三和 2024.11
はじめに
東京白金台にあるイタリアン、「三和」にまいりました。
勝手に評価!
総合評価:4.7 凄く良い!
料理・味:4.8
サービス:4.7
雰囲気:4.6
コスパ:4.4
実際に食べたもの
三和ではおまかせコースですが、メインと締めのパスタ、デザートに関しては好きな物を選択・追加することが可能です。
せっかくの訪問!ということで、色々追加してみました。
アミューズ
コースの始めに、メニューに記載のない品が二皿供されました。
ギャップに驚き。オリーブといえば、フレッシュな酸を彷彿とさせますが、こちらは甘みが主体!
甘口のシェリー酒、にんにくとハーブで漬け込んだもの。
瑞々しさと濃縮した甘みがじゅわーと広がる味わいは、まるでフレッシュなドライフルーツのよう。(矛盾した表現ですが)
バターナッツかぼちゃの温かいポタージュに、燻製の香りを纏わせた牛乳の泡、仕上げに白トリュフ。
ポタージュは、ぽってり滑らかな口当たり。濃厚というより、自然な甘みがふわりと優しく喉を撫でるような感覚。
トリュフによる花が開くような繊細な土の香りと、ほんのりとスパイスを思わせるかぼちゃの香り、柔らかい厚みが加わった乳の香り。
各食材の香りが繋き役となって、一体感を持たせていました。
前菜
極限まで薄くスライスされたことによる、微粒子のごとく細やかな塩と甘み。角が露ほどに見当たらないぐらいに、身と馴染んでいる。
口に含むと、まるで雪解けのようにミネラルと脂の甘みがじわじわと清らかに溶け出し、味わいが延々と広がる。
そんな口内では収まりきらない旨味をニョッコフリットがキャッチすることで、生ハムの魅力を余すことなく堪能できます。
噴火湾産毛ガニと北海道産バフンウニ、バジルソース、仕上げに青レモンの皮。
毛ガニは、蟹らしいミルキー感がありつつ爽やかな磯が香る。バフンウニはピュアな甘みが横に広がっていくイメージ。
そして、ソースはバジルがコーティングされたような、柔らかな爽やかさを持たせている。これによって、繊細な毛ガニやウニとバッティングせずに、全体としての調和が取れている。
最後に青レモンによる柑橘の香りが、味わいにキレを生む。
口に入れるとブリオッシュの如く、香ばしいエキスがじゅわー…と染み、生地がふわっと溶ける。時間をおくと、フォカッチャらしいしっとりもっちり感も楽しめる。
こちらだけでも完全なるご馳走。
ちなみに、おかわりは気前良く頂けるため、お言葉に甘えさせていただきました!!
え、江戸切子?繊細な職人技に、食べる前から既に脱帽。
身はしっとりしつつ、繊維に沿ってほろりほろりと崩れていく、不思議な口当たり。
その細やかな波に乗って、青魚らしい香りと酸、ミネラルをまとった脂がしなやかに流れていく。
合わせるのは、バルサミコソース。
レーズンのような熟した甘みとコク、そしてその底にある酸が柔らかく響く。この酸が橋渡しとなってサンマの波と溶け込んでいました。
カリッとしたクリスピーな外膜。中からはトロナスの如く、とろ~んととろける口当たり。しかし、厚切りによる柔らかな弾力も味わえる。これら全ての食感が内包されていることに、まず驚き。
オリーブオイルでコーティングした後に炭火焼き、バターソテー、オーブンと火入れを少しずつ変えることで生まれる、始めての食感です。
そして、純真無垢な甘みの後に、焦げによる香ばしさと深みがバターによって柔らかく広がる。
この焦げが唯一無二の調味料として機能していました。
ソースはバーニャカウダー。
始めはニンニクのパンチとコク、その後にアンチョビの塩と濃縮した旨味が、なだらかに受け取れる。
