SUGALABO 2025.01
はじめに
東京神谷町にある「SUGALABO」に参りました。
須賀洋介シェフの感性と、全国各地を巡り出会った食材によるお食事を味わえます。
念願の冬シーズンの訪問です!
(前回の訪問はこちらから↓)
実際に食べたもの
当店はおまかせコース(時価)のみのご提供。
ちなみに、お席へのご案内は開店の5分ほどにいただきました。
下にある紫蘇ごと頂きます。
最初は雲丹の滑らかなミネラル。口溶けと共に、磯の香りが柔らかに鼻と口腔を通り、ピュアな甘みと深みがみるみる増幅されていく。
最中による軽やかな香ばしさと、紫蘇の爽やかさが溶け合い、余韻は何とも軽やか。
菊芋のスープはぽってりとした口当たり、だけれど繊維も粒子も感じることなくさらりと消えてしまう。
温かな丸みを帯びた甘みとほのかに鼻をくすぐる土の香りが、厚みと香り高さを持ったトリュフを優しく包み込む。
洗練された繊維さと華やかさ、でもほぅと安らぎのため息をこぼしてしまう。
仕上げとして、エスプーマにしたオランデーズソースを目の前で絞ってくださります。
ホタテは肉厚ながらも、一噛みするだけでするりと溶けてしまう。そして詰まった旨味と甘みは、ピュアの一言に尽きる。どれだけ粗探ししても、磯臭さや雑味が全く見当たらない。
そして、オランデーズソースのまっすぐで細やかな線を彷彿とさせる酸が、味わいに輪郭を生む。と同時に、エスプーマにすることでその線が連なり、まろやかな球体となる。そうして、ホタテの甘み、衣の香ばしさ、キャビアの塩気を柔らかくまとめ上げていく。
各要素の印象を残しつつも、1つの品として調和し昇華されていく。
本当に良いものを使用していることは勿論、作り手の技術力があるからこそ生まれる味わいです。
ペルシュウは手で丸めずに、そのまま手に持って口の中に運びます。
最初は丸みを帯びた塩味、そして口の中でそのミネラルが旨味と甘みと共に広がり、絡み合い、様々な顔を見せてくれる。
最後にスガラボ米をペルシュウで巻かれたものが現れます。
米は粒感も残した炊きあがり。さらりと解れると共に、米の甘みと熱が浸透することで、ペルシュウの脂が雪解けのように溶け込み、甘みがより鮮明になります。
ウド、タケノコ、インゲン、わらび、菜の花、春ごぼう、春ズッキーニなどなど…メモを取り切れなかったほど、沢山の恵みを1つにまとめたテリーヌ。
冬を過ごす中で蓄えた自然な甘みと、柔らかな青みが味覚をくすぐる。
ソースはアンチョビとオリーブ、ケッパーを使用したタプナードソースに、フキノトウを合わせて。
心地良い厚みと柔らかな酸による爽やかさ、そしてフキノトウが時折顔を覗かせることで、鮮やかな濃淡が生まれる。
フレッシュな馬肉をタルタル仕立てに。
ふわりを空気を含んだ口当たりの後、甘い脂と柔らかな旨味が瞬く間に溶けてしまう。
トリュフの華やかな土の香りは、アクセントと下支え役の両方を担い、タルタルをさらに押し上げる。
そして、うずらの卵黄を絡めることで、まろやかに全体を包みます。
白子はムニエルで。
カリッとした薄手の衣の中から、とろりと甘みが露になる。
よく白子の甘みをミルキーと例えるけれど、こちらは本当にピュアなミルクのよう。濃厚なのに、爽やかさすら覚えるほどに雑味やしつこさがない。
ソースはイベリコ豚のチョリソー、レーズン、セミドライトマト、レモン、生姜、焦がしバターにケチャップ。
初めての組み合わせに、高まる好奇心…!
