トリテとレンク(6) 〜レンクと川柳と大喜利
他の話題のnoteを書いているうちに、2ヶ月以上もご無沙汰しておりました「トリテとレンク」。
今回は連句サイドです。
連句については、発句(俳句)と絡めた話題を書いてきましたが、発句から外れても話題満載なのですよ。
平句から川柳
連句は、読まれた句の順番、何句目かによって呼び名があります。
第1句目は「発句(ほっく)」。
第2句目は「脇(わき)」。
第3句目は「第三(だいさん)」。
最後から2句目は、季題で花をよむのが定番なので「名残の花(なごりのはな)」。
最後の句は「挙句(あげく)」。
それ以外…というか、極端に発句以外は「平句(ひらく)」とよばれます。
発句と平句の一番の大きな違いは、
平句には切れ字を使わない
ことです。
切れ字は、句読点的な役割をします。
発句は最初に単独によむので、1句を2つに分けるために切れ字を使います。
2句目以降は、前の句をふまえてよむので、
前のよんだ句/(ぶっつり切れて)/今よむ句
と常に2つ分かれたものを1つにすることを念頭によむので、切れ字を入れてしまうと、
前のよんだ句/(ぶっつり切れて)/今よ/(ぶっつり切れて)/む句
と3つに分かれて、イメージが散漫になりがちとなり、次によむ句が考えづらくなります。
付け句(もしくは前句付(まえくづけ))
だいたいの場合、発句をよむのは座(グループ)を組んだときのリーダー(ゲームマスター)にあたる宗匠が受け持ちますので、平句の付け方さえわかれば十分連句をすることができます。
なので、句を読むときには大きく2つの状況があります。
1つ目は、通常の短歌と同じ順序で付ける場合。
5・7・5とよんだ句に対して、5・7・5・7・7で1つの歌になるように、後ろにつける7・7の句をよみます。
2つ目は、その逆。
7・7とよんだ句に対して、5・7・5・7・7で1つの歌になるように、前につける5・7・5の句をよみます。
特に2つ目の場合が独立して、「7・7のお題」に対して「5・7・5の答え」を求める遊戯へと発展します。
例えば、「それにつけても金の欲しさよ」というお題に対して、
「拡張を買うと送料高くなる」とか
「コロナ禍後行きたいゲームマーケット」とか
「ホテル買う次の手番で抵当へ」(モノポリ)とか
「7を出し強盗動く鉄もらう」(カタン)とか
とまあ面白くないながらも答えを出していきます。
面白いものは、答えの5・7・5の句だけでも鑑賞に耐えられます。
この問答を編纂したなかで有名なのが「誹風柳多留(はいふうやなぎだる)」。
そう、川柳なのです。
なぜ、俳句と川柳は5・7・5の同じ型なのか。
どちらも連句がルーツなのです。
連句だと長時間じっくり取り組みます。
それと比べて、前句付は一問一答なのでサクッと短時間ですむ。
特に現代だと、『笑点』の後半でおなじみの「大喜利」のイメージが強いと思います。
ボードゲームにはたくさんの大喜利系ワードゲームがありますが、その生みの親が、実はこれまた連句だった、のです。
大喜利
ところで、この大喜利ってなんなのか。
元々は、寄席演芸の最後であるトリが不在の間に合わせで、観客へのサービスとして行われる余興を指しています。
さらに語源は、歌舞伎の「大切」(一日の興行の最終幕最後の場面)にちなんだ名で、「喜利」は客も喜び、演者も利を得るという意味の当て字です……と、Wikipediaから引用しました。
懸賞から賭博へ
さて、川柳へと話を戻します。
前句付が流行して、「誹風柳多留」も続巻をどしどし発行してベストセラーとなります。
明和2年(1765年)に第1巻を発行し、最終巻は天保11年(1840年)。
75年間にのべ167編になります(『こち亀』には届かない)。
発行するため、答えを一般人から募集するのですが、優秀作には景品など与えられることもありました。
さて、そうなるとこんな輩が出てきます。
懸賞欲しさに、代筆者を雇って、答えをつくる。
ようするに、イカサマやら八百長ですね。
それゆえに、俳諧(前句付)は
歴史上初の「賭博する文学」
とみることもできます。
千年前の格闘文学
大喜利で(ひとまず)優劣競うテレビのコンテンツに「IPPONグランプリ」があります。
決勝では、1対1のタイマン勝負となります。
タイマンで言葉の格闘をするイベントといえば、たとえば「詩のボクシング」。
海外に発祥を求めると、ラップによるMCバトルがあります。
MCバトルは、おおよそ50年前頃から行われていたようです。
しかし、連句のルーツを辿ると言葉のタイマンバトルは、
日本では
すでに千年前に
通過している
のでした。
その名も歌合(うたあわせ)。
【引用】
歌合(うたあわせ)とは、歌人を左右二組にわけ、その詠んだ歌を一番ごとに比べて優劣を争う遊び及び文芸批評の会。
歌合→連歌→俳諧連歌(連句)→大喜利と、言葉を用いたゲーム(遊戯)のぶっとい歴史には、驚くほかありません。
締め
ということで、のらりくらりお届けしました。
多分、あとトリテでもう1つ書いて、ひとまず区切りにする予定です。
正直、ネタがいまのところ湧き出てこないから、なんですが。
でも、書くことありましたら突然続きを書くと思いますので、そのときはまたよろしく願いします。
では。