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百裕(ひゃく・ひろし)
2024年8月19日 00:00
自分がまだ小学生だった頃に、母と妹と三人でバスに乗って祖父母の家へ行った。 家の近くのバス停へ歩いて行くのに、途中で母が犬のうんこを踏んだ。「あ、うんこ踏んだよ」と指摘すると、「えぇっ!」 母は驚いて足元を見た。そこには確かに大きめの犬のうんこが、踏まれた形に潰れている。 嫌だぁ、と言いながら、踏んだ足を舗道にずずずとなすりつけた。地面にうんこが帯状に付着した。 それから母は靴の裏を
2024年8月17日 00:00
「急だから、誰が来るかはわからない」と言う小佐田と店へ入ったら、タケオがいた。 タケオとみんな呼ぶけれど、実を云うとどうも自分は中学時代の彼にまつわる記憶がない。それでも先方はこちらを知っているようだ。それにみんながそう云って話しているから、同窓生には違いないのだろう。 しかし覚えがないのにいきなりタケオ呼ばわりは何だかしづらい。だから苗字で呼ぼうと思ったら、自分は彼の苗字を知らないのである。
2024年7月28日 08:47
小六の時、学校で歯を磨いていたからあれは歯科検診の前だったのだろう。空がどんより曇ってきて、遠くでゴロゴロ聞こえ出した。 それからじきに稲光がして、あっ、と思った。「見た? 見た?」「見た!」 稲光を見たのはみんな初めてだったようで、甚だ興奮したのを覚えている。 雷とは随分大したものである。今は仕組みがわかっているからどうということはないけれど、何も知らずにあんな音と光を見せられたら