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「私、エロゲーが好きなの」と彼氏に告白した話。

23歳のあの時。

交際3年目、2歳年上の彼と同棲をするにあたり、私が懸念していたのが、ペットのうーちゃんとは別にもう1つあった。

私が、《エロゲー好き》という事だった。

というのも、彼はパソコンを持っていなくて一緒に住んだら私のパソコンを使わせて欲しいと言い出したのだ。でないと新しいパソコンを購入すると。

結婚費用を貯める為に同棲するのに、新しいパソコンの出費は正直痛い。

しかし、パソコンはエロゲーヒストリーが詰まっており心の友人のような存在だ。

そして、写真フォルダを開かれた日には恥ずかしくて失踪してしまいたい。

自分にとって、パソコンを共有する事は自分の裸体を披露する事より困難な事だった。

ただ、毎日21時~22時はゲームが日課だったので別室でコソコソするのではなく、リビングでイヤホンしながらオープンにプレイしたい。

同棲後、彼はパソコンを頑なに触らせない私に対して、早々に不信感を抱いているようだったので、「これはもう隠すのは限界だ…」と同棲開始3日目に私は話を切り出した。

「私さ、実は、エロゲーが好きなのよね。パソコンには色々なゲームがインストールされているから、バレるのが嫌で貸せなかったの。」

 「エロゲ??なんや、それ。AVとはちゃうんか」 ※方言がかなり強めの彼でした。

「18禁要素があるゲームのこと」

 「…もしかして、お前がいつも車内で流していた独特な曲って!?」

 「そう、エロゲーの主題歌。エロゲーの曲って名曲が多いの。」

私の車内ではG戦上の魔王「Close your eyes」天使のいない12月「I hope so」こなたよりかなたまで「Imaginary Affair」←名曲です!が常に流れていたのだ。

「てか、なんでお前、女やのにエロゲーが好きなんや?」

「エロゲーといっても一括りにできなくてね、様々なジャンルがあるの。AVの延長のようなカテゴリもあるけど、私が好きなのはストーリー性が高い作品。実は隠れた名作が多いの。」

 「ほう。でもそれならアニメや映画でええやん。なんでエロゲーなんや、わい(俺)には理解できん。」

「エロゲって心理描写が凄く丁寧に描かれているのよね。18禁だからこそ表現できる思春期特有の繊細な感情だったり、ダークな感情を表現している作品が多いから私は好きなの。あくまでエロシーンはおまけ(笑)」 

「ふ〜ん。前から思ってたけどお前、本当に変わっちょるな。だからメイド喫茶でもバイトしとるんか」

 私は同じ趣味の人と繋がる為、歯科衛生士をしながらメイド喫茶でバイトもしていた。

「一般的でないと意味では変人ね。普通の人は、心理描写を表現されているものだと小説や映画を選ぶだろうけど、私は一つの媒体としてエロゲが好きなだけ」

「あと、女やのにって言うけど、それは語弊よ。クローズアップされないだけで女の子も18禁要素の漫画、同人誌、BLなどのコンテンツが好きな子は一定数いるの。」

 「あ!!まさか、小中学生くらいからプレイしてたんか!?」

「そっ、そそれは、ちゃんと18歳になってから!名作は大体セガやドリキャスに移植されるから18未満の時はそれをプレイしてたの。まぁ、18歳推奨ゲームは小6の頃してたけど、あくまでも推奨だから、、(笑)」

 「分かった、分かった。もうなんでもええ。とりあえず、パソコンをわいに貸してくれ、仕事でエクセル使いたいんや。」 

「いいよ。ただ、私宣言するけど今日から21〜22時の間はイヤホンしてエロゲするから、空気のように扱ってね。」 

「はいよ〜」 

「あ、てかさ、1時間でいいから試し一緒にしてみない?以外とハマるかもよ」

 「・・・。1時間だけやで?」

そして、輝かしい彼のエロゲー第1号記念に提案したのは、純愛?ゲームで有名な「君が望む永遠」だった。

(私は古いゲームが好きで、当時より10年以上前の作品をプレイする為に古いパソコンを購入していました。)

