第3ステップは、呼ばれたら近づいて支援する その3
困っているのに、先生を呼ばないときがあります。何か理由があったり、助けてもらいたくない気分のときがあるからです。
この段階では、そういう時を見逃してはいけません。他の子の支援をしている場合では、ありません。すぐさま近づいていって、「困ったときは、先生を呼ぶ」方法の確認をしながら、支援してあげる必要があります。そうしないと、「やっぱり、助けてくれないじゃないか」と、彼らが勝手に思って愛着を壊すからです。
今日の算数は、分度器で角度を測る授業です。担任の先生は、分度器の中心を角度のどこに当てるかなど、丁寧に説明しています。
村内先生は、よし君が頭を下げて机を見つめているのに気が付きました。そこで、他の子の様子を見るふりをして教室の前の方に移動しました。やっぱりよし君は、先生の説明を聞いていません。険しい顔をしています。村内先生は「ははん、分度器を持ってないな」と思いながら、よし君に近づきました。
村内「何か、困っているようだね。」
よし「別に。面白くないだけ。」
村内「ええ、そうなの(「共感」)?でも、ひょっとしたら、分度器を忘れた
んじゃないの(「想像」)?」
よし「違う。分度器なんか持ってない。買ってもらってない。」
村内「じゃ、やっぱり分度器がなくて困っているんだね(「共感」)。そう
いう時は、先生を呼んで『貸して欲しい』と頼んでくれたらいいだよ
(「覚えて」)。」
よし「いつものように呼べば、貸してくれるの?」
村内「もちろん。まず手あげて、それから呼んでくれればいいよ(「覚え
て」)。」
よし「じゃ、貸して。」
村内「頼むんだから、丁寧に頼んで下さい(「すみません」)。」
よし君は、少しいやそうな顔をしましたが、渋々言いました。
よし「すみません。分度器を貸してください(「すみません」)。」
村内先生は、返事をすると担任の先生のところにいき、予備の分度器を借りてきました。
村内「はい、どうぞ。」
よし「ありがとう。」
村内「おお、偉いね(「共感」)。今度は、ちゃんとお礼が言えたね。授業
が終わって先生に分度器を返すときも『ありがとう』と言うだよ(「覚
えて」)。」
よし「分かった。」
村内「それも、だめだね。」
よし「分かりました。」
そのあと、村内先生は少しだけ分度器の使い方を、よし君に教えてあげました。そしてその後「分度器ができない子が、他にいないかな?」とわざとよし君に聞こえるよう言いながら、よし君から離れていきました。