味わい深いのですが、ポルチーニに被さってこないというか、寧ろポルチーニの旨味を持ち上げるように組み合わさっている。
香ばしさやさっくりとした食感の存在を感じる、厚手の衣。
身ははらりはらりと、花びらがこぼれるような、とっても繊細な口当たり。(直線的な流れであったサンマに対して、こちらは球体を帯びた、より立体的な広がりを持っている)そして、内に潜める甘みが徐々にあらわになっていく。
合わせるのは、甘鯛の骨から取った出汁がベースのスープ。
桜海老を思わせる華やかさとトマトの瑞々しさと加熱による甘み、ハーブの爽やかな余韻。各要素の調和は、まるでパズルのピースがピッタリはまったかのような過不足のなさ。
何者も邪魔できない、完成された世界が広がっていた。
生姜の華やかなアクセントがキリッと効いている。
ポッピングシャワーのようなパリッと弾ける口当たりと相まって、口がリセットされます。
外皮に歯を入れると、「待ってました!」と言わんばかりにエキスがどっと溢れる。
湧き水のごとく純度が高く、一途な生命力を感じる旨味と旨味。
失礼ながら、メイン前の箸休め的ポジションだと侮っていたのですが、思いがけないサプライズ。
完全にノックアウトされました。
メイン
今回は2品選択しました。
シンプルに塩のみの味付け。
誤解を恐れずに申し上げると、最初は「少し物足りないかな…」と思ったのです。
しかし、咀嚼する事に内に秘めた繊細な旨味を見つける。旨味たっぷり!ガツン!というより、極限にまで水に近い味わい。
これが、ホロホロ鶏の味わいなのか。
腹の底から、じわじわと感動が染み出てくる。
「お腹に余裕があれば」と、盛り盛りポーションでご用意いただきました!
ピュアなベーコンのような、燻された香りがぷわぁんと鼻腔をくすぐる。着皿された瞬間に、一気に目(と食欲)がガッと開く。
脂は勿論甘いのですが、固形物感が全くない。肉から染み出る滋味深いエキスと溶け込むぐらいに、さらりとしている。
そして、燻製の香りと相まって、最後の一口が最初の一口と同じ体感で頂けてしまう。
両メインには、肉の端と白ワイン、少量の香味野菜と水を加えた、ジュのようなソースを少し加えています。
ガラでなく、肉を使用することによる透明感。そして、不自然な濃縮感だったり、肉との隔たりだったり、そういう要素が全くない。
そして、ポルチーニ、メイン、パスタ…どの品にも共通して言えるのですが、ソースが「上から覆い被さる」のではなく「下から支える」ように働いている。
パスタ
「お好きなだけ追加して大丈夫ですよ!」と仰って頂きましたので、お言葉に甘えて…
時間とお腹が許す限り、ということで、全8種類頂きました!
フレッシュマッシュルームが非常にピュア。爽やかで瑞々しいエキスと共に、土の香りがすーっと入っていく。
パスタに絡むのは、ぐっと煮詰まったデュクセルのラグーソース。濃縮した旨味を感じつつも、繊細なマッシュルームを味わいを下支えするような、母なる大地のような、滋味深い味わい。
仕上げに、目の前でアルバ産白トリュフを削っていただきます。
トリュフが全面的に出ていると思いきや、柔らかいというか、温かい。
まるでタンポポの綿毛が穏やかな秋空に舞うかのように、ふわりと香りが広がる。
ソースはバターベースですが、「生クリーム」と錯覚するほどに澄んでいる。「澄ましバター」とかのレベルでは済まないぐらいに。
そして、胡椒が華やかに香り立つことで、味わいに輪郭が生まれる。
何処となく、温かい夕焼けの中、ジブリ作品「猫の恩返し」で登場する「猫の国」のネコジャラシ畑で寝そべっている情景を彷彿とさせました。
トリュフがこんなに、心安らかにしてくれる食材だなんて、初めて知った。
牛ホホ肉の食感から、「始めまして」の感覚!
