！

嘉村　ふーむ……思春期ですかね。

三葉　ええ、そうですね。

嘉村　ふむ。

三葉　さて、ここで「スパイダーマン3」のストーリー構造を確認しておきましょう。

嘉村　えーと、まずは【1】ですね。主人公が多くの人に苛立ちを感じていると。

三葉　そうですね。続いて彼女の怒りが膨れ上がるシーンですが……「スパイダーマン3」では、ここで宇宙から飛来した寄生生物「シンビオート」が登場します。

嘉村　ええ。

三葉　シンビオートは宿主の攻撃性を高める働きを持っている。主人公・ピーターは不運にもシンビオートに寄生され、憎しみが膨れ上がり、憎しみのままに行動するようになります。

嘉村　ふむふむ。

三葉　それでは「案②」では、どのようにして主人公の憎しみを増幅するのがいいでしょうか？「スパイダーマン3」に倣って、「謎の生命体が少女に寄生したのでした！」というSF仕立ての展開でもいいのですが……ここではもう少し現実的な路線を採用しましょう。すなわち、主人公はとあるネット掲示板の常連だった！

嘉村　2ちゃんねるのような……。

三葉　いえ、もっと荒んだところですね。ここでは名前を伏せますが、○○○とか。

嘉村　あー、なるほど。

三葉　人でなしと、節操なしと、心ない者が集うネットの闇！ネットの最底辺！人間は環境に影響されるものです。最底辺に身を置けば、聖人だって荒むのが道理。ましてや彼女は中学生。可塑性が高い。彼女の心の中で憎しみが増幅されていった。

嘉村　ふむ。

三葉　そしてある日、スクールカースト上位層の連中が、いつものように最底辺の陰キャ（以下、Aさん）をからかっているのを見て……主人公が吐き捨てる「いい加減にしなよ」。教室がシンと静まり返る。クラスメイト全員が、主人公を見つめる。短い沈黙の後、上位層グループのリーダー（以下、Bさん）が口を開いた「……はっ、ハァ？何よ。何なのよ。ちょっと……ハァ？」。彼女はしゃべっている内に興奮してきたようで「ちょっ……おい、テメェ！私らにケンカ売ってんのか！？」。Bさんが机をドンと叩く。主人公は身じろぎ1つしない。「ビビッてのかよ！クソ女が！」。Bさんが腕を伸ばす。主人公の胸ぐらをつかむつもりです。と、次の瞬間……Bさんがひっくり返った。Bさんは何が起きたのかわからない「えっ……えっ……」。

嘉村　ほぉ……。

三葉　じつは……主人公は幼い頃から合気道を習っていました。中学生になり、「武道なんて嫌だよ！」「汗臭いのは勘弁して！」ということで道場を去ったものの、いまも相当に強いのです。

嘉村　ふむふむ。

三葉　Bさんは口を開くが、言葉が出ない。Bさんの取り巻きは黙って後ずさる。主人公は……いつものように机に突っ伏した。休憩時間は眠ることにしているのです。

嘉村　なるほど。

三葉　その後も、主人公の攻撃的な言動は続きます。すなわち……帰宅すれば、ピーピーピーピーヒステリックな母に一喝する「私の中に自分の欠点を見い出して、それを否定するのは止めて！気に食わないなら、自分が成長してよね！」。母は、娘の痛烈な言葉に顔色を失う。

嘉村　ふーむ。

三葉　さらに翌日、主人公がトイレに入ると、それを待っていたのでしょう。Aさんがスッと近寄ってきた。「……何？」。Aさんが口ごもる「あの……あの……ありがとう」。主人公はイラッとする。

嘉村　……？

三葉　主人公は、別段Aさんを救おうとしたわけではありませんからね。Bさんの言動が目障りだから止めたに過ぎない。むしろ主人公は、Bさん以上にAさんに怒りを感じていたのです。

嘉村　ほぉ……。

三葉　「……うるさい」「えっ」「うるさいっての。私に話かけないで」。Aさんが驚く。

嘉村　まぁ……驚くでしょうよ。Aさんにとっては、主人公は恩人、正義の味方ですからね。

三葉　「あんた、ウザったいんだよね。弱い者ぶっていれば、いつか誰かが助けてくれると思っているの？」「でも昨日……」「私に幻想を抱くなよ。ハァ。こんなことなら放っておけばよかった」「……」「1人で生きていけないなら死んだら？」。

