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昨日は朝から、なんとなく気持ちが沈んでいた。
普段、のほほんとしている私にはめずらしいことで、
「う~ん、浮上できない。一体、なぜ……?」
目に見えない雲のようなものが、体にも心にもまとわりつき、もやもやと離れない感じ。
急に寒くなり、まだ体が寒暖差になじめていないから?
ここしばらくちょっと無理をして、さまざまな雑用を入れすぎていたから?あるいは二日前の満月の作用が尾を引いているせいなのかも……。(月の満ち欠けは人のからだに影響を及ぼす由)
読みたいと思って本棚から取ってきた本、磨きたいと思って三和土に出していた靴、缶に小分けするため納戸から持ってきた大袋の紅茶。どれも手をつける気がしなくて、置いたままになっている。
ささいなことができない、のではなくて、どうしてもしたくない、という積極的な消極姿勢。
夕方、風を通していた二階の窓を閉めに行くと、暮れかかった白藍の空に、弓のような彩雲が現れていた。
傾いた太陽は、秋の深さを感じさせる白金。光芒が放たれ、空に和の色合いが滲む。
「部屋にいるのがもったいないな」
私はベランダに椅子を出し、次第に力を失ってゆく光、そして空に彩雲が溶けきってしまうまでをずっと眺め続けていた。
普段ならしないであろう、贅沢な時間の使い方。
あたりが夕闇に沈み、肩先がしん、と冷えてきたころ、身にまとわりついていた見えない雲は霧散していた。体の奥に、いつもの私らしい、のほほんとした力が戻ってくる。
「空と時間のおかげかな」
何もできないときは、何もしなくていい。
すっかり忘れていた、そんな当たり前のこと気付いた、秋のひと日だった。
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