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馳走西健一 2024.12
※2024年12月訪問時の投稿となります。
はじめに
静岡県焼津にあるフレンチ「馳走西健一」に参りました。(サスエ前田魚店から徒歩10分弱という、個人的好立地)
シェフの西さんは、東京やフランスのフランス料理店の他、広島の「馳走卒啄一十」でもご経験を積んでいらっしゃいます。(サスエ前田魚店との出会いは、馳走卒啄一十だったとか)
実際に食べたもの
おまかせコース(16,500円)に、追加料金で一部増量のご対応をいただきました。(ありがとうございます!)
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器を開けた瞬間、柚の爽やかな香りが柔らかく舞い上がります。
どうまん蟹は、身と内子をふんだんに使用したことによる厚みがありながらも、ミネラルと旨みは非常に穏やか。
浅利の出汁で親和性を持たせたフランと相まって、淡い波が広がり引いていきます。
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軽やかなベニエに、ふわんと解けるどんこ。
まるで雲のような口当たりに、繊細な旨味とエキスが優しく広がります。
合わせるタルタルソースは、ゆで卵、玉ねぎ、ケイパー、ハーブをベースに、ほんのりとチリスパイスを加えて。
マヨネーズを使用せずに微量な油分で調整を行うことで、凛とした酸と清涼感がどんこの味わいを引き締めます。
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その日獲れたばかりの鯵を、柑橘ビネガーでマリネ。
筋膜を彷彿とさせる噛み応えと、むっちりと肉厚な口当たり。
無論、臭みや雑味は全くなくて、ピュア。咀嚼するごとに、柑橘の爽やかさと穏やかな脂乗りが見え隠れします。
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さっとソテーされた赤座海老は、身がぷりんぷりん。透明感のあるミルキーな甘みが全面的に露になっています。
合わせるアメリケーヌソースは、赤座海老の海老味噌を使ったもの。
赤座海老の淡く繊細な味わいを弱めることなく、自然な深みと彩りを加えてくれる。
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ぷりっと活き活きとした弾力の後、しっとりふんわりと、しなやかに繊維が解れていく。広がるのは、淡い華やかさとほんのり甘みが色づいたピュアなエキスによる、優しい流れ。
合わせるのは、香草バターソースと煮込んだキャベツ。
柔らかな厚みに溶けこんだ爽やかさ、そして海のミネラルを彷彿とさせる塩によって、味わいに深みと輪郭が生まれます。
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ここでパンが登場。外注のものだと思われます。
バターはボルディエです。
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当店のスペシャリテ。何が凄いって、1つ1つのピースが生きていること。
保水性がありつつ、ふわりと抵抗力や重力を感じずに解れる太刀魚と、玉ねぎの濃縮した甘みがベース。そこへ、パイのサクサクとした食感と焼けた小麦の香ばしさ、そして大葉と茗荷が心地良い塩梅で清々しいアクセントを加える。(個人的に、この茗荷の存在と塩梅によって、この品がより一段階上へと昇華させているように感じた)
ソースは、貝の出汁にノイリー、生クリームによる柔らかなまろやかさと、胡椒が輪郭を引き締める。
穏やかな華やかさを纏った一品です。
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静岡の清沢という地域で獲れた鹿。
元気な弾力の中に、おしとやかさも見受けられる口当たり。そして、ジビエらしい野性味というより、柔軟性を持った生命力が印象的。
(強いて申し上げるとしたら、ラチュレで頂いた鹿に近しかった)
この鹿は茶の葉を食べることから、ソースはジュに玉露を合わせて。付け合わせはレッドムーンというじゃがいものピューレ。
ジュとも浸透しつつも玉露の緑が鮮やかに広がり、全体としてすっきりとした味わいに仕上げていく。
良い意味でメインディッシュらしからぬ、爽やかな一品でした。
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甘鯛の鱗焼きに、海苔と梅、玄米ともち米を使用したリゾット。
白甘鯛の香ばしさと柔らかな甘み、穏やかで豊かな磯の流れに、梅が点でアクセント、味わいの濃淡が生まれていきます。
風土の色が活き活きと現れた、洗練された中に何処となく懐かしさと心地良さを覚える一品でした。
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桃の香りがすることから名付けられた、桃薫(とうくん)。
柔らかく弾ける瑞々しさと、丸みのある甘い香りが特徴的。
フロマージュブランは、軽やかさの中にも舌に絡みつく粘性もあり、練乳を彷彿とさせる味わい。
写真撮影を失念しましたが、和紅茶のアイスクリームもいただきました。
ほうじ茶のようなほろ苦さと香り高さ、抹茶のような深み。味わいは濃いですが、ほんのりと含まれた甘みによってさらりと頂けます。
(ということで、写真を撮り忘れたのです)
総論
お食事全体を通じて感じたのは、食材(魚や肉など主軸となるもの)で自然な広がりを持たせて、ソースで味わいを引き締める構成美。
それによって生まれる、ゆったりとした濃淡は、じんわりと優しくお腹と心に刻まれました。
サービス
物腰の柔らかさと優しいお人柄を感じるサービスで、心が浄化される思いとなりました。以下、印象的だった点をまとめます。
できる限りの対応をしてくださるサービス精神
初回の訪問であったにも関わらず、身勝手ながら、パイ包み・メインディッシュ増量のお願いをさせていただきました。今まで対応したことはなかったとのことでしたが、「やってみます」とご承諾いただきました。当日は依頼分に加えて、デザートのアイスなどまで多めにご用意いただき、「自分のことを考えてくださっている」と感謝の思いでいっぱいになりました。気疲れしない、でも細やかなお心配り
一番印象的だったのは、初訪問とは思えないほど、何なら親戚の家に伺った際と同じほどに、リラックスして楽しめたこと。
丁寧さの中に親しさがあって、思わず色々質問を投げてしまうほどに自然体で食事を味わうことができました。
お値段
コース(一部増量ご対応いただきました)、ワイン×2で、27,500円/1名でした。
まとめ
一品一品が生み出す自然な濃淡と、皆様の柔らかなお人柄。
これぞ、旅の目的地にしたいお店です。
また別の季節に伺った際、どんな味わいが楽しめるのだろうと胸が弾みます。