【日記】国産材をつかったログ材加工工場を見学してきました。
こんにちは。
自立に向けてログハウスづくりを始めたとっとです。
昨日、日本でも数えるほどしかないログ材加工工場の見学に行ってきたので、その様子をシェアさせてください。
ログ材って?
そもそもですが、ログハウスのログって、家の構造体である丸太のことを指します。
丸太をそのままの形でログとして積み上げるものが、よくイメージされるかもしれません。
このタイプのログハウスは、丸太が上下に接触する部分の加工(グルーブといいます)と、丸太同士が直角に交差する部分(ノッチといいます)を人の手(チェーンソー)で加工するため、ハンドカットログやフルログなどとよばれます。
これに対して、マシンカットログと言われるログ材があります。
その名の通り、機械で丸太を同じ断面サイズに直線加工し、さらにログの交差部分(ノッチ)も精密に加工したものです。
マシンカットしたログ材の断面は、四方がカットされた角ばった形や、三方がカットされたアルファベットのDのような形など、さまざまです。
マシンカットログはハンドカットログに比べ、人手による加工精度のばらつきを克服するばかりでなく、断面を真っ直ぐにすることで、室内の壁に埃が溜まるのを防ぐといった特徴もあります。
一方でハンドカットログは、そのどっしりとした外観と加工にかかる手間暇の多さから言っても、ログハウスの王様ともいえる風格があり、いまでも根強い人気があります。
きっかけ
わたしが今年の4月にログハウス事業を承継し、初めて受注したミニログハウスも、フィンランドのマシンカットログで構成されたものでした。
このミニログハウスを組み立てている現場に、同業のログハウス施工業者の社長さんがたまたま通りかかり、ありがたいことに声をかけてくださったことがありました。
わたしは現場のミニログ完成後、改めてその方の事務所にご挨拶に伺いました。
そこでいろいろなお話を伺うなかで、国内でも有数のマシンカットログ生産工場が熊本にあると教えてくださりました。
しかも、その場で工場の代表者に電話をして、話をとおしてくださったのです。
その名も佐藤林業さん
昨日お邪魔した熊本のログ加工場は、その名も「佐藤林業」さんという会社です。
概要
佐藤林業さんは、もともと林業として個人創業された会社です。
見学対応をしてくださったのはそこの現副会長さんで、やはり佐藤さんという方でした。
この方なんと、元ホテルマンとのこと。
しかもこの佐藤さん、平成初期に今のログ事業部を立ち上げられ、当時手探り状態から、今や国内でも有数のマシンカットログ工場を確立されたという、ものすごい馬力のある方でした。
今回お邪魔したのもそのログ事業部です。
お邪魔させていただいた事務所はもちろんログハウス。
この日は比較的あったかい日でしたが、やはりログハウスの中は外よりだいぶ暖かかったです。
この事業部では、国産材をログ材に加工してキット化し、各ログハウスメーカーに供給しています。
前置きが長くなりましたが、佐藤さんからも工場内の写真撮影&公開OKいただいていますので、わたしなりに理解した加工工程順にご紹介したいとおもいます。
ざっくりこんな感じです。
1)丸太の皮剥き
まずは皮剥きです。
円筒形の機械の中ではすごい圧力で水が噴き出ており、丸太を右から入れると、皮が剥けたつるっつるの丸太が左から出てきます。
2)丸太を角材にカット
皮を剥いた丸太を製材機で角材にカットしていきます。
丸太を製材機にセットし、
大きなノコで繊維方向に数回スライスすることで、角材にします。
少しわかりづいらいですが、黄色い箱の中で大きなノコがまわっていて、緑色のアームで丸太をつかんでノコに合わせ、スライスしていきます。
アームに芯をつかまれて製材される丸太は、まるでフランクフルトのようでした。
製材されるとこのような角材に。
3)人工乾燥
次は角材を大きな窯の中にいれ、人工乾燥させます。
木は呼吸するといいますが、木の繊維部分に含まれる水分量によってその体積と形がわずかに変わります。(重さはめちゃくちゃ変わります)
そのため、後につづく加工精度(&組立精度)を確保するためにも、加工前に十分乾燥させる必要があるのです。
おおきな炉で火を炊いて、その蒸気熱で乾燥させます。
乾燥した角材たちがリフトにひっぱられ、窯から出てきました。
4)養生
