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丹の色冴ゆる、丹生都比売神社
8月半ば、和歌山県かつらぎ町にある「丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)」を訪ねました。
丹生都比売神社には高野山を守護する女性の神様、丹生都比売大神(にうつひめおおかみ)がおられます。天照大神の妹にあたる神様で、別名・稚日女命(わかひるめのみこと)です。
「丹」は鉱物から採取する朱の色を表す言葉。その色を持つ神社の名の通り、丹の輪橋と楼門が青空に映える境内でした。
世界遺産として有名な高野山は、もともと丹生都比売神社の神領地でした。その昔、弘法大師空海が真言密教を伝える拠点を探していた時、丹生都比売大神の子、高野御子大神(こうやみこおおかみ)が白黒二頭の犬を連れた狩人の姿で現れ、空海を高野山へと導いたとされています。おかげで空海は高野山を開山、山上に丹生都比売大神の御社を建て、高野山の守護神としてお祀りした由。そのことから、丹生都比売神社と高野山は今でも深いつながりを持っているとのことです。
丹生都比売神社の本殿は4棟の壮麗な春日造。通常は本殿前に立ち入ることができませんが、楼門に沿って左手に進むと、脇から本殿が望める場所があります。(写真はその位置からズームして撮ったものです)
本殿前にある御札立には高野山の僧侶が修業を終えた後、丹生都比売神社に納めた御札が並んでいます。僧侶が神社の神様に御札を納めるほど、その繋がりが強いとのことです。
こちらは境内のはずれにある、「光明真言曼荼羅碑(こうみょうしんごんまんだらひ)」。江戸時代に建てられたもので、円形の中央下より時計の針の進む方向に光明真言が梵字で記されています。光明真言とは、大日如来や阿弥陀如来など5つの仏様に光明を放ってください、とお願いをするための真言だそうです。ひらがなで書くと
「おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん」。
高野山とご縁の深い丹生都比売神社境内には、かつて多くの寺院が建っており、この光明真言曼荼羅碑の他にも、神仏習合の名残を多く見ることができました。
仏教施設の名残、多宝塔の案内板には、まるで待っていてくれたかのように小さなアマガエルが。丹生都比売神社境内は自然が豊かで、草地を歩くたびにトノサマガエルが跳ね、ハグロトンボがゆらゆらと飛び、「みそぎばし」がかかる小さな流れにはサワガニもいました。池の淵ではシュッとしたシマヘビにも遭遇、生き物好きの私としては天にも昇る嬉しさでした。
帰り際、ありがたいことに丹生都比売神社の宮司さんにお話を聞くことができました。
丹生都比売神社も高野山と同じく世界遺産に登録されているため、国連関係者をお迎えする機会が多いとのこと。外国の方に丹生都比売神社のご紹介をした際、一番驚かれるのは神仏習合、高野山との関わりだそうです。ことにイスラム教やキリスト教など、一神教の国の方から見ると、神も仏も一緒にお祀りする形は「まったく信じられない」由。
宮司さんがおっしゃるには、「もともと神様も仏様も争いを好む存在ではないのです。神と仏、それぞれの形を受け入れて融和させることが大切で、それを体現している神仏習合が、世界の平和へのアピールになるのだと私は思っています。またそれは男性と女性についても同じように言えるわけで……それぞれに違うものの見方を互いに受け入れて融和させたほうが、より良い社会になるのでは、と。国連難民高等弁務官の緒方貞子さんのように世界で活躍する女性がもっと増えてほしいですね」
女神様をお祀りされているだけあって、宮司さんから女性の活躍を応援するお言葉をいただけたのが嬉しかったです。
そして、
「神社に癒しを求めてこられる方は多いと思いますが、それだけではなく、もっと積極的に元気をもらってほしい。傷ついて、神社で癒されて、また傷ついて、を繰り返すのではなく、もっと大きな元気を神様からいただく、そんな気持ちで丹生都比売神社を訪ねていただければと思いますね」
神社に元気をもらいに行く……そう前向きに考えると、ますます参拝に行くことが楽しみになってきます。
丹生都比売神社の第二駐車場からは輪橋の全景が望めます。
16時を過ぎても神社の空気感は明るく、地元の方らしき人が何人も橋を渡って参拝に訪れていました。
この日はコロナ対策を万全に行って、Tさん、Jさん、Eさん、そして私の4人で参拝。(事前にお昼ごはんはそれぞれに済ませ、マスク装備で現地集合。青空の境内を静かに歩き続け、残念だけど帰りにお茶もせず、現地解散。)
特別拝観の期間中だったため、普段は入ることのできない本殿のすぐ前で参拝させていただいたり、光明真言の唱え方をご存知のTさんに倣って「光明真言曼荼羅碑」の前でご真言を唱和したり、たまたま宮司さんに先ほどのようなお話を伺ったりと、とても充実した時間を過ごすことができました。
次はぜひ、白と黒のご神犬、「すずひめ号」と「大輝号」に会いに来たいと思います。
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