エッセイ【お立ち寄り時間1分】雨の日には冷えたスプーンを一蟹が笑っている一
大晦日、駆け込み掃除をした。
三が日は、歳神様が居なくなってしまうので、掃除はしないほうがいいと聞き、急きょ、トイレに駆け込んだ。
高校生の頃、無性にトイレ掃除をしていたことがあった。
『トイレの神様』という歌に感化され、毎日学校から帰宅しては、トイレ掃除をした。その頃、いわゆる思春期ニキビが多発しており、藁にもすがる思いだった。そう、綺麗になりたかったのだ。
結局のところ、ニキビは消えず、現実的な対策を講じた。時間はかかったけれど、高校3年間かけて、徐々に綺麗になっていった。
トイレ掃除をするたびに、あの頃の、ある意味直向な気持ちを思い出す。
神様の存在は、科学で証明されていない。
けれど、節目節目で何となく手を合わせ、祈りを捧げてしまう。
初詣のおみくじの行く末は、やっぱり『大吉』がいい。得体の知らない不安に駆られたときは、おばあちゃんのお墓参りをして、気持ちを静める。
人間って、やっぱりいいなとつくづく思う。
トイレ掃除は、夕食前に無事に終了した。
明日は、お正月だしと、トイレのスタンピーを謎に2個、便器に押した。
床をクイックルワイパーで拭きながら、埃がいっそ擬人化しないかな、なんて思っていた。自分で、時が来たら旅に出てほしいな、なんて。夫は、擬人化までは言わないが、せめて1か所にまとまって欲しいと。
いいね~と、呑気にトイレから返事をしていると、ほこりが集合した換気扇と目があった。
……ほこりひとつまとまる。
……集合している。
……大変、お行儀よく。
お腹がぐーっと勢いよく鳴った。
蟹が勝った。
ホシワカシイタケ作品↓
あけましておめでとうございます。
今年もどうぞご贔屓に!
それでは、またうそうそ時に。