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蒼菓 2025.02


はじめに

東京西麻布にある「蒼菓」で、スイーツコースを頂きました。
前回の訪問はこちらから↓

実直に食べたもの

当店では、おまかせのスイーツコースとティーペアリング(税込17,600円 )のみのご提供です。

メニューの他にも、本日使用する食材やティーペアリングの説明が記載された資料もご用意いただけます。

三浦農園 泉州黄玉葱のムース
トマトのクリアシート

砂糖不使用のムース。
一晩寝かせた玉ねぎを少量の油と塩で、6分の1にまでゆっくりとソテーさせて仕上げたもの。
トマトで作ったジュレとクリアシートを合わせて。

ぽてっと濃縮した甘みには、玉ねぎらしい厚みとふくよかさを感じられる。一方、雑味が全くなく、口溶けと甘みが非常に滑らかでピュア。
そこへトマトジュレがほのかな酸を加え、明瞭、だけれど穏やかなメリハリが生まれる。

シチリア州アーヴォラ産 アーモンドのブランマンジェ
自家製練乳入りジャージー牛乳のソルベ

ブランマンジェはアーモンドの芯の部位のみを使用。(1つ1つ丁寧に皮むきされているのだとか…)
もっちりと滑らかな口当たりの後から、杏仁を彷彿とさせるフルーティさがゆっくりと開かれていく。どんどん鮮明になっていく移ろいに、五感が研ぎ澄まされます。

合わせるジャージー牛のソルベ。砂糖ではなく、ジャージー牛から作った自家製練乳で甘みを加えたもの。
角の要素が微塵も感じられない甘みとジャージーのピュアなミルキーとの自然な調和。澄んだ味わいがゆったりと広がる。

和歌山県 藏光農園 せとか・八朔のコンポート
せとか・八朔のクリームとジュレ

2種類の果汁のゼリーに、コンポート。
粒からゆっくりと弾ける果実感を残したコンポートに、ゼリーはほんのりと苦味の余韻を残し、淡くも豊かな彩りを感じる。

クリームはホワイトチョコをベースに、生クリームと柑橘の果汁を加えたもの。
舌全体を包むような厚みとまろやかさがありつつ、柑橘の爽やかさに自然と移ろい、凛とした味わいへと引き締めていく。

静岡県 金原農園 完熟紅ほっぺ
フロマージュブランのムース

始めに、水を使わずたっぷりの苺とソーテルヌをぎゅっと煮詰めたシロップを供されます。
そのテイスティングをした後、デザートが提供。

苺は①フレッシュな物と、②シロップへ瞬間的にコンポートした物の2種類を使用。
①ジューシーでピュアな瑞々しさと、②口溶けと共にとろりとしなやかに浸透する甘み、異なる甘みを楽しめます。

フロマージュブランは甘みと酸が非常に細やか。漂う爽やかさは確かにフロマージュブランのそれだけれど、ふわりと優しく苺と口を包む。
ゆったりと心地良い余韻が続いていきます。

香川県 キウイバード さぬきゴールド・香緑の焼き立てミルフィーユ
マダガスカル産バニラとジャージー牛乳のアイスクリーム

ミルフィーユ生地は軽やかで滑らか。バターや小麦由来の香ばしさがはらりはらりとエアリーに解け、その繊細な味わいが口の中へと溶け込む。
キウイは歯を入れると、瑞々しい甘みがふんだんに、でも優しく溢れ、最後はほんのりとした酸がすんと響く。
カスタードクリームはねっちりと舌に絡む濃さと、心地良い厚みを持った甘みがゆったりと広がる。

キウイは縦に切る要素、カスタードクリームが横に広がる要素とするならば、ミルフィーユ生地は全体を繋ぎ取り持つ要素。

ミルフィーユという文脈で、各個性が鮮やかに穏やかに活かされた一品でした。

北あかりのコンソメ

雪蔵で3年寝かせた北あかりを3%の塩と共に水で丁寧に煮出したコンソメ。
驚く点は2つあり、まず1つは北あかり1kgで6人前にまで抽出していること。(このミニカップ×6)
2つ目は、じゃがいもの切る工程にまで徹底されていること。研師藤原さんが仕立てた包丁で切ることで、切れ目の悪さから出てしまうえぐみなどのマイナス要素を極限まで小さくしています。