プレイ途中、「わいには遥と水月どっちかなんて、選べん。でも今まで支えてくれた水月を振る事はどうしてもできん」と頭を抱えていた。

「そうね、私は遥派だけど、今回のルートは水月を選ぼうか」

私の思惑通り彼はハマってしまい、毎日1時間弱は一緒にゲームをするのが日課になった。

※エロシーンは基本早送りでした(笑)

次にオススメしたのが、「ファントムオブインフェルノ」だった。第1号とは対照的に舞台はアメリカでスケールの大きいハールドボイルドな展開に心が痺れているようだった。

(この脚本家の虚渕玄さんは魔法少女マドカマギカで有名になります)

そして、次は個人的にベスト・オブ・エロゲである「カーニバル」。思春期特有の孤独感、中二病を上手に表現されている。テーマは幼児虐待とかなり重く、トラウマを抱える苦悩と克服が丁寧に描かれている。 

幼少時代に母からの愛情を受ける事がいかに大切か、大好きな脚本家でもある瀬戸口廉さんの文章が独特で一気に引き込まれる。

カーニバルをプレイして彼は「エロゲーっていい作品多いんやな」と言い放った。でしょ?と、私は誇らしげに頷いた。

「人は1人では生きていけない」をテーマに人間のみっともなくて、繊細で、弱い心を追及して描いた「クロスチャンネル」をプレイ途中、彼の頬に涙が伝っていた。

他には「穢翼のユースティア」、非18禁の「Ever17」などは比較的楽しくプレイした。

そして、エロゲでは珍しい女主人公の母が信仰宗教にのめり込んでしまう苦悩を描いた「MOON.」、不気味で独特な世界観の「腐り姫」、ジブリ風の絵タッチ「果てしなく青い、この空の下で」などプレイしたが、どれも開始20分後…

「わい…トラウマになりそうや、もうエロゲやりたくない。」と言い出した。

「分かった分かった。鬱ゲーはもうしないからさ、初心に戻って王道ラブコメやろ!(笑)ね??あ、G戦上のま‥「もう嫌や!!!」」

「エロゲーもうしたくない。わい、エロゲーやっぱ嫌いやねん、悲しかったり怖いシーンも多いし、わいの心えぐられるねん。トラウマになりそうやわ。お願いやから今後は1人でやってくれ!」と三行半を突き付けられた。

このように突然と、私の輝かしいエロゲーの日々は約1年で幕を閉じたのだった。

*

ちなみに、彼は高校までバリバリのサッカー少年で友達も多い陽キャラであり、週末はいつも友人を招いてバーベキューなどを行うサブカルチャーとは無縁な人種である。

サブカルとら本来なら相反するタイプの彼に、エロゲーを付き合わせたのは酷だったなと私も反省した。

その後、21時~22時は普通のカップルのように一緒にドラマを見たり、私が1人でエロゲーをして、彼は好きな事をしたりと自由に過ごすようになった。

ちなみに、彼とは三年後に別れる事になるが後にも先にもエロゲの趣味を伝えたのは彼だけだった。

サブカルチャーに1年も付き合ってくれた事、私を受け入れてくれた事は心から感謝している。

サブカルチャーであればあるほど、自分の趣味を肯定してくれる事は、自分の存在を認めて貰うのと等しいくらいに嬉しい事だった。

相手との恋の結末がどうであれ、孤独を感じても、疎外感を感じても、1度でも自分を受け入れてくれた、あの時の記憶があれば、人はいつだって強く凛としていられる。

そう、絶対に忘れない、あの輝かしいエロゲーの日々を。

ちなみに彼とその後はこちらです。

当時、ブログにて日常を記録していたので、ブログを振り返りながらnoteに綴ってみました。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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