重力を感じさせない、ふわっと空気に溶け込むかのように繊維が解けていく。
ソースは、赤ワインの深みも、トマトの濃縮した甘みも、牛肉の柔らかな甘みも受け取れる。どれかが勝っていることも、劣っていることもなく、全ての調和が取れていました。
ドライトマトのように熟した旨味と丸みを帯びた酸の中に、弾ける果実味。ハーブの爽やかな香りによって、より明快に感じ取れる。
陽だまりに身を委ねているような、朗らさと心地良さ。腹の底から元気が湧き出ます。
あの、ガツンと頭をノックするような味わいを想像していましたが、まさかのギャップ萌え。
さらさらとしつつ、熟成したワインのように角の取れた味わい。ゴルゴンゾーラ特有のふくよかな旨味と塩気、そして豊潤な香りが複雑に絡まった奥深さが、じわりじわりと舌に浸透していく。
これが、ジャガイモ由来の柔らかで少し素朴な甘みを持ったニョッキと良く合う。
厚みはあるのに、軽やかというか、清々しい。
しらすのミネラル感をも乳化されているような、一体感のあるソース。
そんな豊かな味わいに、青唐辛子による点のアクセントが加わることで、活き活きとした波が描かれる。
思わずその波に飛び込んでしまうほどに、病みつきになります。
イカ墨を練り込んだパスタに、スルメイカのラグーソース、アオリイカ、アクセントに揚げたパン粉。
むっちりしつつ歯切れの良いイカからは、ミルキーな甘みがじわりと溶け出す。パスタと食感や味わいは異なれど、兄弟かな?と思うほどに親和性がある。
全体としては、最初にパン粉の香ばしさ、そこからソースの芯にある豊かなミネラルとイカの甘みがゆっくりと広がるイメージ。
このグラデーションに、食べる毎に愛が深まっていく。
カラスミ一粒一粒に、豊かな海の宝が詰まっている。
それらが青レモンを効かせたバターソースの波に乗って連なることで、穏やかな、でも情緒的な味わいが横へと、底へと延びていく。
どこまで続いていくような水平線に、お腹も心も満たされる。
デザート
口に含むとまず感じるのは、ふわっと仕上がったマスカルポーネクリーム。空気との境目が分からなくなるぐらいにエアリー。
そして、少しずつじゅわりとスポンジに染み込んだコーヒーの余韻へと移ろう。甘みの中にほろ苦さが染み渡る、食べた傍から恋しくなるような余韻です。
一口頂いた瞬間、スプーンを口に加えたまま数秒固まってしまいました。あまりにピュア過ぎる。
ミルクの芯というか、まるで牛乳をろ過したかのように、混じりっ気を感じない。「営業前に取ってきましたー!」と言われても信じてしまうほどに、酸化を感じない。
また、練乳を使用しているためか、甘みが自然に、滑らかに馴染んでいる。砂糖が添加されている感覚が全くない。
滑らかを通り越して、ふわっとエアリー感を覚えるほどに、優しい口当たり。
そして、リッチというより、まるでミルクのように柔らかいカカオが広がる。
決して薄っぺらくはないのに、ペロリと平らげてしまえる。
サービス
今回は1名の訪問でしたが、至福のお一人様をさせていただきました。
まず、私の「構ってちゃんオーラ」を汲み取ってくださり、折を見て気さくにお話し掛けいただきました。
その中で、渡邉シェフが「シェ・イノ」でのご経験もあるとお聞きし…思わずはしゃいでしまったのですが、嫌な顔1つせず、シェ・イノでのエピソードや裏話についてもお教えいただき、非常に楽しいひとときを過ごさせていただきました。
また、今回追加を沢山したことから、ご迷惑おかけしてしまいました。しかし、沢山食べることを喜んでくださったり、メインやパスタを多めにご用意いただいたり、さらには私の終電まで気に掛けてくださったたり。
これは、ファンになるよ…
お値段
上記料理(コースと追加分含む)とワイン2杯で、計50,500円でした。
まとめ
総じて感じたのは、素材をシンプルに活かすことの難しさ。
素材任せでは創出できる味わいに限界がある、しかし乗算し過ぎると良さを消してしまう。
そのミリ単位の塩梅をつくことで生まれる、味わいです。
そんなお食事をこんなに居心地の良い空間で頂けるのだから、感情がどうしようもなく溢れて止まない。
また伺えることを心待ちにしております。