香りはじゃがいもの皮を彷彿とさせる、豊かな香り。
一方、甘みはとうもろこしと疑うほどに鮮明。でも何処なくじゃがいも由来のゆったりとした余韻もある。

沖縄カカオ果肉から抽出したジュレ
白神山地の軟水とカカオのガナッシュ

ジュレはカカオパルプと種で作ったもの。
ぷるんぷるんと緩く踊るような口当たりと、瑞々しくフルーティな甘み。
気付いたらふっと消えてしまっているほどに、食感と味わいも繊細。

ガナッシュはチョコレートとローストしたカカオハスプの香りを移した軟水のみで作ったもの。
舌に纏うリッチなコクはありつつ、すぅーと薄い膜を残し引いていく。
心地良い苦みにほんのり酸を忍ばせた余韻に浸ります。

静岡県 金原農園 完熟紅ほっぺのショートケーキ

「2時間後に出す」ことを見越し、逆算の上仕立てたショートケーキ。
普段はメロンなのですが、この時期はメロンの質があまり良くないのと、以前からリクエストのあった苺Ver.で作られたとのこと。

粗めのスポンジには、苺のシロップを多めに染み込ませて。
ほろほろと崩れるように解れるスポンジと共に、苺シロップの濃密で鮮やか、でも爽やかな要素もある甘みがじゅわーと口に流れてくる。

生クリームはリッチでゆったりとしたミルクの甘みはありつつ、柔らかく口を包むように溶けていく。

そして苺は繊維を断ち切るようにカットした後にコンポートとしたもの。
ブランマンジェの物よりもさらに口溶け滑らか。瑞々しさもほんのり残した、熟した甘みが広がります。

口に含んだときの溶け込みから余韻まで、非常に繊細。

焼き立てフィナンシェ
静岡県 三松園 エイジアンレモンのタルト

レモンタルトのアパレイユは、卵、砂糖、バター、レモンを使用したシンプルなもの。
卵をベースとしたまろやかさに、レモンが凛と響く。
ほろほろとサブレ調のタルトによって、香りと食感のアクセントも加わる。
色彩の豊かさと爽やかさの詰まった一品。

フィナンシェ焼き立てのご提供。
まずはそのまま二、三口。ふわっとエアリーな口当たりと、バターの香ばしさと瑞々しいエキスがじゅわーと広がる。
その後、時間置いた物を頂くと、
外はカリッとクリスピーに、中は水分が回ることでしっとりもっちりした口当たりとアーモンドプードルの華やかな甘みが広がる。

黒トリュフのアイスクリーム

お茶菓子を楽しんでいる途中で、アイスクリームも頂けました。

ジャージーの澄んだ甘みと、豊かさと繊細さを相持つ黒トリュフの土の香り。
どちらかが優勢になることが全くなく、両方が溶け込み合い調和した味わい。

上記、ペアリングで頂いたお茶です。
デザートに使用する食材に合わせたり、引き立てたり、逆に優しく切ったり。
お茶自体の質の良さは勿論、センスの良さを感じるペアリングでした。

総論

全体としての味わいは明瞭で豊か。
でも、その細分に意識を向けると、1つ1つの工程の細やかさと拘りを感じられる。
例えば苺やカカオなど、同じ食材に対してもアプローチを使い分けることで、異なる味わいや良さを引き出す。
その繊細さのあまりに、全ての魅力を享受できない自分に悔しさを覚えつつも、心満たされる品々でした。

サービス

前回の訪問では、実直で律儀なおもてなしだと感じました。ただ今回は、それよりもさらに細やかさが増した印象を受けました。
以下、印象的だった点をまとめます。

  • 前回の訪問を覚えてくださったこと。前回が10月の訪問だったのですが、連れが遠くから来ていることなど、しっかり覚えてくださっていました。「またこっち来てくださったんですか」と気さくに笑いながら話しかけてくださったことが心に残りました。

  • こちらの興味にも寄り添ってくださり、距離が近くなったことを感じたこと。興奮のあまりに勝手に感想など申し上げてしまったのですが、今回はプラスアルファでお茶の選定やスイーツの調理理由などお聞かせいただけました。お会計後、お話のお時間もいただき、大変嬉しかったです。

まとめ

予約はOMAKASEからのみとのことで、難易度は高い一方、予約のチャンスがあることは大変有り難い。
また是非伺いたいです。


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