
オーナーをいつも独り占め
昨日は美容院に行ってきた。
もう何度も書いているのでおなじみだと思うが弟の経営するお店である。
時間の都合はこちらに合わせてくれるので、昨日も閉店間際の最後のお客さんにしてもらった。
美容院の駐車場に車を停めると見慣れない型の古いジープが一台停まっていた。
ははぁ、これはまたアイツ車を買い替えたなとすぐに分かった。
お店は二階にあるので階段を上ってドアを開けるとレジに弟が座っていた。
おう、と声をかけるといらっしゃいと簡単な挨拶をしてカット台に案内された。
前回訪れたのが七月なので四か月ぶりの訪問である。
今日はどうすると聞かれたのでサイドを刈り上げて前髪をすいてもらって後ろ髪は整えるくらいにしてくれと簡単に注文を出した。
はいよ、了解と答えた後に散髪ケープを装着した。
それからバリカンで早速サイドから刈り込んでいく。
弟とは何だかんだで二か月に一回くらいは会うが実家でご飯を食べる時が多く二人きりになって過ごす時間というのは案外少ない。
なので普段なかなかできない深い話をすることができる貴重な時間である。
まずは車の話でひとしきり盛りあがった。
私は面倒くさがりでこだわりが無いので今の車に十五年以上乗っている。
弟は車検が来るごとに毎回必ず車を買い替える。
この間まではマツダのロードスターに乗っていたが今回はスズキのジムニーになっていた。
今時少し珍しいミッションの車でいかにもアウトドア仕様の武骨な車だったが弟にアウトドアの趣味はない。
その時にカッコいいと思ったものをインターネットで探しては買い替えるのが楽しいらしく今回の車で通算14台目だと言っていた。
まあ、趣味みたいなものなのでお前も好きだねぇと話すにとどめた。
それから話題は両親の事に。
先日丸鋸の操作を誤って手をざっくり切った父の肉体的な衰えを話した。
最近はだいぶ背中が丸まってきておりどう見ても後期高齢者である。
たまに実家を訪れるとケーブルテレビで放送している刑事ドラマばかり何時間でも見続けているのであれはあまり良くないと弟は言う。
テレビが恋人の刺激の少ない生活をしていると認知機能が衰えるに違いないと断言する。
私もちょっと同じ事を思っていたが父からテレビを取り上げるとそれこそ本当にすることが無くて退屈に耐えかねるだろうなと思ったので、まあ何もしないよりは刑事ドラマで推理をして頭を使うのはそんなに悪くないんじゃないとフォローしてみた。
母はまだまだ元気でほぼ毎日どこかに出かけている。
何にせよ七十代半ばの両親が自力で暮らしていてくれることはありがたいよねぇという話で落ち着いた。
それから話題は変わってお互いの体調の事を話した。
長年立ち仕事の美容師をやっている弟は股関節を痛めており歩く時に軽く足を引きずる。
まあそこまで深刻な状態ではないみたいだが軟骨がすり減っているとかで簡単には治らないらしい。
職業病だよという弟に私も最近腰が痛くてねぇと話すとそりゃあ兄ちゃん太り過ぎと運動不足よと耳の痛い話をたまわった。
そこでムキになっていやぁダイエットと運動はしているんだけど体重は微動だにしないんだよねと現状を話した。
睡眠はどうなん?と聞かれたので良くて四時間くらいかなと答えたら短いよと言われた。
私も重々承知しているのだがダイエットには睡眠もとても大切で七時間は眠る事が推奨されている。
でもあんまり長く眠れないんだよねぇと答えたら老いだねとはっきり言われてぐうの音も出なかった。
そんな事を話しつつカットが終わったのでシャンプーをしてもらって仕上げにサービスで眉毛カットもしてもらって施術は終了。
いつも大体一時間くらいで終わるが昨日も同じくらいだった。
会計をする時に家族割引でカットとシャンプーで四千円弱なのだが、ちょっとお兄ちゃん風を吹かすために五千円札で支払ってお釣りはチップにしてもらっている。
おっ、毎度と悪びれずに受け取ってくれる弟の態度が気持ち良くてうれしい。
外に出るともう真っ暗だった。
帰宅してから晩御飯を作ると遅くなるのでスーパーで半額になっているお弁当を買って帰宅。
妻に今日の髪型どう?と聞くとあ~まぁいいんじゃないと塩対応だった。
それからお弁当をもそもそと食べたが、あんまり美味しくなかったのが残念だった。
やっぱりご飯は自分で作るに限るなぁとしみじみ思った。
食後に片づけをしていると腰が痛くてたまらなくなったで妻に残りをお願いしてお風呂に入って腰をじっくり温めてすぐに眠りについた。
髪がすっきりすると気分が良い。
お店は今年で十六年目らしく一国一城の主として踏ん張っている弟の事を誇らしく思う。
来年は末っ子の姪っ子が就職するのでこれからは老後の資金を貯めなければと話していたのが印象的だった。
私よりもずっと堅実で計画性のある人生を歩んでいる弟。
いつまでもほんにゃらしてポヤポヤした兄貴で申し訳ない。
ま、何となく暮らすくらいの稼ぎはあるんで心配はすんな、これからもよろしくな!
ああ、刈り上げた頭がスースーして気持ちよかばい。