トマトの果実味とレーズンの熟した甘みと香り、チョリソーによる華やかさとコク、そこへレモンが舞うことで心地良いキレが加わる。
複雑なのに、各食材の色と相乗効果はまっすぐで鮮明。そして、鮮やかだけれど、主役である白子を引き立てる。
異国情緒を覚えるような、初めての出会いに興奮が冷めない。
きんきは照りによる香ばしさと、ピュアながらも丸みを帯びた甘み。プリッとしつつふわっと消える口溶けには、繊維を感じさせない。
質の良さは勿論ですが、絶妙な塩梅を付く火入れに感服。
合わせるのは、三浦大根ときんきの出汁に柚子果汁を加えたもの。
透き通った旨味に、柚子の爽やかな果実感が驚くほどに自然に溶け込んでいる。
豊かな恵みを運んだ海の流れと、朗らかな陽だまりと大地を吹き抜ける心地良い風。日本の爽やかで豊かな恵みと、それを愛でる感性を彷彿とさせる一品。
メインのパイ包みが焼きあがりました。
寝かせて肉汁を閉じ込めた後に人数分にカット、最後にさっと温めてからご提供いただきました。
百合根はコンディメントとして。
10月に収穫したものを3か月雪の下で熟成させてから、お送りいただいているとのこと。
1時間じっくり火入れさせて頂きます。
メインのパイ包みは、鴨の胸肉にフォアグラ、黒トリュフを挟んだものを詰めて。
鴨は初めに生きの良い弾力を感じるも、ショキショキと抵抗力なく断ち切れる。静かに湧き出るのは、力強さの中に穏やかさもある、滋味深い旨味。
フォアグラの純然たる甘みと、薄手の中にバターや小麦の香ばしさが詰まったパイ生地が、鴨の世界観をさらに広げる。
そして、ソースは胸肉以外の鴨の部位を余すことなく使用したもの。
赤ワインによる深みと滑らかさはありつつ、鴨による活き活きとした旨味と香り高さが全面的に現れている。一方で、臭みや雑味などの阻害要素が全くなく、ただただ純粋に心地良い厚みと雄々しさが広がる。
この気品高さと重厚感は、やはりフレンチ。でも、この溢れる生命力に、元気が漲ってくる。
コンディメントの百合根は、ほっくりした甘みの中に、シナモンのような?スパイスを彷彿とさせる華やかな香り高さも感じる。(これは恐らく百合根由来のものだと思う)
願わくば、お皿てんこ盛りで頂きたかった。
締めのお食事。量を選べるため、大盛りでお願いいたしました。(笑)
野菜と牛由来の濃縮した、でもさらりとした旨味。(牛の旨味が本当に透き通っていて、しつこくないのです)
その中に、少しトロピカルでフルーティな甘みがほんのりと。(お聞きしたところ、林檎ではなくドライアプリコットを使用しているとのだとか。)
豊かな味わいである一方、食べ疲れすることなくスルリと平らげてしまえます。
お米は水分を含んだ、柔らかめの炊き上がり。
フレッシュの水晶文旦に、ミントシャーベット、ローズマリーのゼリーと泡には桂花陳酒の香りを。
水晶文旦は穏やかに弾ける酸と、ほんのり苦みの余韻。ゼリーと泡には、ほんのり色付いた華やかな甘い香り。
各食材ごと異なる涼やかさが連なることで生まれる流れは、静かながらも情緒がある。
一組一箱をお好きなだけ。
一噛みすると、ジューシーな果肉感がぱぁっと広がる。そのフレッシュな甘みとほんのり酸。
果物らしからぬ、かなりの食べ応え。
下はルバーブと古都華のコンポート、その上にはピスタチオアイスを包んだサバイヨン、レモンの泡、仕上げにエグランティーヌ(薔薇)の香りを付けた苺のソース。
苺の果肉とルバーブのぐっと詰まった甘みに、こってり濃ゆいピスタチオアイス。
そのピュアさと、泡とクリームに忍ばせたレモンのフレッシュな酸と相まって、豊かな実りと華やかさを持たせつつ、さらりと消えてしまう。
時折メレンゲがふわりと舞うことで、食感にも軽やかさが創出される。
ベタな表現にはなるけれど、淡く爽やかな恋を彷彿とさせる味わいです。
土佐ジローという地鶏の卵を使用したマドレーヌ。
外はサクッと、中はふんわりエアリーな口当たりと共に、卵感が効いた甘みが軽やかに広がる。
一口サイズであることもあって、ほとんど自分が平らげてしまいました(笑)
同じく土佐ジローの卵黄と、ペルーのチョコレートを使用したムース。
ねっちりと舌に絡みつく濃厚なコク。その中には、フルーティな華やかさとナッティーな風味もほのかに受け取れる。
何より驚いたのが、味わいの広がりと引きの滑らかさ。口の中いっぱいにチョコレートを感じたはずなのに、気付いたら口残りなく消えていく。リッチなのに、軽やかだと思ってしまうほど。
総論
大地や海の恵み、そしてシェフの感性が交錯し、混ざり合い、調和する。
そうして生まれる味わいは、心の何処かで探し求めていたものと、そう思ってしまうほどに、虜になってしまいます。
この品々が辿ってきた軌跡、紡いできた熱へ思いを馳せながら、いつまでもこの余韻に浸っていたいです。
おまけ
帰りに、今年1月に移転した「S」にも参りました。
シェフとの距離感が近くなって、大変嬉しい。
次回はしっかり本食いしたいです。
サービス
今回も自分の不出来さを痛感してしまうほど、本物のホスピタリティをいただきました。
以下、印象的だったエピソードをまとめます。
何名ものゲストをお迎えされているはずなのに、顔と名前の一致、ゲストの嗜好を把握されている。入店時、名前を言わずとも分かってくださるのは、序の口。健啖家であることや、自分の近況などを汲んでくださり、色々お心遣いや温かなお声がけいただきました。
すぐにゲストの特徴を理解し、臨機応変にご対応される感性の高さ。連れは左利きだったのですが、2品目当たりですぐに分かってくださり、カトラリーを変えてくださりました。(ちなみに、私はこの瞬間まですっかり失念しておりました…)
お値段
コース、ノンアルコールスパークリング×1、グラス白ワイン×1で、約91,000円/1名でした。
まとめ
お食事も空間もホスピタリティも、何もかもが特別。しがみついてでも、再訪したいです。