嘉村　うーむ……さすがに言い過ぎでは……。

三葉　Aさんは、無理に口角を持ち上げる。そして「ごっ、ごめんね……あの、私なんかが話しかけてごめんなさい……」。Aさんは走っていった。主人公は思う「あれ……あれ。私、何だかメッチャ嫌なヤツ……？」。ここに至って、主人公はようやく正気に戻ります。

嘉村　ネット掲示板の呪縛から逃れたと。

三葉　そうですね。彼女は、憎しみや怒り、イライラのままにふるまうことの恐ろしさや虚しさに気づいたのです。

嘉村　えーと……【3】を経て、【4】に至ったわけですね。

三葉　はい、その通りです。つまり次は【5】。すなわち……主人公が自己嫌悪に陥っていると、Bさんがやってきました。主人公はうんざりする。「いま、落ち込んでいるんだ。あんたの顔を見ると余計暗くなるからさ、向こうに行ってくんない？」という言葉が出そうになるが、グッと堪える。「憎しみのままにふるまうのは虚しい。もう止めよう」と心に誓ったばかりですからね。

嘉村　ふむふむ。

三葉　「えーと……どうしたの？」。Bさんが叫ぶ「『どうしたの？』じゃねぇだろ！」。目が血走っている。主人公は、いよいようんざりする。エンジン全開だなぁ……。「テメェ、昨日のことを忘れたとは言わせねぇぞ！」。主人公はなるべく穏やかな口調で「昨日はごめんね。私、言い過ぎちゃった。アハハッ。仲よくやりましょう」。しかし……ダメだ。むしろ火に油を注いでしまったようだ。Bさんは、主人公が怯えていると勘違いし、「今更謝ったって遅ぇんだよ！ぶっ殺す！」。……こうなってはいかんともしがたい。降りかかる火の粉は払わねばならない。主人公は、Bさんの顎に掌底を打ち込んだ。Bさんはガクッと膝を折り、倒れ込む。

嘉村　ふむ。

三葉　さて、ここでもう1度「スパイダーマン3」のストーリー構造をチェックしましょう。

嘉村　えーと。Bさんを返り討ちにして……【6】まで来たわけですね。

三葉　はい、そして【7】です。主人公がAさんを一撃で沈めると……彼女の取り巻きがグイッと前に出た。主人公はファイティングポーズをとる「あんたらもやる気かい？」。しかし……そうではない。取り巻き連中は一斉に頭を下げた「Aさんを許してあげて！Aさんは高飛車で、いけすかなくって、かわいげもなく、さりとて頭がいいわけでもないけれど……でも私たちの友だちなの！彼女に代わって謝るわ。ごめんなさい！」「……謝る相手は私じゃなくてBさんでしょ？」「ええ、もちろんBさんにも謝るわ。でもまずはあなたに……」「わかったよ。私だって、人様に自慢できるような性格じゃないしね。いいよ。許すよ」「ありがとう。それから厚かましいようだけれど、Aさんとお友達になってあげてくれないかしら」「……冗談でしょ？」。

嘉村　ふむ。

三葉　そして最後に……主人公はBさんに頭を下げます「ごめん！どう考えても言い過ぎた。許して」。Bさんが驚く「そんな……いけないのは私です。ウジウジしているから……」「いや、そうじゃなくて……」「ううん。悪いのは私で……」「いや、だから……」「私が……」「うるせぇ！黙って聞け！」「えっ、えっ！？」「あっ、いや……ごめん。マジごめん。私、最近怒りっぽくて……畜生！全部ネット掲示板のせいだ！！」「ネット掲示板……？」「『深淵を覗く時深淵もまたあなたを覗いている』ってヤツだよ」「……？」とまぁ、そんなやりとりがあって物語は幕を閉じます。

嘉村　なるほど。主人公はBさんを許し、そしてAさんから許されたわけですね。

三葉　以上、「『スパイダーマン3』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました！

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　「スパイダーマン3」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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