乾燥がおわった木は外気に触れさせて、十分に内部の繊維を落ち着かせます。
このように外に置いて、最低でも一ヶ月は養生するそうです。
5)実加工
十分に養生して落ち着いた角材を、いよいよログ材に加工していきます。
まずは繊維方向に実加工します。
実加工をすると、角材の断面がこんなふうになります。
側面に小さな溝が2本、反対側の側面に小さなでっぱりが2本できています。
ログハウスを建てるときは、出っ張りがある面を上にして積み上げていきます。
下段のログの上面のでっぱりに、次段のログ下部の溝をはめながら組んでいきます。
この実の仕様は、2本なのか3本なのか、でっぱりの高さや幅は・・・といったように、海外のメーカーでもいろいろです。
この実加工がされると、ただの角材が一気にログ材になって見えます。
6)長さを合わせてカット
実加工されたログ材は、次に図面に沿って長さをカットし、寸法を合わせます。
7)穴あけ
次は穴あけです。
ログ材を横積みしたときに、上下方向にとおる穴をあけていきます。
ログハウスは一般住宅と異なり、ログ材自体が外壁であり、内壁であり、断熱材でもあるので、とてもシンプルでいて、中にいる人は木の温もりを直に感じることができます。
一般住宅のように柱と柱の間の空間に電気配線をして、内壁に石膏ボード貼って見えなくして・・といった工程がログハウスにはないため、ログ材の中に配線を通せるよう、穴あけ加工が必要となります。
また、この穴はログ材を一段一段積み上げていく際、ダボといわれる木片を叩き込むことでがっしりとログ同士を固定するためにも用いられます。
8)ノッチ加工
いよいよ大詰めです。
わたしがいちばん見たかったノッチ加工をする工程。
ノッチとは、ログ材が交差する部分のことです。
どんなマシンがこんな複雑な加工をするのか、不思議でなりませんでした。
そのマシンがこちら。
意外と小さい・・・ というのが正直な感想。
ノミの刃のようなものがたくさんついた回転体が複数あり、複雑に動きながらノッチを刻むようです。
一瞥しただけでは、その仕組みはさっぱり理解できませんでした。
このマシンはドイツ製で、ノッチの幅など細かい調整も設定可能ということで、さまざまなご要望に合わせて加工できる優れものとのことです。
ノッチを刻んだらログ材の加工は完了となります。
9)検査
いちばん重要とも言える工程です。
注文どおりにログ材の加工が完了したか、全てのログ材を並べて、人の目で数量や品質をチェックします。
ログハウスの現場に持って行ったらうまく組み上がらない・・
なんてことがないよう、やっぱり最後は人の目が大事なんですね。
10)出荷
検査したログ材を梱包したら、お客さんの待つ現場に出荷です!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ふとしたご縁で紹介いただいた佐藤林業さんのログ事業部を見学させていただき、正直とてもわくわくしました。
2011年の大震災のとき、佐藤林業さんは福島で家を失った人たちのため、この工場で加工したログ材をたくさん提供されたそうです。
同時期、同じようにログ材を提供した他社さんもおられたそうです。
しかし他社さんは、ここで紹介した工程を全自動で行う最先端の機械で加工したログ材を持って行ったそうですが、現地でうまく組み上がらない・・という事態に陥りました。
一方で佐藤林業さんのログ材は、機械は全自動ではありませんが、各々の工程において人の目によるチェックを入れることで手戻りをなくし、ここ熊本で加工したログ材を福島の地で計画どおりに組み上げ、現地の人たちの大きな大きな助けとなったのです。
お忙しいなか2時間にもわたって相手してくれた佐藤さん。
お話を伺うなかでもっとも感じたことは、いちばん大事にされているのは品質だということです。
日本屈指の檜の生産地である熊本の原木をフルに活かし、マシンカットログ材の国内供給に尽力されているのが、お話をお聞きしながらひしひしと伝わってきました。
帰りの車のなか、わたしもログハウスという形で家づくりの一端を担えることの重要性を改めて感じた一日となりました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ログハウス・ビルド23年の軌跡をYouTubeでも配信しています。もしよろしければ、こちらもぜひ覗いてやってください!