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【お立ち寄り時間3分】真っ白な月曜日

「真っ白…。」

  仕事終わり、会社を出て広がる目の前の光景にほとほと立ち尽くす。 

「月曜日だっていうのに。お呼びじゃないよ、もう。」

  首に巻いたマフラーをいま一度抱き寄せ、小走りで通りの信号機へ急ぐ。何年社会人やっていても、カバンに忍ばせることを忘れる傘。ついでに天気予報もなかなか続かない。

  街は、稀に見る大雪で、ある意味「息をのむほど」美しい白に包まれていた。深々と止むことを忘れた粉雪がふわふわ肩に落ちて、スノードームの中にいるようだった。  

  あの日もこんな感じだったような。

  ふと、もう線ぐらいしか残っていない輪郭のブレたビターな記憶がじわじわと足先から広がる。さよならから1番遠い時間が流れていると思っていた。 

好いていた。

すっからかんに。 

帰り道にふらっと行ける距離だったのにな。

「いけない、本当にブルーマンデーになっちゃう。」

  ゆるく重たい思い出のスイッチを切って、気合を入れていつもの場所へ向かおうとした時、聴き覚えのある声がどことなく落ちてきた。

「あかりさーーーーーーーーーーーーーん!」 

  後ろを見ても誰もいない。左右を見ても誰もいない。ついに仕事のし過ぎかとこめかみを押さえていると、先ほどよりもひとまわり大きな声が放り込まれた。

「こっちです!あかりさーーーーーーーん!」

  中央分離帯の向こう側で手を振るのが見える。

「え、三島くん…?」
「送っていきます!待っててーーーーーー!」 

  三島くんは、右にウィンカーを出すと、通りを抜けて、わたしの元へいそいそと車を走らせた。

「なんで、月曜日なのかな、今日は…。」

  マフラーで崩れた髪の毛を手ぐしで整える。いつもより呼吸が少しうるさい。昨日、美容室行って良かった。頬が上がるのが分かって咄嗟にうつむく。まだ、誰にもバレたくない。

  真っ白な月曜日。嵐がやってきて、年下の君が走る。有り余るほどの真っ白な君が。

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