『オッペンハイマー』をより楽しむために頭に入れておきたい3つのこと
ついに本日公開となったクリストファー・ノーラン監督、『オッペンハイマー』。
「複雑」とも言われる本作ですが、同監督の『メメント』や『インセプション』、特に『TENET テネット』に比べたらそこまで身構える必要はありません。
ただ『メメント』などと比べて、【1】登場人物が桁外れで、セリフもかなり多いこと、【2】(主に核関連の)物理学の用語が出てくることもあり、字幕で追うとちょっと置いてけぼりになるかもしれません。
あと【3】常識レベルの第二次世界大戦前後の近現代史が怪しいひとはさらっておくとより作品を楽しめると思いますので、特にこの3点を中心に解説していきます。
オッペンハイマー自身について
本作はその名の通り「ロバート・オッペンハイマー」氏の伝記映画となっていますが、描かれるのは成人後ことのみですので、以下3点は頭に入れておくと良いかと思います。
1904年にニューヨークで誕生
ドイツからのユダヤ系移民の子
ハーバード大学を3年で卒業後、ケンブリッジ大学に留学
歴史
()内はオッペンハイマーの年齢
1939年9月(35歳)
ドイツがポーランドに進撃し、第二次世界大戦が勃発1941年12月8日(37歳)
日本が真珠湾を攻撃(太平洋戦争勃発)1943年11月(39歳)
アメリカ/イギリス/ソ連のはじめての首脳会談(テヘラン会談)1945年7月(41歳)
主に第二次世界大戦の戦後処理に関する首脳会談の実施(ポツダム会談)同年8月6日(〃)
広島に原爆が投下される同年8月9日(〃)
長崎に原爆が投下される同年8月14日(〃)
日本がポツダム宣言を受諾する1949年8月(45歳)
ソ連が核実験に成功
用語
実験物理学/理論物理学
物理学は大きくこのふたつに分けられます。
前者は実験により自然の振る舞いについて解き明かしていくのに対し、後者は机上や計算機を用いて研究します。
日本の高校で主に習うのは実験物理学の分野。
この映画で主体となるのは後者でややこしい方と思っていただければ。
古典物理学/量子力学
これは自分には荷が重すぎるので超雑な解説をすると、「量子力学」は分子/原子/電子などの物理現象を対象とした力学で、それ以外の物理学が「古典物理学」という感じですかね…。
相対性理論とアインシュタイン
アインシュタインが発表した物理学の理論が「相対性理論」です。
中身は理解しなくて大丈夫です。ていうか説明ムリっ!
マンハッタン計画
第二次世界大戦中にアメリカが進めた原子爆弾の製造計画のこと。
共産主義/アメリカ共産党
大恐慌をきっかけに失業者が急増したことで、個人で財産を保有せず、すべての財産を共有し、貧富の差のない社会を実現しようとする思想や運動(共産主義)が広がりました。
1919年に成立したアメリカ共産党は、共産主義や労働組合運動を組織し、拡大していきます。
ポツダム宣言
日本へ降伏を要求した宣言のこと。
「ポツダム会談」は米・ソ・英の首脳会談なのに、ポツダム宣言は米・英・中により発せられたものを指します。
公聴会/聴聞会
重要な法案や案件を審議するにあたって意見を聴聞するために開催するもの。
公開されるものが「公聴会」で、非開示が「聴聞会」。
冷戦
アメリカ・ソ連間の対立のこと。戦争にはならなかったけれども、核の危険性と相まって、全世界的な緊張状態が長く続きました。
1989年の宣言により集結した。(ということになっている)
プリンストン高等研究所
アメリカにある世界でもっとも優れた学術研究機関のひとつ。
研究者のハリウッドみたいたものです。
赤狩り
冷戦激化を背景にアメリカで起きた過剰な共産主義者の摘発のこと。
スパイ行為をするような過激な共産主義者ばかりだったかというと、そんなことはなかったので後に大きな問題となりました。
ハリウッドでも共産党員は少なくなく、赤狩りにより追放されたひともおり、これを題材にした作品がかなりあります。
登場人物・キャスト
スター俳優が多すぎてノイズになるのがこの作品の欠点のひとつ。
ただこのリスト以外の登場人物・キャストは作品中で把握できるはず。
ボリス・パッシュ(ケイシー・アフレック)
アメリカ陸軍の諜報部員。中の人はアカデミー賞主演男優賞獲得済み。ベン・アフレックの弟。
デヴィッド・L・ヒル(ラミ・マレック)
物理学者。演じるのは『ボヘミアン・ラプソディ』でお馴染みのラミ・マレック。主演男優賞獲得済み。
フランク・オッペンハイマー(ディラン・アーノルド)
ロバート・オッペンハイマーの弟。
放射線研究をしていたこともある素粒子物理学者。
ヴァネヴァー・ブッシュ(マシュー・モディーン)
技師・発明家。マンハッタン計画の初期を率いました。
ハーコン・シュヴァリエ(ジェファーソン・ホール)
オッペンハイマーと同じカリフォルニア大学で教鞭をとっていたロマンス語の教授。
ウィリアム・ボーデン(デヴィッド・ダストマルチャン)
アメリカ原子力委員会の事務局長
ケネス・ニコルス(デイン・デハーン)
マンハッタン計画指揮者の側近(軍人)。
中の人はアンドリュー・ガーフィールド版スパイダーマンのグリーン・ゴブリンだったひと。(ひさびさに観た気がする)
上院補佐官(オールデン・エアエンライク)
本作では珍しい架空の人物(上院補佐官)。演じるのは注目株のひとりなので要チェック。
本日のドレス:シャーリーズ・セロン
大きく外すことはないシャーリーズ・セロンですが、今回はショルダーからバストまでが左右で異なるデザインがなんだかだらしなく見えて微妙。
ブランドはクリスチャン・ディオール。
★☆☆