『蒼き狼』 井上靖
モンゴル研究の一環で、これだけは読んでおかねばならない、ネバ本の一冊を読みました。
言わずとしれた、モンゴルのチンギスカンの一生を描いた大書。
チンギスカンがなぜチンギスカンとなりえたのか、何を原動力としてあの空前絶後のモンゴル大帝国を築きえたのかが、時間軸にそって、非酷なまでに淡々と描かれていきます。
きれいごとばかりではありません。
チンギスカンの生き方に、吐き気を覚える人もいるでしょう。
邑(むら)が蹂躙され、男と男児たちがことごとく殺され、女という女が犯されていく有り様は、読んでいてなかなか辛いものがありました。
この過去、歴史を踏まえ、そしてこの現代に自分はいかにして生きるのか…
そんなことを突きつけられているのかもしれません。
歴史的名随筆である、氏の『河岸に立ちて 〜歴史の川 沙漠の川〜』は、
このチンギスカンの歴史書を書きながら膨らんでいった妄想欲を満たすための紀行文だったのでしょう。
アジアに、そしてモンゴルに、旅をして訪れたい気持ちがまた一段と高まりました。
司馬遼太郎との対談『西域をゆく』
代表作のひとつ『敦煌』
上記『河岸に…』とならぶ名随筆のひとつ『遺跡の旅・シルクロード』
らとともに、ぜひ読んでおきたい一冊かと。