せまゲー生半可集(16)~そいつはそーついゲーム
前回の記事はこちら。
今回紹介するゲームは、前回の締めでお伝えしました『Dawson's Kayles(ドーソンズ・ケイルズ)』です。
といいつつ、いくつかのゲームをおさらいする話となっております。
Dawsonなの?Keylesなの?
名称の通り、『Dawson's Kayles(ドーソンズ・ケイルズ)』は『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』と『Keyles(ケイルズ)』の合成です。
『ドーソンズ・チェス』は前回の記事で紹介しました。
『ケイルズ』は以下の過去の記事で紹介しています。
『ドーソンズ・チェス』は「Octal Game(8進ゲーム)」だと0.07で表すことができるゲームです。
「8進ゲーム」も以下の過去の記事で紹介しています。
『ドーソンズ・チェス』は「8進ゲーム」で0.137で、『ケイルズ』は0.77で表すことができます。
3つのゲームを並べて比較すると、
『ケイルズ』 ……0.77
『ドーソンズ・ケイルズ』……0.07
『ドーソンズ・チェス』 ……0.137
『ドーソンズ・ケイルズ』は、『ドーソンズ・チェス』 と全く異なりますが、 『ケイルズ』と非常に似ています(小数第1位が異なるだけです)。
『ケイルズ』の手番のルールは、
です。
『ドーソンズ・ケイルズ』は、言ってみれば石2個しか取れない版『ケイルズ』です。
それがなんで『ドーソンズ・チェス』と関係があるのか。
双対性
その前に、軽い余談です。
数学や物理学など理系学問に、双対性という概念があります。
ごちゃごちゃ書いていますが、手っ取り早く例を出します。
下のこれは何でしょうか?
多分、ほとんどの人はご存知だと思いますが、四角形です。
ところが、これには別の呼び方があります。
さらに下のこれは何でしょうか?
多分、大方の人は多分そう見えるとは思いますが、平行四辺形です。
だけど、平行四角形とは呼びません。
しかしながら、さっき四角形といったものは四辺形と呼ぶこともあります。
とまあ、状況によって四角形だったり四辺形だったりするのですが、これらの図形の角と辺が双対(ある意味で互いに「裏返し」の関係)になっているわけです。
盤面のマスの内と外の双対
『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』の手番での例をあげます。
上が『ドーソンズ・チェス』で、下が「Octal Game(8進ゲーム)」に置き換えた盤面です。
「8進ゲーム」だと、「石4個の山から石3個を取り、山はまだ(石1個)残る」ということです。
ところで、「8進ゲーム」の盤面の石はどこにあるのでしょうか?
当たり前といえば当たり前(そうするように準備したから)なのですが、石はマスの中にあります。
では、「石3個取る」に匹敵する――できれば『Keyles(ケイルズ)』らしい――他の方法はあるのでしょうか。
あります。
マスの枠をブチ折ります。
あたらためて、手番の例を追加確認します。
一番上が『ドーソンズ・チェス』です。
その下が「8進ゲーム」に置き換えたもの。
さらにその下が盤面のマスのタテ枠2本をブチ折ったもの。
一番下は、盤面のマスのタテ枠をピンにして『ケイルズ』に合わせてみたもの……というか『Dawson's Keyles(ドーソンズ・ケイルズ)』なのですが……になります。
手番終了(右側)の盤面をよく見ると、『ドーソンズ・チェス』ではまだ一番左列のポーンを動かすことができます。
さらに、『ドーソンズ・ケイルズ』に置き換えた盤面も、左端にピンが2本並んでいるので、倒すことができます。
右に残ったピンは1本だけなので、倒すことができませんし、『ドーソンズ・チェス』でも、動かせるポーンはありません。
つまり、
『ドーソンズ・ケイルズ』……0.07
は、
『ドーソンズ・チェス』……0.137
と双対関係にあるゲーム
なのです。
マスの中とマスの外(ワク、あるいは、縁)とは相対関係なのです。
『Treblecross』もか!
さて、マスの枠ブチ折り行為という暴挙は、ほかのゲームにも適用できます。
たとえば、以前紹介した『Treblecross(トレブルクロス)』です。
これも『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』と同様に、例を上げてみます。
一番上が『トレブスクロス』。
その下が「8進ゲーム」に置き換えたもの。
さらにその下が、手番に合わせて盤面のマスのタテ枠をブチ折ったもの。
一番下は、盤面のマスのタテ枠をピンにしたもの、です。
『ドーソンズ・チェス』の双対ゲームと同様に、マスのタテ枠を2本ブチ折る、もしくは、ピンを2本倒します。
『トレブスクロス』では、次の手番にa、またはbのマスにコマを置くと負け(次の相手の手番で3目並べられてしまう)となります。
一番下のピンの並びの状況を見ると、aとbのマスどちらも、両脇に2本ピンが並んでいます。
しかし、『トレブスクロス』のルールにあわせると、2本のピンを倒すと負けになってしまいます。
それぞれのアクションは「8進ゲーム」でみると、
・aの場合は、山の消滅(1)
・bの場合は、山の残存(2)
にあたります。
つまるところ、『トレブルクロス』を「8進ゲーム」であらわす双対ゲームでは、山の分裂しかできない版『ドーソンズ・ケイルズ』であり、0.04になります。
『Keyles』もなのか?!
さてこうなると、マスの枠を絶賛ブチ折る真似をされている『Keyles(ケイルズ)』も気になっていきます。
しかし、『ケイルズ』のルールを確認すると、連続した2本のピンを倒すのは、マスのタテ枠を1本ブチ折る、とすればよさそうです。
しかし、ピン1本倒すときはどうすればいいのでしょうか。
「Octal Game(8進ゲーム)」では、手番で石を取るときのルール――小数第n位が石n個を取るときのルール――を数値であらわします。
実は、この表記ルールで例外が1つあります。
石0個取る、
つまり、
石を取らないアクションです。
・石を取らずに山を消滅(1)することはできません。
・石を取らずに山を残存(2)するのは、状態が全く変わらない、いわゆるパスです。
ただし、残存(2)を数学的にこれを許すと、ゲームの終了ができなくなるので、考えないこととしています。
・石を取らずに山を2つに分裂する(4)のは、(山に石が2個以上あれば)できます。
ということで、「8進ゲーム」での1の位は、(通常)0なのですが、4も入ることがあります(例えば、4.77、などと表記する)。
これを、盤面のマスの枠をブチ折ってあらわすことができます。
はい。
盤面のマスのヨコ枠をブチ折ればいいんです。
上の表現は、盤面も2つに分裂しているので、さらにニム(山崩し)のイメージがしやすくなります。
なので、いままでタテ枠だけをブチ折って説明していた部分は、ヨコ枠も巻き込んでみる表現(下図の赤破線にあたる部分)もありかと思います。
ということで、『ケイルズ』を「8進ゲーム」であらわす双対ゲームは、みなさんで考えてみてください。
締め
ということで、数回にわたって記事にした「Octal Game(8進ゲーム)」関係は、一区切りとします。
もしかすると、また復活するかも知れませんが、そろそろ別話題のゲームも書かないとなあ、とフラフラ日和らせてもらいます。
では。